あれも聴きたいこれも聴きたい-Mizutama
 日本のガールズ・バンドの草分け、水玉消防団です。ただ、ガールズというには少しお姉さまです。「水玉消防団は、ぼくらのロックンロール保母さんだ」。リザードのモモヨがこの作品に寄せたコメントです。さすがは詩人です。この上ない上手い表現です。

 そう、水玉消防団は日本のインディーズ・シーン勃興期に出現した保母さんなのです。女性5人組、みんな30歳過ぎというのは当時としては実に画期的なことでした。ランナウェイズは平均年齢16歳だったことを思い出してください。

 水玉は早稲田にあったイヴェント・スペースJORAで生まれたバンドです。そこの「赤字経営者のひとり」がボーカルとギターの天鼓さん。彼女を含む女性ばかり5人で1978年12月に結成した当時は皆さんほとんど楽器を弾いたことがなかったそうです。

 しかし、そんなことで怯む彼女たちではなく、堂々とバンド道を追及、1年間の雌伏期間を経て、1980年1月3日に新宿ロフトでライブ・ハウス・デビューを飾ります。この時には同じくガールズ・バンドの草分けゼルダのデビューと重なっていたそうです。

 最初のレコードはアスピリン・レコードから1981年4月に発売されたソノシートでした。埼玉県民会館と神奈川大学でのライブから4曲を収録したものだそうです。残念ながら私は未聴ですが、順調な活動ぶりが嬉しいです。

 この作品は彼女たちのレーベル、筋肉美女レコードから1981年に発表されたファースト・アルバムです。レコード番号はKBR-119、消防団ならではです。ちなみにCD再発は嘯というレーベルからですが、この番号もShoh119と細やかな気配りがなされています。

 オリジナルLPの裏ジャケットには、モモヨの他にも多くの方々からそれはそれは心温まるコメントが寄せられています。その中にはヒカシューの巻上公一、吉野大作、白石民夫、ゼルダの小嶋さちほ、中山ラビなどのミュージシャン仲間の顔が見られます。

 一番驚いたのは中山千夏参議院議員(当時)からのコメント。「水玉消防団がレコードを出せる世の中ならば、まだまだ捨てたもんじゃない」と議員らしいコメントです。その他に一般の方々からのコメントも寄せられているのがいいです。大きく開かれたバンドなんです。

 水玉消防団はしばしばストラングラーズと比較されることがありますが、彼らのサウンドがパンク的というよりも正統派ロックであるというのと同じ意味で、彼女たちのサウンドもパンク的ではなくて正統派のロックです。

 カムラのぶっといゴリゴリのベースと可夜のニュー・ウェイブ的なキーボードがサウンドの特徴で、そこがストラングラーズ的といわれる所以です。しかし、彼女たちの最大の魅力は天鼓とカムラの双頭ボーカルです。オノマトペも使ったボーカリゼーションは素晴らしいです。

 「好きなことを好きなようにして自分を創りあげていく、だから魂を揺さぶられる。それが水玉消防団、だから好き」。77歳、最年長ファンの小西綾さんのコメントです。彼女たちの作品からは大いなる解放感を受けました。いわゆるインディーズの全てが詰まったバンドでした。

Rewritten on 2017/8/26

Otome No Inori Ha Daddadda! / Porka Dot Fire Brigard (1981 筋肉美女)