あれも聴きたいこれも聴きたい-Ramones2
 ラモーンズのセカンド・アルバムは「ガバガバヘイ」が初めて登場したことで後世に語り継がれることになった作品です。彼らのライブでは「ガバガバヘイ」と書かれたプラカードが登場します。「ハイホーレッツゴー」も良かったですが、こちらのインパクトが勝っています。

 ガバガバヘイは民謡でいえばヤーレン・ソーラン、お経でいえばギャーテイ・ギャーテイ・ハラギャーテイに相当する無意味ながらも激烈なインパクトをもった掛け声です。人々の心をとらえるのは難解な詩ではなく、こういう掛け声なのでしょう。言葉はやはり音です。

 ラモーンズは最初のアルバムの頃と何ら変わっていませんが、このアルバムになりますと録音機材が上等になりましたし、やむを得ないことでしょうが、演奏が上手になりました。最初のアルバムの音の団子状態から、随分と各楽器が際立って聴こえるようになりました。

 すでにして初期の頃のファンの一部は離れていったようですが、何倍ものフォロワーを獲得しています。すそ野はどんどん広がっていきました。U2もラモーンズに触発されてバンドを始めたということですから、確実にそのうちの一人といえます。

 こうやって音がすっきりすると、ビーチ・ボーイズなどのサーフ・ミュージックの影響がよく見えるようになりました。それに、彼らが当時ライバルと言いますか同類だと思っていたベイ・シティー・ローラーズなどのバブルガム・ポップ勢との類似も際立ってきます。

 ラモーンズが日本のレコード会社から売り出された時には、「R&R」としてキャンペーンがなされました。ロックン・ロールではありません。ラモーンズ&ランナウェイズです。アメリカの新しい音楽の波として二つのバンドが組まされていたわけです。

 意外な感じもしますが、二つのバンドは似ていないわけではありません。これにベイ・シティー・ローラーズとセックス・ピストルズを加えて、類似点と相違点をまとめると大変面白い分析ができるのではないでしょうか。

 ラモーンズはニューヨーク・ドールズを見て「これなら出来そうだ」とバンドを始めたそうですし、セックス・ピストルズはマルコム・マクラレンによる英国版ドールズです。それなのにドールズはパンクの始祖とは呼ばれておらず、ラモーンズやピストルズが元祖となっています。

 おそらくそれはドールズが過去の美意識をそのまま引きずっていた、すなわち後ろを向いていたのに対し、ラモーンズは未来に向かって振り返っていたからでしょう。この表現は森村泰昌の受け売りであることを断わっておきます。素敵なフレーズです。

 それに偏差値が高いことが知的とされる日本の社会ではなかなか理解されないかもしれませんが、ラモーンズはとても知的なバンドでした。それも元祖の資格の一部でしょう。何とも得体のしれないクールさが彼らの持ち味でした。

 ラモーンズの音楽は30年以上たった今でもテレビやラジオから普通に流れてきます。当時は理解を示さなかった日本ですらそうです。母国アメリカではニューヨークの伝統芸能としてのステイタスをしっかり確立しています。とにかくガバガバヘイです。しびれます。

Edit 2015/12/30

Leave Home / Ramones (1977 Sire)