あれも聴きたいこれも聴きたい-Prince3
 プリンスの大ブレイク作品「パープル・レイン」です。アメリカだけで1000万枚以上を売り上げた怪物アルバムで、ビルボードでは24週間にわたって1位を記録しました。プリンスは万人向けのキャラクターではないことを考えるとまことに凄いことだと言わざるを得ません。

 私にとっても初めて買ったプリンスのアルバムですから思い入れも深いです。そのため、「1999」までがプリンス前史、ここからリアルタイムで買い続けて「ラヴセクシー」あたりまでが全盛期という認識です。結構、共有してくれる人も多いのではないかと思います。

 爆発的なヒットになったために、それまでのコアなプリンス・ファンからはあまり評判の良くないアルバムでした。日本でもその傾向は強く、コマーシャルに流れたということだったと思うのですが、これまで以上にロックなところが原理主義者には受け入れがたかったのでしょう。

 前作に比べると格段にきらびやかなサウンドになりました。それにロック的です。とりわけ、ステージでは評判のプリンスによるジミ・ヘンドリックスばりのギターが凄いです。冒頭の「レッツ・ゴー・クレイジー」で度肝を抜いて、最後のタイトル曲で感動のフィナーレを迎えます。

 よく聴くと実験的なサウンドでもあるのですが、それにもかかわらずとてもポップです。これは訴求力があります。ファンクでR&Bでロック、それもヘビメタさく裂。それでいてとてもコマーシャルというもの凄いアルバムです。プリンス・ワールドが全開です。

 本作品はプリンスが主演する自伝的な同名映画のサウンドトラックになっています。私は貸ビデオですけれども、当時映画も見ました。「かっこよさ」というものの基準の変更を余儀なくされた思い出深い映画です。それまでディープな黒人文化に向き合えていなかった。

 プリンスがいなかったら、私にはジェームズ・ブラウンのかっこよさは未だに理解できていなかったかもしれません。プリンスはそこまでディープに黒人文化的ではありませんけれども、橋渡し役としてはうってつけのアーティストだと思います。ねっとりとかっこいい。

 本作品からの最初の大ヒット・シングルは「ビートに抱かれて」です。ベースのない単純なリズムとメロディーが反復していくだけなのに異様にかっこいいです。当時、こんな曲が全米1位になったことが、私の中でアメリカ人の音楽観への理解を根底から覆しました。

 何とも私の価値観、音楽観に与えた影響は甚大でした。しかし、そんなことよりも、ある夜、あまりの暑さに観客全員が汗にまみれていた野外のファッション・ショーで、「パープル・レイン」が大音量で流れた時の感動が忘れられません。心と体に染みついてしまいました。

 ともかく、このアルバムでプリンスはスーパースターになりました。スティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンに肩を並べたわけです。前史も際立っていただけに、実力は十分に証明されていたわけですけれども、ここからはプリンスの動向から目が離せなくなりました。

 それは当時の音楽評論家の皆様も同じことで、今野雄二氏や渋谷陽一氏をはじめとして、プリンスへの賛辞はとどまることを知りませんでした。ロック畑の人々が大いに注目したアーティストということでも際立った存在でした。何とも凄い人です。

Purple Rain / Prince & The Revolution (1984 Warner Brothers)

*2011年2月21日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Let's Go Crazy
02. Take Me With U
03. The Beautiful Ones
04. Computer Blue
05. Darling Nikki
06. When Doves Cry ビートに抱かれて
07. I Would Die 4 U
08. Baby I'm A Star
09. Purple Rain

Personnel:
Prince : vocal, guitar, piano and others
Wendy Melvoin : guitar, vocal
Lisa Coleman : keyboards, vocal
Matt Fink : keyboards, vocal
Brown Mark : bass, vocal
Bobby Z : drums, percussion
Novi Novog : violin, viola
David Coleman : cello
Suzie Katayama : cello
Appollonia : vocal
Jill Jones : chorus