あれも聴きたいこれも聴きたい-Specials2
 スペシャルズの一枚目を聴いてしまった後は、しばらく、頭の中で「メッセージ・トゥー・ユー・ルディー」が鳴り続けることになります。♪タッタラッタラッター♪。もはや年に一度も聴かないわけですが、それでも一旦聴いてしまうともういけません。

 そうなのです。彼らの音楽にはこの中毒性があるんです。癖になる。かつて原宿には竹の子族に次いでロックン・ロールを踊る集団が現れました。年齢を加えた今でも時々上野公園で見かけます。あんな感じの中毒性です。50ズとスカの中毒性は似ているように思います。

 そしてスペシャルズの2枚目です。前作からきっちり1年後の発表ですが、立派になったなあというのが第一印象です。ジャケットにある通り、とてもリラックスした大人の余裕を感じます。我武者羅からの旅立ちです。

 前作ではエルヴィス・コステロをプロデュースに迎えていましたが、今回はセルフ・プロデュースです。ジェリー・ダマーズはコステロの仕事が気にいらなかったようです。チンピラ感満載でよかったと思いますが、本人は自分のことをチンピラと思ってなかったんでしょう。

 デビュー作はとにかくスカ命、スカ一直線という潔いものでしたが、こちらは2枚目にしてすでにバラエティー満載です。いろいろとあって楽しいです。スカにもいろいろあるでしょうし、さらにその背後には多彩な音楽の土壌があるわけですから当然と言えば当然です。

 大たい「JBのテーマ」なんていう曲があります。JB、言わずと知れたジェイムズ・ブラウンです。いかにもJBなリズムにホーン・セクションですけれども、ダマーズのチープなオルガンと言い、何ともスペシャルズらしい隙があっていい感じです。

 そういえば、彼らのスカのトレードマークは、高速のピキピキする硬質リズムですが、こうしたカラカラに乾いたリズムはアース・ウィンド・アンド・ファイヤーのトレードマークでもあったことを考え合わせるとちょっと面白いです。JBもまんざら遠くはありません。

 それにアルバムの最初と最後を飾る「エンジョイ・ユアセルフ」はアメリカで1949年にヒットしたポピュラー・ソングです。「ステレオタイプ」はまるでウェスタンですし、続けて「2週間の休暇」はカリプソです。

 このようにかなり幅広い訳ですが、どの曲もスカ周辺と言えなくもありません。純度を高めていくアプローチというのもありでしょうが、こうして幅を広げていくアプローチも素敵です。この方がより本質をつけるのではないかと思います。

 ゲストには前作と同じくジャマイカ出身のトロンボーンの大御所リコ・ロドリゲスなどが参加している他、当時西海岸で流行っていたゴーゴーズの名前が見えます。これも前作での成功による自信と余裕の表れでしょう。

 残念なことに、これは彼らのラスト・アルバムになってしまいました。ごった煮アプローチは意思統一が難しいんでしょう。解散後にメンバーが結成したファン・ボーイ・スリーのより原理主義的で、ゆったりとしたリズムを聴いてしみじみそう思いました。

More Specials / Specials (1980 2 Tone)

(2015/8/29 Edit)