あれも聴きたいこれも聴きたい-MaryJBlige
 2011年1月、私はメアリー・J・ブライジの来日公演を見に行きました。それまでいろいろなコンサートに行きましたけれども、ブラック・ミュージックのディーヴァのコンサートは初めての経験でした。

 とにかく凄かったです。随分間抜けな感想ですけれども、ド迫力の歌唱は素晴らしかったです。メアリーは比較的華奢な印象を持っていたのですが、そんなことは全くなく、体格の良いアスリートのような彼女の力強いステージに感動いたしました。

 それでとにかくもう一度彼女の歌をちゃんと聴こうと買い求めたのが、このアルバムです。直訳すると「涙の数だけ強くなれるよ」、2009年12月の発表です。かなりややこしい話なのですが、これは、そのアルバムのインターナショナル盤というものです。

 当初のオリジナル盤に比べると、3曲減らして6曲足しています。しかも、同じ曲でもバージョンが違ったりしていて、怒っている人もいました。こういうことになると、CDではなくて配信で音楽を聴こうということになりそうです。

 メアリーのこのアルバムのインターナショナル盤での話題は、何と言ってもレッド・ツェッペリンのカバーです。それも「胸いっぱいの愛を」と「天国への階段」という、ツェッペリンを代表する超超有名曲が選ばれています。

 「天国への階段」では、変態ギタリストのスティーブ・ヴァイが中心になっていて、さらにギター・ソロはマイケル・ジャクソンとのツアーが有名なオリアンティが担当しています。メンバーも豪華です。

 ただし、そのわりには比較的大人しめの普通のアレンジですし、メアリーの歌もあまり合っているようにも思えません。ロックとの相性はさほどよろしくないようです。というよりも、男声と女声の違いかもしれません。実は、女の人の声には合わない曲です。

 ちょっと面倒くさいコメントをしてしまいましたが、その他のところでは、やはりこのアルバムは素晴らしいです。さすがに「今世紀最も影響力のある歌手」と公式サイトで高らかにうたわれる彼女だけに、何をやっても駄作にはなりません。

 聴きこむほどに彼女の歌に惹きこまれていく密度がいいです。ヒップホップ調の曲もあれば、「カラー」のような静かにめらめら燃えている曲もあって、起伏にあふれていますし、どの曲も作りが丁寧です。どこにでも顔を出すウィル・アイ・アムを始めコラボ陣も豪華です。

 アルバムからの先行シングルは、バスケットのクリケッツを描いたドキュメンタリーのための曲「ストロンガー」、話題の一曲「カラー」は名作映画「プレシャス」のサントラのための曲です。どちらも最高です。特に私は「カラー」の腸をかきむしる歌唱が大好きです。

 彼女の歌唱は、ブラックネスに満ち溢れています。R&Bとでもヒップホップとでも何とでも呼べそうですが、しなやかで、比較的癖のない歌声は、時代を越える普遍性を獲得しています。汗が飛び散らないクールさを兼ね備えた熱いボーカルが素敵です。

Stronger With Each Tear / Mary J. Blige (2009 Matriarch)

(2015/6/21 Edit)