あれも聴きたいこれも聴きたい-Metallica
 眼鏡を直しに行ってきましたが、すごく時間がかかりました。無益な時間が過ぎていくと気分はスラッシュ・メタルになってきます。こういう時に聴きたくなる音楽は、パンクではなくてメタル。バラードもありますから。♪オベイ・ユア・マスター!♪なんて口ずさんでしまいました。

 メタリカはもはやスーパースターですが、そのきっかけとなった作品がこの3枚目です。邦題は「メタル・マスター」、メタル界の期待を一身に背負っての登場です。彼らにとって初の全米トップ40入りとなった記念すべき作品です。

 メタリカは世界各国にあるヘビー・メタルのファンジンに自分たちの音源を送ることで人気を獲得していったという面白い人たちです。ネットのない時代ですから、大変面倒な作業だったと思いますが、まさに先見の明のある人たちだと言えます。

 当時のメインストリームの音楽界はなかなかメタルを正しく扱ってはいませんでした。どこか軽んじているところがあったと思います。そんな業界に惑わされず、しっかりとファンと絆を築いていった彼らの勝利です。ファンとメタリカの「バッテリー」です。

 この作品は、メタル史上の最高傑作とも評されることがあるほどの名盤です。もちろん彼らのアルバムは時代が下るほど半端ない売り上げになっていきますが、原点はここ。ファンの間ではピュアなメタリカ・サウンドの到達点として愛され続けている作品です。

 見るからにヘビー・メタルなジャケットに、ヘビー・メタルなロゴ。何ともヘビー・メタルな音が出てきます。とにかく手数が多い高速ドラムス、ひたすらジャラジャラなり続けているギターが気持を高揚させ、そしてそのサウンドにぞくぞくさせられます。

 メタル史に残ると言われる所以はそのストイックな姿勢でしょう。もう誰が何と言おうと私らこれをやるんです、じゃらじゃらじゃら。余計なギミックなど何もなくて、工夫しましたというわけでもない、愚直なメタル路線が貫かれた傑作だといえます。

 そのように私には映るのですが、メタリカにとって、この作品は「かなり実験的な作品」です。むしろサウンド・メイキングにはこれまでにない工夫が凝らされていて、ギターやベース以外の効果音が少し使われているということです。

 また、問題のインストゥルメンタル「オライオン」などは、言われてみればプログレッシブ・ロック風でもあります。子細に見ていけば、いろいろと彼らなりに「成長」したところもあるのでしょうけれども、その攻撃的なまっしぐらに進んでくるサウンドはヘビー・メタルそのものです。

 むしろ、彼らがその後のヘビメタの道を築いたところもあるのでそのように思うのかもしれません。特にスラッシュ・メタルといわれる彼らのサウンドは当時並ぶもののない音楽でした。メタルにしてメタルじゃない。それが、彼らの出現でメタルの中のメタルになりました。

 1990年代はメタリカとガンズ・アンド・ローゼズが否応なくメタル音痴の私に改宗を迫りました。以降、メタルも楽しめるようになったのですから、メタリカには感謝しないといけません。力のこもったテンションの高い演奏が最後まで続くので息が抜けません。

Master Of Puppets / Metallica (1986 Elektra)

(2015/6/7 Edit)