あれも聴きたいこれも聴きたい-Taylor Swift
 テイラー・スウィフトはアメリカを代表する女性アーティストになりました。来日した際にミュージック・ステーションに出演していましたし、日本でも大そう人気があります。みんなが可愛い可愛いといいます。ただ、確かに綺麗ですが、日本的な可愛さとは随分方向が違います。

 歌声は文句なく可愛いです。曲も歌詞も自らが書いていて、とてもナチュラルです。とても現代風に出来ていますが、正統派カントリーでもあるので、一見すると時代がよく分かりません。伝統に乗っているので時代を越えているとも言えます。

 彼女の歌のぞくぞくするところは、大ヒットした「マイン」のサビの部分に典型的にみられる流れるような言葉の節回しです。おしゃべりな女の子なんでしょう。歌詞を詰め込んで、ころころと回していく、そんなところがとても魅力的です。

 「マイン」に惚れて買いましたが、他の曲もなかなか佳曲ぞろい。カントリーがベースなのですが、サウンドはそこそこ現代的だし、歌声は可愛いし。アコースティックな「ネヴァー・グロウ・アップ」などは色気もあるし。素敵です。

 アルバム・タイトルは偉そうな物言いのようでもありますが、実際は結婚式で牧師さんが最後に二人に言う言葉からとっています。「この結婚に異議あるものは申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ」。キリスト教徒にとって結婚は神聖なものであることがよく分かります。

 テイラーがライナーに書いている通り、多くの人が花嫁略奪シーンを思い浮かべるところです。ハリウッドでは「卒業」くらいしか思い浮かびませんが、インド映画では定番です。見合い結婚の多いところでは誰もが一度は妄想することなんでしょうね。

 この作品は彼女の3枚目のアルバムです。初週に100万枚以上を売り上げるという記録的なヒットになり、日本でもトップ10ヒットでした。彼女はいいとこのお嬢さんですが、歌手として成功するために大いに苦労していますから、本当によかったと思います。

 MTVミュージック・アウォードでのカニエ・ウェストの狼藉ぶりが可哀そうでしたが、そんなシーンもよく似合う清純派。ケイティー・ペリーのビッチぶりとは対照的です。カントリーだし、アメリカのお父さんお母さんの受けもよさそうです。

 大たい、普通の女の子はビッチじゃないですし、恋愛に悩むにしても、こんな彼女の方が数倍リアリティがあるのでしょう。それに彼女はだれと交際しているかなぜかメディアに筒抜けになっていて、そのことを歌にしますから、よりリアルです。

 アメリカの女の子にとってカリスマ的な人気があるということでしょう。英語国民でない上に、性別も年齢も違う私としてはそういう感じ方ができるわけではありませんが、何だかテイラー・スウィフトが眩しく見えます。

 カントリーの王道を歩みつつ、これだけのヒットを飛ばす才能は大したものです。アコースティックを大事にする演奏もいいですし、さらに伸びていってほしい人です。きんきん声なので、歳をとってからの歌声にやや不安を感じますが、しっかり応援していきたいと思います。

Speak Now / Taylor Swift (2010 Big Machine)

(2015/4/13 Edit)