あれも聴きたいこれも聴きたい-Daddy
 娘がモスキート音がうるさいという話をしていました。歳をとると高い周波数の音が聴こえなくなると言います。モスキート音のように、若い人には聴こえるけれども、齢を重ねた年寄りには聴こえない音があるというのはあまりに残念なことです。

 歳をとると若い人と話が合わなくなるのは仕方ありませんが、趣味や感性の違いではなくて、能力の問題なのは悲しすぎます。「この歌いいですよね、あの高い声は誰ですかねえ」「えっ、声、入ってた」...。そんな未来が迫っていると思うと慄然とします。

 物理的に聴こえなくなるほどではないにせよ、歳をとると「やかましい」と思うことが増えてくるような気がします。私は昔からノイズ系やらヘビメタ系、パンク系などの音楽に親しんでいるので、「やかましい」音楽には耐性があると思っているのですが...。

 そんな私が初めて「やかましい」と思ったのは、20歳を過ぎた頃、シブがき隊の歌だったような気がします。むやみやたらに元気なところをうるさいと感じました。あとはB'zです。稲葉浩志の歌声は本当にやかましいと思ってしまいました。

 前置きが長くなりましたが、このダディー・ヤンキーは物凄く「やかましい」です。シングル・ヒットした「ガッソリーナ」があんまり良い曲だったので、ふらふらとCDを買ってみたのですが、実にやかましかったです。そのやかましさが心地好いです。

 レゲエとヒップ・ホップを交雑させたレゲトン。とりたてて高い音が使われているわけではありませんが、テンションがもうアゲアゲです。レッド・ゾーンに針が振れ切った感覚。息をつく暇もないハイ・テンション。上向いて歌いまくっています。

 プエルトリコ出身のダディー・ヤンキーは、当然ですが、まずラテンのミュージック・シーンで大成功を収めます。2003年のプエルトリコの伝統的なコロシアムで満員の観客とともに踊りまくったパフォーマンスは歴史的なイベントとなっているそうです。

 自らエル・カルテルというレーベルを興した彼は、プロデューサーとしても活躍し、ラテン諸国ではスーパースターといってもよいステータスを築いています。ラ米と米国をまわるツアーでは各地で常時何千人、何万人の観客を集めるということです。

 そんな彼が発表したこの「バリオ・フィーノ」はアメリカでもミリオン・セラーとなりました。スペイン語であるにもかかわらず、シングル・カットされた「ガッソリーナ」もヒットしています。これはさすがにとても良い曲です。アルバム、シングルともに彼の代表作となっています。

 レゲトンはレゲエがベースですけれども、プエルトリコ出身の彼は小さい頃からサルサのファンだったということで、ラテンの香りも色濃いです。レゲエもラテンには違いないのですが、こちらはもう少し大陸的な作風です。プエルトリコも島ですが...。

 ダディー・ヤンキーは、米国で野球選手になるところだったのに、銃撃を受けて断念、音楽の道に専念することを選んだという異色の逸話の持ち主です。お尻にはまだ弾丸が埋まっているそうです。テンションも高くなろうというものです。

Barrio Fino / Daddy Yankee (2004 El Cartel)

*2010年12月25日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Intro
02. King Daddy
03. Dale Caliente
04. No Me Dejes Solo
05. Gasolina
06. Like You
07. El Muro
08. Lo Que Pasó, Pasó
09. Tu Príncipe
10. Cuéntame
11. Santifica Tus Escapularios
12. Sabor A Melao
13. El Empuje
14. ¿Qué Vas A Hacer?
15. Salud y Vida
16. Intermedio 'Gavilan'
17. Corazones
18. Golpe De Estado
19. 2 Mujeres
20. Saber Su Nombre
21. Outro

Personnel:
Daddy Yankee