あれも聴きたいこれも聴きたい-Funkadelic2
 これは恐ろしく素晴らしいアルバム・タイトルです。♪心を解き放て。そうすればお尻は付いてくる。天国の王国は内側にある♪。世の中の真理を明らかにした実に感動的な教えだと言ってよいでしょう。タイトル曲はさながら牧師さんのお説教を聞いているようです。

 実際、ジョージ・クリントンは頻繁にこの言葉を口にしていたそうです。私はこれはサン・ラーの影響ではないかと思いますがどうでしょう。クリントンはサン・ラーをよく見に行っていたそうですから、あながち間違いではないように思います。

 ジャケットの女性は喜びに満ちた姿勢で心を解き放っています。さすがにジョージ・クリントンは嘘をつきません。見開きジャケットを開くと、ちゃんとお尻がついてくるんです。それも羨ましい限りの見事に芸術的な洋尻です。心を開くと身体も解放されるのです。

 この頃、クリントンの念願かなってパーラメントのデビュー・アルバムを出すことができましたが、アルバム1枚の単発契約だったことから後が続きません。そこで、クリントンは、やらせてみたら意外と面白かったファンカデリックの2枚目のアルバムを制作することにしました。

 それが本作品「フリー・ユア・マインド」です。ミュージシャンのクレジットはありませんが、裏ジャケットにはきっちりファンカデリックの5人の写真が載っています。どうやら本作品にはスタジオ・ミュージシャンは入っておらず、ファンカの5人がすべて演奏しているようです。

 その5人とは、前作の時にはいなかったバーニー・ウォーレル、ギターの天才エディー・ヘイゼル、ぶっといベースのビリー・ネルソン、もう一人のギタリスト、タル・ロス、ドラムのティキ・フルウッドです。ここに初期ファンカデリックは完成したのでした。

 クリントンによれば、本作品は「アシッドをキメて、ほんの数時間で録音を完了させたアルバム」なんだそうです。そう言われてみれば、まさにそんな気がします。何と言っても勢いがいいですから。ぐわーっと録音したぞという趣きです。皆覚えてないかもしれません。

 ファンカデリック、Pファンクという言葉から連想されるファンクというよりも、これはサイケデリック・ロックにして、上質なトリップ・ミュージックです。初期ファンカデリックは後に人気を博すことになるファンク路線とは少し違います。むしろクラウト・ロック暗黒派に近い。

 もちろんファンクの魂は生きていますけれども、後にファンク・マスターとなるウォーレルもこの頃はクラシックの素養も垣間見せながら、コズミックなビュイーンとなるキーボードを弾きまくっています。サイケデリックの色合いが濃厚です。

 そして、何と言ってもギター。ジミ・ヘンドリックスを唸らせたヘイゼルのサイケデリックなギターは、とてもヘビーで心を躍らせます。ボーカルにはパーラメントの連中も参加しているのですけれども、やはりその比重は小さく、サイケデリックな音の洪水に埋もれがちです。

 前作やパーラメントのデビュー作とは異なって、アルバムは一つの色に染め上げられているものの、一つの色というのがぶっ飛んでいる色なので、ぐじゃぐじゃです。黒いサイケデリック・ロックの傑作として語り継がれてもよい作品でしょう。素晴らしい。

Free Your Mind And Your Ass Will Follow / Funkadelic (1970 Westbound)

*2010年12月8日の記事を書き直しました。
参照:「P-Funk」河内依子(河出書房新社)



Tracks:
01. Free Your Mind And Your Ass Will Follow
02. Friday Night, August 14th
03. Funky Dollar Bill
04. I Wanna Know If It's Good To You
05. Some More
06. Eulogy And Light
(bonus track)
07. Fish, Chips And Sweat
08. Free Your Mind Radio Advert
09. I Wanna Know If It's Good To You
10. I Wanna Know If It's Good To You (instrumental)

Personnel:
Eddie Hazel : guitar
Tawl Ross : guitar
Bernie Worrell : keyboards
Billy Nelson : bass
Tiki Fulwood : drums
George Clinton : vocal
Raymond Davis : vocal
Fuzzy Haskins : vocal
Calvin Simon : vocal
Grady Thomas : vocal