あれも聴きたいこれも聴きたい-MaiK
 このアルバムのプロモーションの一環かと思いますが、ついに倉木麻衣がバラエティ番組への出演を解禁しました。どきどきしながらチャンネルを合わせましたが、とりあえず無難な結果にほっと胸をなでおろしました。

 偉そうにもならず、媚びたりもせず、透明な感じですごく良い感じでした。バラエティでいじられた途端に安くなってしまう人が多い中、立派なものだと思います。私が見たのは嵐の番組でしたが、「笑っていいとも」はどうだったんでしょう。

 この作品は9作目のアルバムです。今回のジャケットはとても大人になりました。化粧品のCMに出演している結果が表れました。スーパーモデル風の写真です。前作がデビュー10周年の集大成でしたが、今回はそれを越えた新たな10年に向けた出発ということです。

 ところでこれは初回特典盤です。DVDの他にCDがもう一枚入っています。豪華です。その特典DVDで、ご本人が語るところによれば、これまでの作品とは違って、アルバムとしての統一感よりも楽曲ごとの完成度を追求したということです。こちらもバラエティ解禁です。

 これまでのアルバムでも、いろいろな冒険に手を染めてきた彼女ですが、今回、最も驚いたのはボーカルの処理です。「サマー・タイム・ゴン」のほんの一部ですけど、一部電気処理がしてあります。驚きです。ナチュラルな声の魅力が際立つ人ですから、これまではなかった。

 倉木麻衣の声は、透明感があるけれども、中にしなやかな芯があって、それが強い。体からあふれるリズムに乗せて嫋やかです。そんな声で、妙な技巧をこらさずに素直に歌うところがとても素敵です。ちょっと苦しげな声の出し方も魅力的です。

 今回もサウンドはいつもの面々によるものですが、スパニッシュ・ギターが入ったり、楽曲ごとにいろいろと表情を変えていて、いつも通り、かっこいいサウンドです。洋楽テイストも復活しましたし、アイドル歌謡も自然に同居しています。

 いつの間にか10年を超えて、貫禄も付きました。派手なヒットはなくなりましたが、シングルもアルバムもとりあえずベスト10に入ります。目立ったスキャンダルもなく、しっかりした活動を続けている。なかなかないタイプの人です。

 若い女の子にとって、何かと生きにくいと思われる芸能界を超然と生きていく彼女の姿はまぶしいです。そんな彼女の、どこがどうというわけではないのですが、全体に一皮剥けた力作です。どこか吹っ切れたような感じがします。余裕というのでしょうか。

 今回も13曲中8曲が何らかのタイアップ作品です。しかし、タイトル曲「フューチャー・キッス」はオリジナルですから、気合の入りっぷりが分かるというものです。この曲は後のコンサートで定番になっているエレクトロな名曲です。

 「サマー・タイム・ゴン」や「わたしの、しらない、わたし。」など、キャッチーですし、ラテンな「リヴァイヴ」、シンプルなバラード「サウンド・オブ・レイン」と、じわじわ来る曲が揃っています。各楽曲の完成度に気を配ったと本人がおっしゃるだけのことはあります。良い作品です。

updated 2015/2/8

Future Kiss / 倉木麻衣 (2010 Northern Music)