こんにちは、Cです。
GWですね。ま、どうでも良いんですけどね。
妄想にGWもKYもクソもないです。

THE 自己満足。

はい、今日はasamiちゃんのお話でも更新しましょうかね。
asamiちゃんが誰か分からない場合、asamiちゃんの項を見てください。










今まで生きてきた人生で彼氏がいなかった時間が大きく空く事なんか無い。
必ず隣には優しいダーリンがいて「asamiは可愛いね」「asamiが好きだよ」なんて肩を抱きながら囁いてくれる。
あたしは、それが心地よくていつも隣でニッコリ笑うの。
そりゃあもう、ファッション誌を見て研究に研究をかさねたそれは、下手な読者モデルより上手なはず。
それでもね、そんな男はやっぱり3日で飽きるわけですよ。え?贅沢だって?うん、そーねー。
でも、自分を好き好き言う男って、なんかつまらない。
こんなあたしに靡かないのは、超ムカツクけど…でも、いつも違う方を見てる男で、ふと、こっちを見て微笑んでくれたら「asamiは可愛い」って陳腐な言葉より百倍嬉しくなっちゃうかも。
そんな男、はたしてこの世にいるのだろうか。




合コンの為にせっかく午後の講義をサボってきたのが無駄になった。
「ごめん!asami…ドタキャンが多くて、今日の合コン延期になっちゃった…ほんっとゴメン!」
友人のアヤが目の前で両手を合わせてこちらの顔色を伺っている。
あたしはと言うと、散々待たされた挙句、飲みたくも無いスタバのキャラメルマキアートを目の前に出されて不貞腐れ気味。
「そんな怒らないでよーっ!また、開催するからさ?ね?」
折角今日の為に、春色のリップとグロスを新調しったって言うのに、なにその悪びれも無い態度?!
「もう、いいよ。アヤの合コンって毎回こうだし…どうせ、今日もイケメン来るとか言ってどうせ大した事なさそうだったし…」
少しだけ腹が立ったから、巻きなおした自分の髪をいじりながら言い放ってやると、それまでご機嫌を伺っていたアヤの顔からスーッと音を立てる様に笑顔が消える。
あ、ちょっと言いすぎた…と思った時にはもう遅くて。
「あっそ、ま、asamiからしたらイケメンがいなきゃ合コンなんて意味無いよね?」
何度も小さく頷きながらなぜか納得した様にアヤはアイスコーヒーを飲み干すと大きく息を吐いた。
「asamiってさ、ほんと可哀想な子だよね」
「ちょっと、な、何が?!」
面倒くさそうに腕を組みなおしてasamiの方は見ずに、と言うか見たく無いかの様に窓越しに行きかう人の群れに目線を移して言う。

「あんた本当、脳内男の事ばっかじゃん?」
「何それ?服だって興味あるし、コスメだって!」
「あー、はいはい。次元が低いよ」
「はぁ?!」

アヤは、自分の溜息と共に自分の唇を舐め直すと、ゆっくりと立ち上がってasamiを見下ろした。

「友達だから言うけど…あんた、いつまで男、男言ってんの?あったま悪い女みたいだよ?大学だってろくに授業受けてないでしょ?!」
「な、…!」

自分自身を頭ごなしに否定されて黙っていられる人間がいるだろうか?
あたしはわなわなと口元を震わせながらアヤを睨み付けて言い返してやろうと、キャラメルマキアートの入った甘ったるいコーヒーのカップを握り潰して立ち上がった。
それはブシャッと小気味良い音を立てて潰れると、ぐっしゃりと春色ふわりんスカート(39000円)にダラダラと零れ落ちてみるみる内に世界地図模様に広がってゆく。
「あ、あんた、黙って聞いていれば…」
「なによ、バイトもしないで親のスネかじって生きて合コンばっかやってるあんたが、反論できんの?」

できません。

ええ、全くもって反論出来るわけ無い。
アヤは、保育士になる為に高校の頃からバイトと勉強三昧で大学の授業料だって、親に頼らずに奨学金と自分のバイトでまかなってる。
面倒見が良くて、気遣いもできて友達からの信頼も厚い。
今回の合コンも、実はアヤのバイト先の先輩に無理やり頼んでもらった物だ。
そのまま何も言えずに、グロスの取れた唇をかみ締めてるあたしを見てアヤは呆れた様に腰に手をあてたままスタバの天井を見上げて、今日何度目かの溜息を付くと自分のカバンを肩にかけて椅子をテーブルの下に押した。
「ちょっとは、考えなよ…色々さ」
そう言い残すとそのままアヤはあたしの隣をすり抜けていく。
アヤに向かって投げられた店員のお礼の言葉が聞こえなくなって、数分間あたしはその場に立ち尽くし、視線は自分のスカートの大きな染みだった。

ばからしい。ばからしい。ばからしい。
なんで私は反論しなかったのよ!このスカートの染みだって絶対取れやしない…アヤだって仲間内では八方美人だって言われてんだから。男が出来ないからって、どうせ僻みでしょ?!しかも、親のスネかじってるって何よ!金持ちの何が悪いわけ?!仕方ないじゃない、パパがバイトしちゃ駄目って言うんだもの。

周囲の好奇の目に晒されていた事に気付いた私は、すぐさま自分のバックを手に取るとツカツカとヒールを鳴らして店を出た。店員の社交辞令的なお礼の言葉すら聞こえなくて、外はまさかのドシャ降りで、自分の怒りは最高潮に達する。

悔しい。悔しい。悔しい。

「みんなして私の事馬鹿にしやがって…こんの、ばかやろぉおおお!!」

大雨の中、スクランブル交差点の真ん中で大声を出してずぶぬれのあたしを一斉に人々が振り返った。
その顔は、多分般若の如く、だと、思う。うん。
綺麗に巻いていた髪は雨でストレートになりかけて、きっとアイラインは取れて黒い涙。
自暴自棄になったあたしは、周囲の目も気にせず髪をかき上げてヒールを脱ぎ捨ててストッキングが破れるのを気にせず胸を張って堂々と大通りを歩いた。

分かっていた。
自分が、なんの取柄も無いつまらない女だって事。
認めるのが悔しくて、絶対出来なくて、自分を磨く事と誰かに愛される事によって必死に誤魔化そうとして。
私は、何も価値の無い女なんだろうか?
私は、一体なんなんだろうか?
目の前を通り行く人々は傘もささない私のこの悲惨な姿を目の端に捉えたままそれでも、颯爽と過ぎ行く。
差し出される傘は、一つも無い。
目を閉じて、呼吸を整えてから三秒。
再び目を開ける。
傘をさした人々の群れにが一斉に散らばって大通りの向こうに見えたのは、一枚の大きな写真だった。
それは、真っ青な透き通る様な青空で、今の私の心情とは真逆のセカイ。
よく観ると、その写真が飾られている場所は、学生カメラマンのグループ展会場らしい。
生憎今日は休館日…と、そんな事はどうでもいい。

私は、その綺麗な穢れない青空の写真にまで馬鹿にされているのかと錯覚し、悔しさと激しい焦燥感にポロポロと涙を………流すわけ無い!


改心するとでも思った?!
もう、開き直ってやる。ばーか。
何が悪いの?愛や、恋に生きて何が駄目だっつーの?
んな親父みたいな説教聞きたくないっつーの。
そりゃ、あたしは特別な才能なんか無い。ええ、ええ、それは認めます。
でも、「愛される事」と言う才能に関してはピカイチだと思うのよね。
これって、素晴らしいと思わない?
あたしは、誰がなんと言おうと絶対に幸せな人生掴んで、所謂人生の勝ち組みになってやる。

「こんな、雨なんて屁でもないね。あたしの未来だって雲ひとつ無い青空さ!」

雨に打たれてボロボロのあたしは、腕を組んでスッキリした笑みを浮かべたままその大きな写真を満足げに睨み、素晴らしいタイミングでナンパしてきた不細工な男に視線を移す。

「死ね!」

さぁ、破れたストッキングを取り替えよう。
髪も巻きなおそう。

ああ、あと…
今日みたいな大雨にも
灼熱の日差しにも大丈夫な、
素敵な傘を買おう。



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こんにちは、Cです。
更新します。iseyaの話。
宗教絡むと難しくて死にそうです。
結構、間違えありますからその辺はスルーでお願いします。
ホッホ。











毎日見ている夕日に似ている朱のターバンを首に巻きつけ、緑のカーゴパンツはだらしなく膝が破れている。
それに、履き潰したくすんだターコイズが付いたサンダルを引きずって、多分、日本人であろう男はダマスカス門の前で空を仰いでいた。

友人のワーラとサッカーをやった後で少々くたびれていた僕だが、母親のやってる店の前でぼんやりと暇をもてあましてトーラーを読んでいる時に見つけたその背の高い日本人になんとなく興味が沸き、再び走りよった。

そいつはたどたどしいヘブライ語を使い「iseya」と名乗った。
日本人の名前を聞くのは初めてだったので、僕は興奮して何度も彼の名前を呼ぶ。
それから、会話を英語に移してやりゆっくり自分の名前を何度か口にしてやったら、僕の名前は「ペス」だとやっと理解したらしい。
その時、iseyaは僕を見て真一文字に結んでいた口角の端を上げて「ペス」と口にしてから笑った。
それは、嬉しそうに。
「外国人=観光」だと捕らえていた僕は、iseyaに「嘆きの壁には行ったのか」「黄金のドームは見たか?」等と質問攻めにし、彼は全て首を振って答えた。話を聞くとどうやら、入国手続きにすっかり時間を取られてしまい、今やっとここ、エルサレムに着いたばかりだとか。
暇を持て余していた僕は、iseyaの観光に付き合ってやる事にした。
と、いうのは口実で、本当は日本人が珍しく色々日本の事を知りたいというのが目的なんだけど。
iseyaは、麻で出来たリュックを背負うと、僕のその申し出に満面の笑みで頷き、僕の片手を取って強く握り締めた。

「よろしく、ペス!」

旅は2泊らしい。もともと長く滞在できる国では無いにしろ短すぎる。
嘆きの壁に向かう間に聞いた日程に僕は首をかしげた。
色々話を聞いているとエルサレムに来る事は、つい先日トルコに居た時に決めたとか。
写真を撮っている事。日本では、貧乏生活を送っている事、エルサレムに来る間に何度も危険な目にあってる事。

太陽の日差しはいつも以上に強くて、気温はそんなに高く無いにしろ僕は、iseyaの歩くスピードに付いていくのが精一杯で、汗をかきながら何度となく躓きそうになる。
その度に彼は振り向いて、笑って僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
伸ばされたiseyaの手は大きくて、黄色や青の絵の具やクレヨンが付いていた。
絵も、描くのだろうか?
日本人と話した事はもちろん初めてで、今まで興味すらなかったけどiseyaはまるで親友のワーラの様に会話を楽しむ事が出来る。もちろん、言語の壁というのはどうしても乗り越えられないけれど、彼は自分の撮りためている写真を僕に見せながら片言の英語で説明してくれた。

エルサレムを1日で回りきるのは不可能だけどある程度の観光を終えた後、iseyaはどうしても行きたい場所があると言った。

「聖墳墓教会に行きたい」

聖墳墓教会、イエスの棺のある場所だ。
ユダヤ教の僕は、iseyaの言葉に何も言わずにただ頷き、彼をその場所に案内した。
聖墳墓教会に行きたがる観光客はたくさんいるので、特段不思議には思わなかったので僕は彼の手を引き、
イスラエル兵士の集会をすり抜け、聖墳墓教会の入り口へ。
そこにたどり着くと、彼はそれまで下げていたカメラを僕に手渡した。

「待ってて」
「カメラはいいの?」
「うん、いい」

再び大きな手でなでられると、それまで巻いていたターバンを腰に巻きなおしてから、iseyaは他の観光客に混じって教会の中に一人で入って行く。
腰に巻きなおしたのは、彼なりのイエスに対しての礼儀なんだろうと思う。
一際背の高い彼はエルサレムの光を背に浴びて、ぼさぼさの髪を靡かせて。
僕は、少しだけ不安になった。その理由は分からないけれど。

ユダヤ教の僕がこんな事を思うのはおかしいけれど、神は、メシアは、本当にいるのだろうか?
炎天下の空の下、僕はiseyaから預かったカメラを片手に生ぬるい空気に目を閉じて、少しだけ呼吸を整えてからファインダーを覗き見した。

iseyaが戻ってきたのは、丁度30分たった位だろうか。
彼は、入っていった時と変わらぬ優しい顔で入り口から出てきた。
腰に巻いたターバンをまた首に巻きなおし、僕の方に歩いて戻ってくる。

「どうだった?」
「いたよ」
「そう、」

会話は少なかったけれど、彼の穏やかな表情を見た時、良かった。と、思った。
先ほど胸の奥にあった、得体の知れない不安は空気の中に蒸発していく。

KAMI、はいたらしい。

預かっていたカメラを渡すと、iseyaはファインダーを覗きこみ、僕を被写体にシャッターを切った。
パシャリ、という音が乾いたこの聖地にこだまする。
きっと、それは錯覚なのだけれど。



「またなー、相棒」



たった半日だけ一緒にいた、風の様に現れて、風の様に去ってゆく日本人。
僕は、この日神を近くに感じてほんの少しだけ、嬉しかった。
最後に貰った一枚の写真にはiseyaを含めた3人の日本人が笑っていた。

「またね、iseya!」


今日僕は一人、トーラーを読んでいる。
KAMIは、やっぱりいるらしいから。










BGM: Maximum of Life/Dragon Ash

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こんちわ、Gです。
最近春過ぎて、脳内ニヤ虫が増量キャンペーンしています。助けて下さい。
痛い事されたら、現実に戻れるのかな…。ニヤニヤ。



えーと、今日は、谷口の話。





空港に降り立ちゲートを抜けると、東京のあの湿った陰気な空気とは全く異なる質感が鼻の奥まで染みた。

5月夜の空の乾いていて、どことなくしんとした冷たい空気が彼女の髪をわやくちゃに混ぜあげた。
そんなはずは無いのに、どうしょうも無く田舎臭い家畜の匂いがする。
ここは整備された空港敷地内だから絶対気のせいで、思い込みなんだろうけど。
星は、「満天の輝き」と雰囲気を盛り下げざるを得ない余計な形容詞を付けられる程、
豪快に、時に繊細に、輝いている。


ペットボトルに残った飲料水を一気飲みして、ゴミ箱に勢い良くほおりこむ。
最終便を迎えた静かな箱の中に、乱暴な音が響き渡った。
急いで準備したスーツケースには、最低限の衣類と、全て読みかけの小説3冊、
急いでいるのに笑顔で押し付けられたデータが入ったUSB。その他色々。
そして、クリーニングに出し忘れた喪服。訂正。面倒で放置していた喪服。
これはティーン雑誌のカバンの中身紹介ほど充実した中身じゃない。
その上、一歩間違えたら、おっさんの出張持ちものリストだ。

タクシーを止めて、徹夜続きのドロドロな身体で乗り込む。
よく考えたら、靴も葬儀用じゃ無ければならないのに、
どうだろう、彼女の足下を飾るのはビルケンのサボだ。
せめて赤くて華奢なヒールなら、文章にも色がついただろうに。

彼女は行き先を告げると窓ガラスにもたれかかり、
運転手のどうでも良い世間話を心地よいBGMに
景色に吸い込まれる様に深い眠りに落ちて行く。

タクシーごと、夜の空に、
落ちて行く。





深く深く、魚の様に優雅に、流れに身を任せ、ずっと泳いでいたい。

所々冷たかったり、温かかったり、
水温に体温を絡ませて、水の中から太陽を見る。
幾度にも反射した光の線が外の世界の緑や赤や灰色を歪ませて、
高透明度の万華鏡を見ている様な、
うるうるして、キラキラして、きゅんとして、
きっと私は永遠に背泳ぎだ。
人生に苦しんでいる人も楽しんでいる人も、
あの人もあいつも片っ端からドスルーして、
私は、私の為だけに。
どこへ行くのかもわからない水流に飲まれて。

神様は、なんで私を魚にしなかったのか。
最後は焦がされた焼き魚でも満足なのに。






気がつくと確かに周りの女性と少しずれてて、
多分ずれていて、やっぱりずれていて、物心つく頃には完全にずれていた。

微量の「ズレ」を修正出来なかったがために、どんどん平均値から遠ざかる。
自分の好きな事を抑制しないで追いかけると、
円グラフで言うと「その他」にカテゴライズされてしまうような人種になるらしい。
来世では、もう少し抑制しようと、少なからず反省している。
抑制する事で、もっと沢山の人と出会えたかもしれない。

きちんと、誰かの為に機能したかもしれない。





その日は、何人目かの彼氏に見事振られた日だった。と思う。
いつも記憶は曖昧。良い事と楽しい事だけは残るんだけど。

きまって最後は「もう君について行けない(行きたく無い)」だった。
今までの男全員に台本が配られているんじゃないかと思ってしまうほど、
私は鮮やかに振られる。美しい鮮色の赤をバケツいっぱいぶちまけた様に
それはもう横暴な程きっぱりと。


普段酒は飲まない。
しかし、こんな夜はどうにもならない気持ちの行き場を
せめてコンビニの発泡酒にぶつけたい。
誰かに泣きつける体力は、もう身体のどこにも無かった。
深夜0時過ぎのコンビ二で発泡酒3缶と、つまみ代わりのチョコ、安っぽい青いマニュキア。
ガサツにポケットから小銭を出した事に、若い男の店員は一瞬目を丸くした。
すぐに視線をずらすと、もくもくと作業をこなし、丁寧におじぎをして
私をまだ初夏の匂いが漂う夜の世界に送り出した。

こんな私だからなかなか恋愛成就は難しくて、
自分の中の優先順位はいつもいつも競いあっていた。
男といる時はなるべく「フツウ二カワイイオンナ」を演じてみるが、
そりゃもう全力で演じてみるが、それは結局舞台の上に過ぎなくて、
台を降りれば、絵の具まみれであぐらで一心不乱にそんなんで、あんなんなのだ。
それが「私」なのである。

愛される事は心地よい。
甘くてふかふかしていて、温かくて。
大切な宝物を、綿を引いた宝箱の中にそっとおさめて、
いつも同じ秘密の高い所に置く様な、毎日がそんな気持ちになる。
相手にも同じ気持ちでいて欲しくて、一生懸命望む形になろうとするけれど、
そうすればするほど、努力すればするほど、
キャンバスの前では廃になって行く。

誰かが、私の世界に踏み込んで、地図を自分の好きな色に塗りつぶそうとしている。
G線上のアリアがロックに転調し、爆音でかかりだす。
心はざわめき出し、その色に染まってでも甘い時間に支配されたい自分と、
そんな事は絶対に許されないと抵抗する自分の戦争が勃発する。
ぶつかりあってハレーションを起し、筆へ繋がる右手の、右手へ繋がる脳の神経の、
脳の神経に繋がるぴよっぴよな精神世界の序盤で既に消滅してしまう。

迷いは、脳内を飛び越えて現実に影響し始める。
当たり前に平気な顔で演じて来た「フツウ二カワイイオンナ」の仮面は少しずつはがれ
ボロが出はじめると、最初は穏やかな顔で、ささやかな「それ」を許してくれた男も、
いつしか転んだ後の傷のぐじゅぐじゅを見る様な瞳で私をとらえる様になる。

いつもそう。くだらない。くだらな過ぎる。
そんなもんルックルックこんにちはだ。ルックはLOOKで表記だ。クソが。



付き合った男との思い出を脳内映画館ダイジェスト版で回想しながら、
流れる涙も発泡酒と共に喉を爽やかに通過した頃、気がつくと大学のアトリエにいた。
どうせだから、この支離滅裂な気持ちをキャンパスにぶちまけようか、
それとも大量の紙粘土に練り込んで大きなキリンを作ってオレンジとピンクに塗ろうか、
いっそ大木を削って海賊王になるために船でもこしらえようか、
どうせだか、


あ、
iseya



彼は映像科の課題でクレイアニメを撮影していた。
夜というのは神秘的な時間で、神経が研ぎすまされ、
ゆるく結ばれていた糸が一気に締まり、オーケストラの静けさと高揚感を一度に味わえる。
バカな私たちはそれを「キリスト・タイム」と名付け、よく好んで深夜に制作していた。
彼は私に気がつくと、子供の様に手招きし、出来上がった粘度の世界を私に見せた。
何故か「静かにして」のポーズを取って、お互いの頭を付き合わせて、

私たち二人はその、小さな世界を上からそっと覗き込んだ。


精巧なのに、どこかわざと崩されたフォルムの人形が夜の群青に浮かび、
何故かとても厳粛な気持ちになった。
それは稚拙で愚かな何かを神様が罰する。というたった5分間足らずの世界でしか過ぎなかったが、
凝縮された彼の世界観を見事に完成させ、むしろ手を離れて勝手に自分達の規律を作り始めていた。
彼は、私より恐らく数倍イタイタシイあんなんでこんなん。だけれど、
毛細血管並みに繊細で、臆病で美しく残酷な世界を口笛を奏でるかのごとく産み出す。
一仕事終えた庭師の様な孤高で美しい瞬間の彼を見ていると、私の胸は謎の感情で締まりあげられて、
フライパンで助走をつけて殴った後、めちゃくちゃに愛撫して、最後は海に放り込みたいと欲情した。
それは一瞬で頭から転げ落ち、今は何故あんな事を思ったのか、もちろんわかるはずなんて無く、
こうやって思い出しても、すぐに忘れるだろうと思う。

涙のあとを見て、白々しく元気づける事はしない。
甘い言葉をかける程、故意的に優しい男でもない。
そうであって欲しくも無い。
2本目の発泡酒を勝手にあけると、私にボンドを手渡した。

「そういう時は何かに没頭」



2時が過ぎ、3時が過ぎ、4時5時を迎えた頃、
カーテンはとっくに「筆拭き布」と化して消えた、
外の世界を遮る物無いアトリエが徐々に大きな白に包まれた。

作業する手を止め、静かに視線を交わせた。

まずは転がった空き缶と、残り1個のチョコを白い光が染め上げる。
徐々に本来の色をとりもどした石工や模型達が、夜の終わりを惜しみながら気怠く目覚める。

iseyaの身体が熱帯魚の様な色を取り戻し、
私の身体は、光にミクロレベルまで細胞分解され、
昨夜の発泡酒のように弾けながら、長い闇を取り去って行く。
生まれ変わる様な鈍い痛みと、新しい希望を全身にあびて、私は取り戻す。

「私」
「わたし」
「ワタシ」

勝手にどんどん涙が流れて、
こうなったら思い切って鼻水もガンガン出れば助演女優賞はいけるかな、と言うと、
彼は汚いタオルで、真剣に私の顔を拭ってくれた。

死ぬ程幸せを感じた。

愛とか恋とかそういう漢字で表せるものでは絶対無く、
LoveやLikeの様にくすぐったいしょーもない横文字な訳はもっと無く、
産まれた赤子の、新しい世界への、挑戦的な、初めての呼吸を。









気がつくとタクシーは実家の近くまで来ており、携帯には家族から着信が3件きていた。
ヨダレは何とか防げたが、何度も窓ガラスに打ち付けたらしい頭が少し痛んだ。

誰かの死を悲しむ事はその相手を愛していた事と比例する。
きっと私は今日湯船いっぱい程涙を流すだろう。

誰かの新たな一歩を見守る事の苦しさはその相手を愛している事と比例する。
進行形なのが、やっかいだ。
私はもはや、弱音をあげそうよ。


いつしか「愛」から解放される時が来るのかなぁ。
そして私はそれを望んでいるのかなぁ。



その答えは、雨が降り出した踏切の高音にかき消されて、飲み込まれて行った。






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