韓国映画『クロッシング』を観ました! (公式サイトはこちら


クロッシング [DVD]/チャ・インピョ,シン・ミョンチョル,ソ・ヨンファ
¥4,935
Amazon.co.jp

北朝鮮の炭鉱の町に住む三人家族。
炭鉱で働く元サッカー選手のヨンス(チャ インピョさん演)は、妻・ヨンハと11歳の一人息子のジュニと
ともに、貧しいながらも幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、ヨンハが肺結核で倒れてしまう。
北朝鮮では風邪薬を入手するのも難しく、ヨンスは薬を手に入れるため、危険を顧みず、
中国に渡ることを決意する。
決死の覚悟で国境を越え、身を隠しながら、薬を得るために働くヨンス。
脱北者は発見されれば容赦なく強制送還され、それは死をも意味していた。
その頃、北朝鮮では、夫の帰りを待ちわびていたヨンハがひっそりと息を引き取る。
孤児となったジュニは、父との再会を信じ、国境の川を目指す。
しかし、無残にも強制収容所に入れられてしまい…。

この作品『クロッシング』は2002年に起きた、“北京駐在スペイン大使館進入事件”(脱北者25名が
スペイン大使館に駆け込んで韓国亡命に成功した)をモチーフに製作されました。

多数の脱北者に長年取材を行って、彼らの実体験をもとにディテールを構成したそうです。
モデルとなった家族も、実在するそうです。

しかし、と言うか、だから、と言うか、あまりに危険な内容および主張を含むことから、
南北融和のノ・ムヒョン政権時代の韓国ではおおっぴらに製作ができなかったそうです。

それだけに、なんとも直視しがたい作品でした。

2002年なんてつい最近のことなのに、私たちの生活とこうも違う暮らしを強いられている人々が
いるなんて…。

まずそれがとてもショックでした。

まるで戦中・戦後の日本を見ているようでした。

衣食住がギリギリのラインで、なんとか保たれているとでも言いますか…。

生活水準の問題だけでなく、監視される目があるということ。

ITや医療等、あらゆるものが日進月歩の発展を遂げている現代において、
こういった生活が、そう遠くない国にあること。

それは、例えばジャングルの奥地で自分達の文化を守りながら原始的な生活をしている
民族の人々とは異なり、政治的な背景のためにそうせざるをえない人々の日常。

だいたい、命を危険にさらしてまでも国を出たいと考える人がいるなんてこと事態、
その国が異常であることを表していると思うのですが…。

元首の思想・言動によって、一日一日を必死に生きている民間人が脅かされているなんて、
何か特別な関係があるわけでもない私であっても憤りを覚えます。

この作品は2008年4月、ワシントンの米議会図書館の試写会で上映されたそうですが、
その時に観たとある専門委員のかたは、

「この映画は『アンネの日記』がナチスのユダヤ人大虐殺を告発したように、

北朝鮮の数百万の住民の実相を世に告発した力作だ。

私たちには理解できない北朝鮮の悲劇を見せてくれる。」


とおっしゃったそうです。

知ったからと言ってどうすることもできないのかもしれませんが、実情を知るということができるだけでも、
この作品は観る価値があると思います。

多くの方々に観て頂きたい作品ですし、観なければならなかった、とさえ思う作品でした。

主演のチャ インピョさんは、俳優としてはもちろん、人間的にもとても素晴らしい方で(以前こちら でも
書いております)、だからこそこの役をあのように演じることが出来たんだろうな、と思いました。

そして息子のジュニを演じられたシン ミョンチョルくんも素晴らしかったです!

ジュニがしばらくぶりに父親のヨンスと電話で話せた時、何よりも先に、

「お母さんを守れなくて、約束を守れなくてごめんなさい。」

と泣いたシーン、とても胸が痛くなりました。

自分だって辛い思いを山ほどしてきたのに、他のどこかに八つ当たりをすることもなく、
健気に生きている姿に涙が出ました。

今この瞬間も、ジュニと同じ境遇の子供がいるのかもしれません。

そんな子供達が家族と離れ離れになることなく、お腹いっぱい食べることの出来る、
安心して明日を迎えられる毎日を過ごせるようになることを、願わずにはいられません。


うたえ!迷走者!