あの人のことをあえて思い出そうとする自分に気づく。いやでも、ふと新宿の、ミスディオールの、柔軟剤の、アイコスメンソールの、香りを嗅ぐ度に思い出していた。写真のフォルダを見ると脳みそがやきキレそうになった。忘れるために他の男を好きになった。毎晩毎晩夢に見て、投稿のバスの中でも涙が出てきた。そんな存在を思い出す度に襲ってきた耐えがたさを、自分は真に忘れてきているんじゃないか。もう夢でさえ仲良くできないんじゃないか。本当の恋の終わりじゃないかよって。忘れてない間は、私はまだその恋の中にいるの。忘れてしまったら、私の中から彼がいなくなってしまうじゃないか。

あんなに解放されたかったのに。やはり私は本当は病むことを望んでた。締め付ける痛みを欲していた。恋にひたっていたいんだ。生きた心地が欲しい。存在を確かに感じたかったんだ。だからわざわざindigoを聞くんだね。

抱きしめて欲しい。大きな背中に腕を回したい。首筋の匂いを嗅ぎたい。