今朝の朝刊。

シクロホスファミドは、やはりとっても危険な薬剤だと実感。

点滴後、家に帰ると、真っ赤なお小水が出て、

それは触ってはいけないって言われましたよね。

注)私はFECでしたので、お小水が真っ赤だったのです。スクロホスファミドが赤いわけではありません。

でもこれを読むと、さわらなくとも、

吸ってもいけないみたいです。(医療従事者が)

本当に毒薬なのですね・・・・

もちろん、乳がんには効く薬で、

副作用以上に効果があるから採用されているわけですが、

取り扱いにはご注意ですね。







抗がん剤被曝 医療従事者への対策 急務…垣添忠生 日本対がん協会会長
2014年10月6日3時0分 読売新聞


垣添忠生氏 1941年生まれ。東大医学部助手などを経て国立がんセンター病院勤務。手術部長、院長、総長、名誉総長を歴任。2007年3月から現職。
 抗がん剤は、がん治療の重要な手法の一つだが、その調製や投与に携わる医療従事者、特に看護師、薬剤師、医師らに対して、毒性を発揮する可能性がある。知らないうちに、吸い込んだり、皮膚から体に取り込んでしまったりするからである。一般にはあまり知られていない、抗がん剤被曝ひばくの問題を論じてみたい。




 がんを縮小させ、ときに完治させる抗がん剤は、骨髄、消化管、毛根など、細胞分裂が盛んな正常細胞にも作用する。患者はそれを承知で治療を受け、ときに苦しい副作用に耐えなければならなくなるが、効果の方がはるかに大きいために使われてきた。

 副作用はもちろん、他の多くの薬剤でもついてまわる。また、エックス線による検査や治療でも、発がん性を含めたさまざまな副作用や後遺症が生じうる。

 しかし、がん患者の治療にあたる医療従事者が、抗がん剤にさらされる職業的被曝は、職場の安全管理上も大いに問題である。「抗がん剤を日常的に扱う看護師は、白血球のDNA損傷が多い」「妊娠初期に抗がん剤を扱うと流産率が高まる」といった報告が出されている。

 スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では、すでに1980年代から、この問題が認識されてきた。米国では90年代までに、空気の流れを管理する安全キャビネットという装置の中で抗がん剤の調製を行うようになった。

 一部のEU(欧州連合)諸国では、アイソレーターと呼ぶ、より厳密な安全キャビネットを導入し、ドイツでは、抗がん剤を院外で調製し、病院に配送する仕組みを作った。EU諸国では域内で国を超えて働く機会が多いため、抗がん剤の被曝防止対策は加盟国に対するEU指令にも盛り込まれている。

 一方、米国労働安全衛生研究所は、2004年に抗がん剤の取扱者に向けて、抗がん剤の調製をする人の近くで作業をする職員にも被曝の可能性があり、安全キャビネットだけでは安全が守れないと警告した。医療従事者を保護するために、製薬会社や医療機関の管理者にも適切な処置を強く求めたのである。

 ところが、わが国ではこれまで、抗がん剤の被曝を防止する対策が十分に進められてきたとは言い難い。医療従事者の作業環境や健康への影響について、関心が低かったと言わざるを得ないのである。

 多くの医療機関、特に中小の病院では、薬局内の安全キャビネットではなく、病棟での抗がん剤の調製が日常的に行われてきた。遅れていた対策がわが国で進み始めたのは、ごく最近のことである。

患者や家族へも周知図る

 米国が警告を発した翌年の2005年、日本病院薬剤師会は、抗がん剤の取り扱いに関するガイドラインを策定した。この策定に向けた調査の段階で、世界保健機関(WHO)の下部機関、国際がん研究機関(IARC)の重要な報告が明らかになった。すなわち、悪性リンパ腫、白血病、乳がん、肺がんなどに広く使われる抗がん剤シクロホスファミドの発がん性が、アスベストと同ランクに位置づけられていることである。

 シクロホスファミドは非常に細かい粉末で、調製時に飛散し、作業中に職員が口から吸入したり、皮膚から吸収したりする可能性がある。また、点滴バッグの表面に付着する可能性もあり、バッグの運搬や患者への投与、さらには使用後のバッグや点滴チューブの廃棄処理の際にも、注意を払う必要がある。

 IARCの報告によると、シクロホスファミドだけではなく、免疫抑制剤のアザチオプリン、骨髄腫治療薬のメルファラン、白金製剤のシスプラチン、抗がん性抗生物質のドキソルビシン、植物由来のエトポシドなど、多くの抗がん剤は、発がん性やその疑いが指摘されている。

 わが国でも、日本病院薬剤師会による国内調査で、病院の壁や床や作業台、職員の尿からもシクロホスファミドが検出されていることが明らかになった。

 こうした情報を受けて、今年に入ってからの動きは急だ。

 4月には、医療現場での抗がん剤汚染を防ぐため、医師、看護師、薬剤師らが抗がん剤曝露ばくろ対策協議会を発足させた。筆者は理事長に就任し、NPO法人化をめざして作業を進めている。

 日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会の3学会も、合同で15年度中のガイドラインの策定をめざしている。

 5月には、厚生労働省労働基準局の担当課長名で、関係団体の長あてに通知が出た。抗がん剤調製時の安全キャビネットの設置、調製や投与の時点で抗がん剤が周囲に漏れないように工夫した専用の閉鎖式接続器具の活用、ガウンテクニック(マスク、使い捨ての保護衣、保護キャップ、メガネ、手袋などの着用)の徹底、調剤・投与・廃棄などの具体的な作業方法や被曝した際の対処法の周知徹底を促している。

 10年度の診療報酬改定では、閉鎖式接続器具を使うと1500円が付与されることになった。

 遅れていたわが国の抗がん剤被曝防止対策は、ようやく進み始めたと言えるだろう。

 しかし、10年度の診療報酬改定額では、実際の器具価格より安い。ガウンテクニックの徹底まで行うと、さらに病院の持ち出しとなる。このため、病院管理者の理解が必ずしも十分に得られなかったきらいもある。病院の負担増が続くようだと、日本中の医療現場に対策が定着する上で障害になる。やはり、関係者は適正な診療報酬改定も視野に入れていただきたい。

 また、抗がん剤被曝が医療従事者だけの問題だけではないことも、強調しておかなければならない。

 今後は国の方針として、在宅医療や地域包括ケアが推進されることは確実である。そうなると、在宅で抗がん剤治療を受ける患者も珍しくなくなる。この場合、新たに、在宅看護を担当する看護師や、がん患者と生活を共にする家族への抗がん剤被曝も避ける必要が生じてくる。

 抗がん剤曝露対策協議会では、医療従事者だけでなく、抗がん剤使用者、家族の安全性の確保も目的に掲げた。協議会では、「オレンジ・マーブル」をシンボルマークとして採用して周知を図ろうとしている。オレンジは明るく暖かい印象があり、被曝防止に賛同した人が、碁石のようにマークを一つずつ置いて、あたり一面をオレンジ色に染めてほしいという願いを込めている。

 病院であっても在宅であっても、様々な対策によって、患者はもとより、医療従事者も家族も、安全に抗がん剤と向き合える環境を実現したいと考えている。