偽物語[下] 西尾維新
キメ顔
「髪は女の命か。ふうん、いい言葉だな。だけど兄ちゃん、いい言葉ではいい生き様には少し足りない。あたしは命をどぶに捨てて生きるんだ。どぶの中で光る見事な宝石のようであれと、あたしは師匠に言われてるぜ」
P28
活字離れとか言って、若者の不勉強を嘆く上の世代は、逆に携帯やらウェブやらに疎かったりするわけで。 古典文学を読めない子供とライトノベルを読めない大人とを比べてみれば、意外とそこに差がなかったりする――もっと極端な例えを出せば、紫式部が如何に優れた文学者だったところで、現代に連れてきてしまえば、彼女は絵本さえ読めない。文化を縦で比べることに意味はないのだ。
P55
根性は快楽によって折れる!
怠惰にこそ、気位は屈する!
P72
「――俺としては至極残念な話で、がっかり以外に言葉がない。朗らかな戦場ヶ原ひたぎに、一体何の価値があるというのだろう。己の価値に気付かない呪いと己の無価値に気付かない呪い、選ぶとしたらどちらなのか、それは人が背負う一生の問題ではあるが――まあしかし、それでも子供は成長するべきなのだから、俺のように終わってしまった人間は、ここではコメントを差し控えておくとしよう」
P212
「そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物のほうが本物よりも本物だ――かかっ。貝木くんはな、どうしようもない小悪党の癖に、言うことだけは格好ええんや。まあ強いて言うなら、それが今回の件からうちが得るべき教訓っちゅうとこか――十年越しの教訓やけどな」
P314