私はアルゼンチン君から突然、送られてきた
こわい動画を観て固まる。
いきなりドンっと、
暗闇に突き落とされた感覚。
すると…
アルゼンチン君が、
驚きの行動に出た。
それは…
↓
↓
↓
↓
送信取消。
その後…
お互い、膠着状態。
おそらく5分くらい。
この時間がどれくらいだったか、
辛くてスカイプのやりとりを見返すこともできない。
そこから、
いきなりの鬼電。
スカイプの画面に、
優しいアルゼンチン君の顔写真が表示される。
いつも嬉しかった、その表示。
スワイプして、「ハロー」って出ると、そこにいる優しいアルゼンチン君を見て、
一気に幸せな気持ちになっていたのに。
私は怒っているわけではなかった。
ひたすら
悲しかった。
本当に本当に悲しかった。
アルゼンチン君は10歳も離れた双子の妹がいたから、
本当にいつも女性である私にとても優しかった。
以前、アルゼンチン君は私とのビデオ通話中に、
2階のお母さんの、ネット回線の取付トラブルで、
自宅の電話から取付会社にクレームを入れていたことがある。
アルゼンチン君はスペイン語を話していたので、理解はできないが、
それでもよく聞いていると、
スペイン語と英語は文法も同じ、単語も似ているものが多い。
クレームにも関わらず、アルゼンチン君は、私と話すトーンと同じで、穏やかだった。
保留にされている間、
私に「あーあ、突っぱねられちゃう。」と穏やかに笑いながら、事情を説明をしてきた。
「アルゼンチン君、負けそうだね。」
(向こうに非があるなら、もう少し強く言えばいいのにな〜。)
「そう、でもあまり強くも言えない。
地元の小さな会社で、
相手はおばちゃんだし、おばちゃんもあまりよく解ってないみたいだから、仕方ないね。」
保留は長かった。
アルゼンチン君は私と会話をしながら、気長に待っていた。
「保留、長いね。
アメリカみたい。」
「ようこそ、アルゼンチンへ!
アルゼンチンも一緒だよ。」
「アメリカで保留が長いのは、お客があきらめて電話を切るのを、会社側は待ってるんだよ。」
「ようこそ、アルゼンチンへ!
それもアルゼンチンも一緒だよ!」
「しかもアメリカでは、さんざん待たせた保留後に、一旦『もしもし〜っ』って再開するフリだけして、相手が電話をわざと切断したりするからね。」
するとさんざん保留になっていた電話は、
相手のおばちゃんが通話を再開した瞬間、
見事に切断された。
「ようこそ、アルゼンチンへ!
これ3回目!
それもアルゼンチンも一緒だよ!」
イライラしたりせず、
爆笑するアルゼンチン君。
「アルゼンチン君は、私にも怒ったりしないよね?」
「僕はメイにそんなことしないよ。
メイはかわいいからね。」
優しく笑うアルゼンチン君。
しばらくしてお母さんが様子を尋ねにきたら、
「やあ、ママ」とハグをしながら、説明をするアルゼンチン君。
お母さんは呆れ顔で笑いながら、私の方を見て、首を振りながら、イタリア語かスペイン語で何かを言った。
「『パパも穏やかで、よく言いくるめられてた』ってママは呆れて、メイに言ってたよ。
僕は言い争いは苦手なんだ。
特に相手が女性だと、やっぱり強くは言えないよ。」
そう言って優しく笑うアルゼンチン君。
私は男らしい人が好きなんだけど、
女性に言いくるめられる、
絶対に人を傷つけないアルゼンチン君が大好きだったのに。
でも…
私は傷ついた。
「絶対に女性を傷つけたりしないような人」と思っていた人から…
傷つけられた、と書きたかったけど、ちょっとそこまでは書けない。
そこまでは書きたくないほど、大好きだったんだな…。
スカイプをログアウトした。