年末の押し迫る寒さの中、ふとした瞬間に、平井堅似レバノン君にメールを送る。




「ねえ、今何してるの?」




「暗くなった川沿いを歩いている。

これからの人生、どう切り開いていくか考えながら。」






「奇遇だね。

私も全く同じことをしている。」






「え?

日本はもう深夜だよね。

メイ、危ないだろ。


どうしたんだ?

何か抜け出せない悩みがあるのか?

…聞くよ。

ビデオ通話しよう。」






川沿いに座り、

平井堅似レバノン君とビデオ通話をした。





「やっぱり真っ暗じゃないか。

メイ、危ないよ。

まず家に戻ってくれ。」





一度も会ったことのない、

お互い恋愛対象でもない異教徒の男性が、こんなに私を心配してくれる。


年末の大寒波の中、ふととても温かい気持ちになる。





「日本は危なくないよ。

大丈夫、心配しないで。


私、川沿いが好きなんだ。

故郷に似てるから。」






「僕も川沿いが好きだ。


…ところで、メイ、何かあったのか?

何が頭から離れないんだ?

話を聞くよ。」






「いや、何もないよ。

本当に何もない。


ちょっと誰かと顔を見て話したかっただけ。


私を心配してくれてありがとう。」






「当たり前だろ。

メイだって僕のことを心配してくれるから。


不思議だよね、

女性にこんな情けない話をしたのは初めてだよ。

いや、男性の友達にはもっとしないかも。」






不思議な友情みたいなものがある。



顔を見てホッとする。






「ねえ。

またオウムのおもしろい動画を観て笑いたいな。」





「いいね〜。

沢山あるよ。

観ようか。」







年明けの深夜に届いた、平井堅似レバノン君の優しいボイスメッセージも何度も聞いてしまう。






「アッサラームアレイコム、

(あなたに平和を。)


あけましておめでとう。


どうかメイにこれ以上、

何一つ悪いことが起きませんように。」



大晦日の押し迫る時間の流れから、

年が明けて、一気に幸せになる瞬間、


平井堅似レバノン君の

アラブ人特有の男性らしく、

それでも優しい、

ボイスメッセージ。



聞いた瞬間、ふと涙がこぼれた。



そしてこれ、私もいつも願っている。

平井堅似レバノン君一家のこと。