「アラブ人が嫌だ、嫌だ」と言いながら、

とにかく昔からアラブ人とやたら気が合う私。


また私は調子に乗り、またアラビア語で話しかけて、あっという間に仲良くなった。



そんな平井堅似レバノン君との

衝撃のビデオ通話。












衝撃でもない。


平井堅はウソをつかない。






平井堅似レバノン君は、本当に話し方も平井堅に似ていた。

陽気なヨルダン君やフランス君とは少しキャラが異なり、

平井堅似レバノン君はクールで真面目に話すのだが、

ボソッとギャグを言う。



30代のヨルダン君やフランス君より、

20代のレバノン君の方が落ち着いている。



そして坂口憲二系インド君も、

アメリカ南部のプエルトリコ君もそうだが、

20代、平井堅似レバノン君もとてもしっかりしていた。


(まあ平井堅似レバノン君は20代といってももうすぐ30歳なのだが。)




平井堅似レバノン君の話は、

とても胸が痛かった。




楽しく世間話をしている時に、

一言「僕はもう敬虔なイスラム教徒ではないので。」と語ったことがあり、


何かあったんだな。

と思った。




さすがイスラム教徒の男性、決して弱みを見せないが、ふとした瞬間、聞いてほしかったんだろう。



すっかり打ち解けた頃、平井堅似レバノン君が、悲しかった話をしてくれた。





比較的、裕福で教育熱心な家庭に産まれたレバノン君。


父親の浮気によって、少しずつ、ゆっくり崩壊した。



当時、レバノン君はイスラム教徒だが、カトリック系の超進学校の中高一貫の寄宿舎で暮らしていた。



その頃から父親の浮気が始まり、両親は離婚。



お母さんと妹2人は、シリアに帰っていった。


高校に進学する頃、学校から何と、レバノン君の父親が学費や寮費を1年間、納めていないことを告白される。



それでも更に学校は何とか更にもう1年、レバノン君の籍を置いてくれたが、

2年間の学費と寮費の滞納はさすがに認められず、

高校2年に進学はできず、学校は退学になった。


家族が誰もいなくなった家に一人で戻った高校2年になるはずだった日、

レバノン君は泣いた。

身長190センチの男性は声を出して泣いた。



家の周りはすっかりまた政情不安定になり、

近所はイスラム教シーア派がパワーを持ち、

スンニ派のレバノン君は、電気を止められた。



その頃、母親と妹たちのいるシリアに行ったが、現在まで泥沼化しているシリア内戦がすぐに勃発。



命からがら、母親と妹たちと、どさくさに紛れて、A国へ亡命をしようとした。



しかし問題が。

母親のみがシリア国籍があり、

どさくさに紛れて一緒に逃げてきた、レバノン君と妹たちは、

レバノン国籍しかない。


「シリア人のフリをして嘘をついて亡命をしようとした。」


A国は、何と…

未成年である

レバノン君と妹2人を牢屋へ入れる方向性を示した。



日本でも問題ですよね、入管の拘置場。



でも、厳格なイスラム圏の牢屋はマジで怖いです。


拘置所でもない、本当に牢屋のドキュメンタリーを観たけど、


恐ろしすぎた。


人権なんてものはない。



しかも当時、レバノン君の末の妹は、4歳でした。


4歳の妹が牢屋に入れらるかもしれない恐怖。



そんな緊張の中、比較的、優しいB国へ逃げた。



B国は、A国よりもずっと貧しく、生活は苦しい。


レバノン君は亡命ではなく、就労ビザを認められた。



就労ビザは、数年に一回の更新が必要となり、不許可になれば、

レバノン君と妹たちはレバノンに、


お母さんはシリアに送り返される。


さすがに人道面から見て、シリアに送り返されることはないだろうけど…。



おそろしい。




そしてレバノン君のお母さんは精神を病んでしまった。


夫の浮気、

母国のシリア内戦、

子供たちが牢屋に入れられるかもしれない恐怖。




嫁ぎ先のレバノンで夫に浮気され苦しい思いをし、

母国のシリアでは内戦が勃発し、

転々とするA国、B国での暮らし。



40代の女性ひとりで乗り越えられなかった。





その通りだよ、想像を絶する。




「女は弱し、

されど母は強し。」?



↑誰が言ったんだ、これ。


母親は女性だ。

男性と比べて、体も、

本当は心だってそんなには強くない、涙を出してしまう女性だ。


強いフリをして頑張っていたんだ。




夫の浮気、

内戦、

子供が牢屋に奪われる恐怖を得て、


それでも

「母親だから強くいろ」なんて、あんまりだ。



母親だからこそ、

心が折れる瞬間がある。




とにかくよく生きてこられた。




自分も死なず、

子供も死なさず、

よくここまでこられた。




まだ30代〜40代だったレバノン君のお母さんを思い、涙する。