「フランス君は酔っ払っているね。」




「酔っ払ってないよ。

メイはまた逃げようとするね。」




「今日初めてビデオ通話をしたような会話ではない。」

 




「何が?テキサスがメキシコ料理みたいなこと?ニヒヒ





「違うよ!笑い泣き

もう口説いてくるなんて、さては君は国際ロマンス詐欺師だな!笑い泣き





「また冗談言って逃げないで。

私は愛したい女性は、最初の1日でわかる。」





「それ失敗多くない?ニヒヒ





「若い時はそんなことしなかったよ。

でも私はもう37歳。


愛したい女性は、最初の1日でわかる。


メイもわかるでしょ?

好きになる人は、最初の1日に会話をして、わかるよね。」





「そうかなあ。

でも後で『やっぱり違うな』もあるかも。」





「それは20代の時でしょ。

30代の時は違うよ。」





「同じ趣味の登山仲間で、気が合う女性はいないの?」




「趣味は違って、気が合う人の方がいい。

お互い新しいことが始められるから。


メイ、

『紅葉の涸沢カールにずっと行ってみたいと思ってた』

って言ってたでしょ?

何で今まで行かなかったの?」





「それは…行きたくても、なかなか始められなかったから。


大人なんてそんなもんだよ。

やりたいと思っていても、なかなか始められない。

日々の生活に追われて、気づいたら簡単に5年なんて経っている。」





「その通り、こうしてるうちに

また次の5年が経つよ。

私がメイを紅葉の涸沢カールに連れて行く。


その代わり、ピアノを僕に教えて。

私は弾いてみたい曲がある。」




そしてフランス君は、英語で言った。

「メイが今まで知らなかった世界を、僕が見せてあげたい。」




…本当にヤバいな。


ビデオ通話を始めて、まだ2時間も経ってないのに、

フランス君がカッコ良く見えてくる。

ヤバい、本当にヤバい。




「フランス君ほどの素敵な男性なら、わざわざ言語交換サイトなんかで知り合ったビデオ通話の外国人女性じゃなくても、

周りに沢山いるよね。

ハンサムだし、会話も超楽しいし、仕事も趣味も素晴らしい。」




「周りのフランス女は嫌だ。デカくてうるさい。」




「それ、アメリカ男も、

『同胞の女性はデカくてうるさいから嫌だ』と言うね。

忘れたようだね、

私はアメリカ人だよ。笑い泣き





「メイは日本人だよ。

Anyway, 国なんかどうでもいい。

私はメイが欲しい。


親友みたいなソウルメイトみたいな恋人がほしい。

メイと毎日、目を見て冗談を言って笑って、愛し合いたい。


頭の悪いつまらない女性とケンカなんかして一緒にいたくない。」




そこで気づいた。


おそらくフランス君は、

日本人女性の元彼女が忘れられない。


だから私に、何か元彼女に似たものを感じているんだろうな。





日本語でまこうとしても、フランス君は必死で日本語で返してくる。



私は駆け引きをしたいわけではない。

むしろ私は駆け引きなんてしないタイプ。


本当は好きな男性に素直に甘えたいタイプなんだけど。


フランス君に甘えられたら、幸せなんだろうな。

そう思ってしまった。





「お酒どれくらい飲んだ?」




「メイ、話を替えないで。

…覚えてないくらい飲んだ。」




「いつも沢山飲むの?」




「いつもは飲まないよ。

私は登山するし、普段はジムに行く。

体を作るから、お酒は飲まない。

お酒は嫌いじゃないけど、

わざわざ登山に替えるに値しない。

(↑ここは英語で。かっこよかった。)



私が今日、友達に沢山飲まされたのは、

明日が私の誕生日だからだよ。」




「え?明日が誕生日?」



「あ、12時になってる。

今日だ。」


私は咄嗟にスマホを見た。

確かに日本は午前8時00分。

フランスは午前0時00分のはず。



「え!?ポーン

すごいタイミングの会話だったね。信じられない。」




「本当です。」




「いや、疑ってるわけじゃないよ(笑)

お誕生日おめでとう!」




「ありがとう。誕生日なんてどうでもいいけど、メイの顔が見れてこれが誕生日プレゼントみたい。」





「Make a wish!」





「私の願いは、日本に行って空港でメイを思いきりハグしたい。」





「今日はどう過ごすの?」




「午前中は家族と過ごして、

午後に、友達のアパートのリノベーションを手伝う。

その後、夕方は中学時代の友達とサッカーに行く。


…いつもの土曜日と大して変わらないよ。」


友達とサッカー…ヨルダン君みたい。笑い泣き


 



「いつもの土曜日もそんな感じなの?

素敵な過ごし方をしている。

そして最高の誕生日だね!

家族と友人と。」




「さみしい。

私はもう子供ではないから、家族や友達より、

愛する人と過ごしたい。」




「あと10年後は、また家族や友達と過ごしたいと思ってるかもよ。

家族や友達とケーキ食べてお祝いしなよ。」





「お祝いはしなくてもいい。

私はもう20歳ではない。38歳。」




「ふーん。意外だね。

フランス君はもっと違うタイプかと思ってた。」




「え?」




「『もう誕生日を祝うような歳じゃないんですチーンなんて、ダサいことをフランス君は言わないと思ったよ。

君の素敵な登山の写真を見てたから。」





「え?」





「大好きなドラマの受け売りなんだけどね。

『いやいや、誕生日なんて、もう祝うような歳じゃないんです。笑い泣き』って、ああいうのはダサイよね。



38歳、君はここまで頑張ってきた。

そして今、生きている。


自殺をする若い人も沢山いる。

生きたくても、病死や事故死は誰にでも起こりうる。


でも君はここまで一生懸命、

頑張ってきて、生きている。




20歳の誕生日よりも、38歳の誕生日の方が、

50歳、70歳、90歳の方がよっぽどめでたいんだ。



胸を張ってくださいよ、

あなたらしくない。


あなた、ここまでこんなに頑張ってきたんですよ。」


※ドラマの受け売りです。





フランス君は黙って私を見つめていた。

 



けど、笑って、

「わかった。ありがとう。

今日、私はケーキを作るよ。」





「え?フランス君が作るの!?ポーン





「私が作るよ、レバノンのケーキ。

今度、日本に行ったら、メイの為にもレバノンのケーキを作るから。」





「ありがとう。楽しみにしてるね。」