若者が書いた若者達の物語という印象を受けてしまうかもしれない。確かにそれは間違いではないかも。ちょっとお固い方が読んだら眉ひそめちゃうかもだし。

 でも!そのようなお固い方にも読んでもらいたいなあ、なんて思う。若者から見た社会、大人の世界が真正面から描かれている。ちょっと誇張した感じも否めないけれど笑。

 若者達の不毛な抗争あり、切ない恋もある。

 まあ、マコトを主人公にした短編集のようなものなので、急展開が始まったと思ったら案外あっさり終わるなんてこともあるけど。

 そしてこのマコトのキャラ作りがいい。大人でもなければ子供でもない。一見喧嘩っぱやい若者である。
 だけど、クラッシクを好んで聞いていたり、涙もろかったり。肩書きで人を見ないためか、彼にはヤクザから刑事やら、裏社会にも表社会にも人脈がある。
 何よりイイヤツで涙もろい(涙もろいエピソードこの刊だっけ?笑)。

 ここに描かれている人々は、必ずしもみんながみんな手を取り合って仲良し〜みたいなハッピーエンドではない。なかなか暗い内容だと思う。
 それをマコトの一人称によって、軽くてゆるい語り口がそれを感じさせない。いや感じるんだけど、どこか希望があるような。
 「そんなこともあるよな人生って!」って笑い飛ばせそうになってしまうから不思議。

 確かドラマ化しているはず。読むと何故か生きる力が湧いてくる本だと思う。





【抜粋】
・果てしなく続くア〇ルセッ〇ス。なかには両刀の男を中心に三人つながってる場面もある。埼京線の貨物列車を思い出した。ガッシャン、ガッシャン。

・その四十五分はおれの人生で何番目かに長い四十五分だった。

・蜂の巣みたいに両側にびっしりと扉が並んだ長い廊下。

・つながる視線。暗い廊下を背にたくさんの色と光が見えた気がする。

・頬や首の線がそいだように鋭くなっている。

・棺桶を二つ並べたくらいの狭い部屋。