第1話
恋
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「ちょっと待ってね…
これはこっちをクリックすれば、」

「はい復元できましたよ、っと」
「わ…!すごい!!
テラさんありがとうございます!」
「いえいえ。このくらいは全然。笑」
テラさんが来て2か月。
百人力とはこのことか、というくらい
仕事が回りに回っている。
年明けすぐのあの頃、
急に部署の人員が減ってしまって、
不安でしょうがなかったわたしに
教えてあげたい。
櫻井部長がヘッドハンティングで
連れてきてくれた寺西さんは、
仕事ができるだけじゃなく、
頼りがいがあって優しくて、
かっこよくて笑顔が甘くて素敵で、
背が高くて声が甘くて素敵で、
…後半は仕事関係ないけど。
でも正直なところ、
毎日会社に来るのが楽しみになってるし、
メイクもお洋服も、
前よりずっと気合いが入ってしまうのは
オトメゴコロというかなんというか…
「おつかれー。りほっちこれ。
うちの部長のハンコもらっといた」
「菊池先輩!ありがとうございます。
わざわざ持ってきてくれたんですか?
午後に取りにいこうと思ってました」
「へー。ハンコ?
まだそういう文化あるんだね」
「稟議書はさすがにね~。
テラはずっと外資だったから
こーゆーの無駄に感じるんだろうけど、
ぶっちゃけまだまだ古い部分多くて」
言いながら菊池先輩が、
わたしのとなりに座る。
テラさんと挟まれるかたちになって、
なんだかちょっと、ドキドキ。
「そろそろ昼だけどさあ、
りほっち今日弁当持ってきた?
もし持ってきてなかったら、
中華ランチ食いいかね?」
「ごちそうさまです!」
「いやテラじゃねーんだけどな。笑」
「ふふふ。中華いいですね!
3人で行きましょ?」
「いやまあ…まあ別に3人でもいいけど」
「っていうかふうま、りほっちってなに。
なにその親しげな呼び方。
ふたりってなんか、そういう関係??」
「まさか!
ヘンな関係とか全くありません!」
「…………」
(秒で否定されてちょっとショック)
「そうだよね?あーびっくりしたあ」
「ただのあだ名です。笑
今産休に入ってる先輩も、
わたしと同じ”加藤さん”だったので、
下の名前で呼ぶ人が多いだけです」
「へーそっかそっか…なるほど」
「り、りほさんっ!!!」
「うわっびっくりした。笑
どしたの?橋本」
「どしたまさき?」
「…こっちも見てください」
「なに?企画書?」
「きかくしょじゃないです」
「声ちっさ」
「おれもランチ、」
「ん?」
「オレもランチいきたいですっ」
「今度はデカいな。
ボリューム壊れてる?笑」
「ふはは。行こう行こう。
みんなで行こうぜ~中華!」
橋本の頭をくしゃくしゃっと撫でる
テラさんの大きな手。
とってもきれいな、長い指。
橋本がうらやましいな…なーんて。
思わずちょっと思ってしまうのは、
ここ最近の、いつものこと。
「りほちゃん」
「…え?」
デスクの引き出しから
カバンを取り出してるときに
初めてそう呼ばれて、思わず固まる。
「ちょっと…呼んでみました。笑」
はにかんで笑うテラさんが
あまりにもかっこよくて、
その笑顔から目が離せない。
「あ、ちゃん付けはさすがにまずい?」
「いえ!あの、ぜんぜん大丈夫です!」
「…むしろうれしいです」
さっきの橋本と同じくらい、
ボリュームが壊れてる。恥ずかしい。
「…なら良かった」
ボリュームが壊れてても、
ちゃんと聞き取ってくれたテラさんがまた、
小さく笑う。
「なーんでまさきが
”りほさん”って呼んでるのか、
オレずっと不思議だったんだよね。
これで謎がとけた。ほっとした」
ほっとした…?
「おまえらなにしてんのー」
「今行くー」
あたらしい春。
あたらしいドキドキが、
春風とともに、やってきた。
第1話
恋
(つづく)
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読んでいただき
ありがとうございます!
分量がとても軽いよね。笑
でもこれくらいで
さくさく書いてくお話もいいな~♡
エピソードゼロのテラ先輩です。
タイトルの「そばにいていいかな」は
「Twilight Sunset」の歌詞からつけました。
timeleszくんたち、
あまりシラナイヨーでも、
日々のすきまで
楽しんでいただけたらこれ幸いです(^^)/