水色と白の存在世界(後編)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「…え?」
「違いましたか」
ドクドクドクドクドク
鼓動の音が、早くなる。
「違わない!それ!え、なんで??
もしかして大輝にも見えてたってこと?」
「いや、さっきはオレなんも見えてないっす」
「なに?どゆこと??」
小さいテーブル、
向かい側にいる大輝の方に
思わず身を乗り出して。
大きな黒い目を真っ直ぐ見つめるけど、
あせってるのはオレだけで、
こいつは全く、いつものテンションで混乱する。
「ちょっと整理させて。オレが見たのは、
あの、近未来みたいな空間の中で
オレと大輝が、向かい合ってて、
なんかこう…ナナメに傾いてるっていうか、
浮いてるような感じの状態で、」
「おでこくっつけてて、
テラさんが目つぶってて、
オレが目を開けてる」
「それ!やっぱおんなじ!」
アルコールのイキオイも相まって、
やたらデカい声が出る。
「大輝見てないのに、なんで」
「オレのは、夢です」
「夢?」
「テラさんが出てくる夢」
夢…?
夢だとまたちょっと違くない??
より一層混乱するオレに、
大輝は信じられないことを口にする。
「テラさんをはじめて
夢で見たのは、高校生の時で」
「高校生??
オレたちが知り合う前ってこと?」
「はい」
「え、なにそれ。
大輝オレのこと知ってたの??」
「まったく知らないっすよ。笑
ただ何回も、夢に出てきてたのは事実で」
そんなことあんの…?
「だから配属された先で
はじめてテラさんに会ったとき、
夢の中の人が実在したんや!って
マジでびっくりしたんですけど」
「そんなすごいこと…
なんで言わないんだよ。言えよ」
「いや普通言わないでしょ。笑
急にそんなこと言われても
オレやったら信じられんし」
…たしかに。
でも不思議と、
怖いとか、気味が悪いとか
そんなことは一切、思わなかった。
「けっこういろんなパターンがあって。
リアルな夢からよくわかんないやつまで、
いろいろなんすけど」
「いちばん多く見てたのが、
さっきテラさんも言ってたやつ。
おでことおでこくっつけて、
オレがテラさんに、テレパシー?
みたいな感じで、なんか伝えてるような、
そんな夢で」
思い出す。
それはたしかに、
さっき見た場面。
「いつもオレが、引き留めようとしてて」
「…………」
「ひとりで行こうとしてるテラさんを、
オレが必死で引き留めてる、みたいな
焦った気持ちで、目が覚めるんです」
「…………」
「まだ全然、知らん人やった時から。
すげー必死で引き留めてて。
いや夢ん中では、ちゃんと知ってる…
知ってる人なんやけど…
なんかうまく言えないんすけど」
「うん」
「何回も見ました。何回も何回も」
時間が止まったように感じる。
「テラさんが消える最後もあれば。
オレが暗闇の中に落ちてく時もあれば。
テラさんが目を開けるけど、
届かなくてつらい気持ちが残ったりとか」
「とにかく繰り返し何回も、見てて。
いっつも最後は、焦ってて」
「…………」
店内のざわめきも聞こえなくて、
さっき見た映像の世界に…
吸い込まれていく気がする。
「見るたびいっつも、なんやこれって…」
「大輝聞いて。
わかんないよ?オレもわかんないけど」
哀しそうな不安そうな表情に
ただ勝手に、言葉が出る。
「オレも大輝も今ここにいる」
「…え」
「オレもいる。大輝もいる。今。
だから、大丈夫」
「………」
「大丈夫だってことは、わかるから」
「…ふはっ」
小さく笑った大輝の目から
不意に涙がぽろっとこぼれ落ちて。
それを見てオレは…
深い深い記憶の底にある、
よくわからない感情を、思い出す。
出会う前から決まっていたような。
存在そのものの、記憶の輪郭。
「あれ。なんでオレ泣いてんだ?笑」
「おい大輝しんみりすんなよ~!笑」
恥ずかしそうに袖で涙を拭う大輝が
恥ずかしくならないように
ふざけて大きな声で返す。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「これってやっぱ、
前世的なやつってことなのかな」
駅までの道を歩きながら、
金髪に問いかける。
「オレが兄貴で、大輝が弟」
「逆やないすか?」
「いやどう考えてもオレが兄貴だろ。笑」
「そーーーっすかねえ」
いつもの軽口の叩き合いだけど。
なぜか不思議と…安心したような感覚に
包まれている。
「もしくはアレかな。師弟関係とか。
オビワンとアナキンみたいな」
「スターウォーズや。笑
オレダークサイドに堕ちるのイヤやわー」
「それこそ逆じゃない?
ダークサイドに堕ちそうなオレを
大輝が助けようとしてる」
空想にもってくことで、
にわかには信じられない事象を、
納得させようとしてるオレは
思考がふわふわしてるけど。
オレよりもっともっと長い時間、
このことを考え続けてきただろう大輝は
妙にキモが据わっている。
「オレは…前世っていうよりは、
未来のような気がしてます」
「未来?」
「ずっとずっと先の未来」
駅までの道。
小さな街灯の淡い色が。
大輝の金髪を照らしている。
「ずっとずっと先の未来、
もしテラさんがダークサイドに
堕ちそうになったら、オレが助けます」
「……………」
「絶対助けます」
「…頼もしいねえ」
答えながらなぜかちょっと、
泣きそうになる。
もしもほんとに、
オレがそんなことになったら、
こいつは自分のことなんて顧みずに
絶対にオレに手を伸ばすだろうことが
確実に”わかる”から。
そして逆の立場だったら、絶対に、オレも。
それはもう当たり前の事実として、わかる。
「高校の時からいろいろ…
このわけわからん事象について、
調べてたんすけど」
まっすぐ前を見たまま、
大輝が、つぶやく。
「a priori、ってことで、オレは納得しました」
「ア・プリオリ…」
なんだっけ。
心理学用語だっけ?
単語自体は聞いたことがあるけど…
スマホを取り出して検索する。
ア・プリオリ
【a priori ラテン語:名・形動】
経験する前からわかること
理屈だけでわかること
「…そっか」
あの映像がなんなのか、
前世なのか来世なのか、
そもそも全く違うのか、
それはわからない。
でもオレと大輝が、
”つながっている”ということは、わかる。
どうしてそれがわかるのか、
説明はできないけど。
経験する前から知っていた。
たしかにきっとオレたちは。
「”秩序と無秩序、存在と全体は、
境界なく連続し、ぶつかり合い混ざり合う”」
「”混ざり合い満ち引きし続ける”」
さっき大輝が読んでた資料を思い出す。
混ざり合い、
満ち引きし続ける世界で、
この先の未来、何がどうなるか。
そんなことはまったく、わからない。
わからないけど…
この想いが、この事象が、
偶然じゃない、かけがえのない絆であること。
それだけはたしかだから。
「テラさん、締めのラーメン行きません?」
「お、いいねえ。行くか!」
巡り会えた今、この世界。
ただただ”今”を生き続けてく。
オレたちはまだ、出会ったばかり、
今の物語はここから…始まったばかり。
水色と白の存在世界
(終わり)
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読んでいただき
ありがとうございました(^^)/
いやーーー楽しい。
めちゃくちゃ楽しかった!!
さしたる解決もなく、
締めはラーメン頼みだったけど、笑
思い描いてた感じで書けたので
わたし的には大満足です、
お付き合いありがとうですほんとに。
なんかね、てらしののふたりには、
こういうちょっと、言葉ではいい表せない
深い関係性みたいなものがとても似合うと
思っていたのでね…
書けで良かったです(^^)
最後まで読んでくれてありがとうー!







