彼方からの手紙 -18ページ目
第3話
ピーチメルバ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
side 将生
「戻りました」
「おかえり~。どうだった?会議」
「めっちゃ疲れました」
「ふはっ。正直。笑」
となりのデスク、
先輩が立ちあがった瞬間に、
ふわっと香る甘い香り。
…あれ?
先輩の使ってる、
甘いピーチの香りに混じって、
さわやかな匂いも一瞬届いてくる。
この匂いは…テラさんだ。
ついさっきまでここに、
テラさんが来てた証拠。
すっきりした大人っぽい、
落ち着く香り。
”これ香水じゃなくて、柔軟剤なんだよ”
何を使ってるか知りたくて、
聞いたときに返ってきた答え。
柔軟剤の名前はなんだっけな…
香りの種類はたしか、
ブルーデザート、だったはず。
ドラッグストアで見つけた時、
思わず買いそうになって、
とっさにやめたことを思い出す。
テラさんと同じじゃダメなんだ。
オレはオレでもっともっと、
魅力ある男性にならなければ。
「テラさん来てたんですか?」
「え?」
動揺してる先輩の顔。
隠してもわかる。
先輩の感情なら、オレにはもう。
「契約のこと、結果出るの、
そろそろかなって思ったんで」
「あー…、契約のこと、
ではなかったんだけど。
うん、さっきまでここにいたよ」
「仕事以外のことですか?」
ダサいってわかってても、
つい聞いてしまう。
「そうだ!橋本の作った資料、
テラさん褒めてたよ~、すごくいいって」
「えっマジっすかっ!やった」
オレの問いかけをはぐらかしたことより
テラさんに褒められたことが嬉しくなって、
声が高くなる。
なんなんだよオレ…
先輩が惹かれるのもわかる。
オレだってテラさん大好きだし。
尊敬してるし、憧れてるし。
でも。
できることなら。
テラさんが来る前に戻りたい。
オレが入社したばっかりの頃に。
先輩が指導係としてずっと
オレと一緒に行動してくれてた、
あの頃に戻れたら…
「ごめんごめんごめん」
不意に声が聞こえてきて
先輩と一緒に振り向くと、
急ぎ足で近づいてくるテラさん。
「オレさっき間違って、
りほちゃんのボールペン
持って帰ってたみたい。ごめん。笑」
「そうだったんですね!
ちょうど今探してたところでした。笑」
「ごめんごめん」
「りほちゃん、」
つぶやいた声は、
小さすぎて誰にも聞こえてない。
りほちゃん、なんて…
もうそんなに近くなってるなんて。
「将生!資料めっちゃ良かったよ!」
「…ありがとうございます」
オレ上手く笑えてるかな。
優しく笑うテラさんの顔が
真っ直ぐ見られない。
「やべ。時間だ」
「打ち合わせですか?」
「うん。ふーま待たせてるから
怒られるかも。じゃあね!笑」
颯爽と去ってくテラさん。
あとに残される、
ブルーデザートの落ち着いた香り。
チラッと真横を見ると、
うれしそうに笑う先輩の顔が
目に入って、胸がつぶれそうだ。
どうしたら。
どうなったら。
オレはテラさんに勝てるのかな…
「今日のお昼どうする?
橋本なんか買ってきてる?」
「…いえ、今日は、特には」
ほんとは朝買ったサンドイッチが
給湯室の冷蔵庫に入ってるけど。
「じゃあ駅の裏の、
パスタやさん行かない?」
「行きます!行きたいです」
オレと先輩には、
これまで過ごしてきた時間がある。
「りほさん今日は、
カルボナーラはやめた方がいいっすよ」
「ええ?」
「こないだ食べた時、もたれた~って
午後仕事になんなかったじゃないすか。笑」
「そうだ!そうだった。
よく覚えてるね。笑」
先輩のことなら
なんだって覚えてる。
先輩が使ってる甘い香水は、
ピーチメルバって名前だってことも。
初めてテラさんに会った時の、
先輩の表情も…
テラさんへの気持ちに、
気づいてしまってるけど。
オレの想いは…
胸のざわめきを抑えるように、
大きくひとつ、深呼吸する。
第3話
ピーチメルバ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
読んでいただき
ありがとうございます(^^)
せつない将生を書くの楽しすぎて、
かなり短時間で書けました、嬉しい♡
テラさんが使ってる柔軟剤は
もちろんTAILOR!

ボトルかわいいよね
タイトルのピーチメルバは
古内東子女史の曲のタイトルです。
懐かしい…ってか30年前の曲!笑
お話の内容もほぼ歌詞の世界観のままで、
男女を入れ替えて書いてみました。
ピーチメルバのイメージの色は
ピンクっぽいから将生いいな!
って思って書いたのもあったよ、
めっちゃ楽しかったです(^^)
おはようございます月曜日!
わたしは週末、
無事新しいiPhoneになりました〜!

これからよろしくね
いろんなとこ行こう

2019年から使ったイエローと
実際の見た目はもっと薄い青
新しくなったとはいえ、
クラウドからバックアップすると
全てが引き継がれるから
壁紙もアプリの並びも
前と全く一緒なのでそんな、
新しい感じはしないんだけど。
画面はキレイな気がする。
文字も見やすいような気がする。
(気のせい?笑)
あ、でも重さは軽くなった!
そこはけっこう違うかも。
(画面の大きさは一緒らしい)
写真も撮ってみるの楽しみです(^^)/
では仕事します。
今週もぼちぼちいきましょう、
暑すぎるので無理せずにでね(^^)
こちらのお話のつづきです(^^)
第2話
ドーナツ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うわ暑っつ!外こんな暑かったんだ」
「ほんとだ…蒸してますね」
さっきまでいた取引先のオフィスは
かなり冷房が強かったことを実感する。
「良かったらなんだけど。
ちょっとお茶してから帰らない?」
不意にそう言われて、
キュンと胸が高鳴っちゃう。
「行きたいです!
ずっと緊張してたから、実は喉カラカラで」
「オレも緊張した~」
オレも、ってテラさんは言うけど。
プレゼン中の姿は、余裕も安心感もあって、
うっとりしちゃうほど素敵だった。
いつも素敵だけど、
いつも以上にかっこよかったな…
「ここにしよっか」
テラさんが立ち止まったのは、
木目調の扉がかわいい、小さなカフェ。
テーブルを挟んで向かい合って座ると、
ドキドキ心拍数が上がってくる。
同じプロジェクトチームで
テラさんと仕事をはじめて約3ヶ月。
みんなでごはんに行くことは
わりとしょっちゅうあったけど、
ふたりきりは初めてだから、嬉しい。
大きな窓から入ってくる西日に
まぶしそうに目を細めながら
アイスコーヒーを飲む仕草。
あまりにかっこよくて倒れそう。
グラスを持つ長い指、
パリッと清潔なワイシャツ、
目じりの、甘い、優しい感じ。
まっすぐ見るのが恥ずかしくて、
またアイスラテのグラスを手に取る。
「今日のプレゼン…契約決まるといいな」
「決まります!絶対に」
「ふはっ。頼もしい。笑」
笑うと目が、ひときわ甘く、
優しくなるところ。
好きだなあ…って思ってしまう。
「オレさ、」
「?」
「櫻井部長に声かけてもらって、
この会社に来たからには、
絶対結果出さなきゃなって
春からわりと…気負ってたんだけど」
「事前準備も資料の作り込みも、
ずーっと一緒にやってくれて、
マジでめちゃくちゃ助かってました。
ほんとにありがとう」
「いえ、そんな…」
ヘッドハンティングだからこその
プレッシャーがあったんだな…
テラさんの役に立ててたなら、うれしい。
「休日出勤になっちゃった分の振替、
なるべく早めに申請してね」
「はい。了解です。
テラさんもちゃんと休んでください。
ずっと忙しかったんですから!」
「うん。そうする」
まぶしい光に照らされた、
大きな手がきれい。
「でもなあ…」
「お休み、とらないんですか?」
「休みはもちろん、とるけど。
オレなんでか、休みでもついつい、
仕事に絡めたことしちゃうから。笑
買い物するのに街歩いてても、
マーケティング調査っぽくなってたり」
「わかります!
実はわたしもそうです。笑」
「えっ、りほちゃんも?」
うれしそうな笑顔で
不意に下の名前で呼ばれて、
ドキドキ鼓動が早くなる。
「こないだの日曜日も、
今日訪問する会社の昔の商品の、
歴史とか実売数とかネットで調べてました」
「マジ?オレも全く
同じことやったやった。笑」
恥ずかしそうに、
困ったように笑うテラさんが
まっすぐわたしを見る。
ドキドキドキ
優しい笑顔。
柔らかく見つめ合ったまま、
ふふふ、と一緒に、笑いあう。
距離がぐっと、近くなってる気がする。
ああもうなんて、
なんて幸せな時間なんだろう。
「でもたまに、たまーにですけど。
こんな風に休みの日まで仕事してたら
あっという間に30になっちゃうって、
ちょっと焦る気持ちもあります」
「たしかに日々あっという間だよね。
でも30代は悪くないよ、案外」
「ほんとですか?」
「うん。焦る気持ちもわかる。
オレもちょうど、りほちゃんの年の頃、
考えてたから。未来とか…そういうの」
テラさんの考えてた”未来”には。
当時の恋人のこともあったのかな、なんて。
”27で別れたのが最後で
ここ最近は彼女もいない”
いつだったかの飲み会の席で
菊池先輩にコイバナをつっこまれて
そう告白したテラさんを思い出す。
まさにわたしと同い年の頃に
別れたってことだもんな…
「27の頃は今以上に仕事仕事だったから
先のことは考えられなかったけど、今は…」
視線を落として、
何か思い出すようにしてたテラさんが、
一瞬わたしを見て、不意に黙る。
「…………」
「ん?今は、なんですか?」
「これからのことも、
大切にしたいなって思ってて」
「これからのこと?」
「こうなったらいいなっていう、未来」
さっきまでどこか、
照れたような雰囲気だったテラさんが、
急に意を決したような、まっすぐな視線で、
わたしを見つめる。
「もっといろいろ、知りたいし、
オレのことも知ってほしいって思ってます」
ドキドキドキ
それって、それって…
「っあーーーーっ、ごめん。
オレぜんぜんうまくないね。
ふーまならもっとさりげなく、
デートに誘えんだろうなあ。笑」
そう言って恥ずかしそうに笑うけど。
わたしはむしろ、うれしくて。
まっすぐな誠実さが伝わってきて、
胸の高鳴りが抑えきれないよ…
「テラさんは、ステキです」
「マジ?うれしい。笑」
「優しくて頼りがいがあって、
笑顔もステキで…完璧で、」
「いやいや完璧は言い過ぎ。笑」
「そんなことないです!」
「最近けっこう焦ったりするからさ、
我ながらダセーなーとか思ってるよ?」
「焦る?テラさんが?」
「将生がりほちゃんと距離近かったり、
ふーまがさらっと助け舟出したりとかさ、
そういう場面見るとちくしょーとか、
思ったりするし」
「え、」
完璧なテラさんが、
そんな風に思ってたなんて…
「…………」
「…………」
不自然な沈黙が、くすぐったい。
なんて言ったらいいのかわからなくて、
アイスラテを手に取ったら、
まったく同じタイミングで
テラさんもアイスコーヒーを持つから、
顔を見合わせて笑ってしまう。
「ふははっ」
「ふふっ」
今が、今この瞬間が。
ずっと続いたらいいのにな…
「うちの近所に最近、
ドーナツ屋さんが出来たんだけど。
そこのチョコのかかったドーナツが
すっげーうまくてさ」
窓から差しこむ光が、
だんだんと傾いて、
わたしの手元にまで届く。
「今度、ふたりで食べない?」
「はい」
ドキドキ胸が高鳴って。
うれしくてうれしくて。
幸せな未来を想像して
小さく笑ったわたしを、
甘いまなざしのテラさんが、
優しく見つめてくれる。
第2話
ドーナツ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
読んでいただき、
ありがとうございます(^^)/
これは4月OAの
「真夜中の社内恋愛」をベースに
書いとるのだけど、
このペースでいくと
新入社員シノヅカが出てくるまで
だいぶかかってしまうぞ?笑
がんばって、なるべく短く収めたい(^^;)
気分転換的に、
楽しんでいただけてたら、
うれしいです(^^)

