【妄想小説】優しい雨(8) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

<第8話>

情熱の彼方に何がある

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「情熱~の彼方にーな~にが~あるー♪」

ふんふふーふーんふふー♪

歌詞の続き、

わかんなくなっちゃったのかな、
ハミングに変わってる。

「ずーっと言えなかったー♪

言葉があーるー♪」

1番と2番、
ごちゃごちゃになってるよ?雅紀くん。


雅紀くんの歌う声が好き。
大好き。

 

「ふーふーん♪……あれ。

メロディもわかんなくなってきた。笑」


「歌うたいのバラッド?」

「うん、斉藤和義」

歩きながら、
雅紀くんが黒いブーツのつまさきで
アスファルトコツコツする仕草が好き。

工業地帯の向こう側に広がるのは

どんより暗い海。


キラキラしてない、波の音。

 

 

「雅紀くん」

「んー?」


「ありがとう」

「え?」

「海、連れてきてくれてありがとう」

「うん」

「会ってくれて、ありがとう」

「……うん」


もう会ってくれないんじゃないかと思ってた。

「やっぱり会いたくて…ごめんね?」

 


「…オレも会いたかったし」


ずるい。
小さくそんなこというなんて
なんてずるい人なの。

ざざざーって、
遠くで車が砂利を跳ね上げてる。

きれいな波の音じゃない。
もっと現実的な音。


「寒いから、もう車戻ろっか」

「……」

「こーら」


まだここにいたいって顔してるわたしを
いいこいいこってなだめる手。

距離が近くなったスキに
からだを寄せて広い背中に腕を回す。

「おっと」

イキオイごと

ぐっと受け止めてくれる広い胸。好き。


「あー…」


雅紀くんのこの声は。


動揺?
躊躇?
それとも…


「あーもう」


言いながら、
宙で迷ってた長い腕が
ぎゅっと抱きしめ返してくれる。

雅紀くんの長い腕。好き。


「やっぱオレ…ダメだ。笑」
 

 

雅紀くんのさらさらの髪が
右頬に当たる。
ぎゅってもっと抱きついて
離れたくないよって。


「ねえもうほんとに…オレダメだね?」

「ううん」

「こんなさー、こんな…ごめん」


ぎゅってしてくれてる間は
わたしのことだけ考えてよ。


「好きなの」

「……」

「雅紀くんが好きなの」


隙間がなくなるほど抱きしめあう。
このままぴったりくっついて
離れられなくなればいいのに。


「もっときれいな海が良かったよね?」


ううん、って
首を横に振る。

「一緒ならどんな海でも、」

腕の中から見上げた顔はせつなくて。 



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 


「先シャワー浴びる?」

「うん」

「けっこう潮風強かったねー?」


脱いだ服、

くんくんしてる顔はすごく無邪気。



とっても無邪気で
とっても甘くて…
とっても残酷。


「あ、待って」


バスルームに向かおうとした腕
引っ張られて。

重なるくちびる。

優しくてあったかくて、
いちばん愛されてるって
錯覚しちゃうようなキス。



ねえこんなキス…
わたし以外にするの。


彼女にも…してるの。


「口、開けて」


雅紀くんが
親指でわたしのくちびるを撫でる。

言われるままに少し開いたら
そっと雅紀くんが入ってきて…


苦しい気持ちなんか追い越して

もっともっと、って
残酷な甘さに包まれる。


この気持ちはもう、
どうしようもない。

 

 

情熱の彼方に何がある?

 


歌詞の続きは
”気になるから行こうよ”
だよ雅紀くん。


気持ちのままに走って

困らせてごめんね、

思いながら腕を伸ばして、
雅紀くんの首にぎゅってしがみついた。


情熱の彼方に何がある

(初出:2016.5.20)



(第9話へつづく)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



読んでいただき

ありがとうございます。


第8話としてここに持ってきました。


5月にRebornしたときにもらった、

コメントとメッセージのおかげで

連載にすることができたので、

5月に書いた文章も、コメントもそのまま、

残しておきます。



引き続き第9話も

どうぞよろしくお願いします(^^)




【2020.5.17】

 

ハピネス体操でキレイな汗を流す

キラキラ健全な相葉先生を見ていたら、

 

不健全な雅紀くんを欲してしまい(^^;)

ビターな短編をRebornしてみた次第です。

 

本命の彼女がいるのに

積極的な女子に押されるがまま

つい浮気してしまう雅紀くん、、

いいよね…(偏ったわたしの趣向)

 

 

櫻井先輩の合間に、

お付き合いありがとう。

 

日曜日お疲れさまー(^^)