渋谷の「シネクイント」で大根仁監督の『恋の渦』を観てきました。公式サイトのストーリーをそのまま引用すると、以下のようになります。

「部屋コンに集まった男女9人。イケてないオサムに、カノジョを紹介するのが、今夜の隠れテーマだ。しかし、やってきたユウコのルックスに男は全員ドン引き。それでも無理矢理盛り上げようとするが、全てが空回りし、微妙な空気のままコンパは終わったはずだったが・・・。その夜を境に、男女9人の交錯する恋心と下心、本音と嘘が渦巻き、ゲスでエロくておかしな恋愛模様が繰り広げられていくのだった。

三浦大輔率いる劇団ポツドールが7年前に上演した舞台の映画化だそうです。三浦大輔という人は演劇だの映画だのを観ない人だそうで、この舞台の元ネタはフジテレビ『あいのり』だそうです。それを原作にした本作品はエンターテインメントに徹したもの。日本映画の場合、喜劇でもつい「高尚なもの」の方向に引っ張られがちですが、そうならないようにしたということでした。

だからこそ、というべきか、本当に面白い映画でした。ぜひ多くの人に観てもらいたい。

男女9人を演じるのは、失礼ながら無名な役者ばかりです。匿名性のある作品にしたかった、ということでした。おそらくはその方がより観客が没入できるからでしょう。

これは後で気がついたのですが、画面に映るのは室内ばかりです。でも、「肉まん買ってきて。すぐ近くのサンクスのじゃなくて、もう少し行ったところのセブンイレブンのやつ」とか、「駅前のスタバで話してくる」なんていうセリフが多く出てきて、観客の脳内には自然と外の情景が描かれてしまいます。私もそういえば外の場面がなかったじゃん、と気づいたときには驚きました。

内容を一言で表せば「因果応報」。ラストの展開にそういうことだったのか!と溜飲が下がります。たとえば、サトミがほかの女たちとなんとなくうまくいかなかったり、どことなく暗い性格だったりするのは、そういうことだったのか、と。「深夜のテレアポ」という彼女の仕事の怪しさには早くから気づいていましたが、なるほどね、と。

大根仁は『モテキ』のテレビドラマ版と映画版の監督です。テレビドラマ版はすばらしいが映画版はラストが非常によくない、というのが私の評価でした。

しかしこの『恋の渦』は全きエンターテインメント。「高尚さ」に陥ることなく最後まで観客を楽しませてくれます。見終わった後も気分爽快。当日は出演俳優のほとんどが見送りに来ていましたが、皆さんに本当にありがとうと心から申し上げたい気分になりました。

そもそも何といってもタイトルがすばらしい。『恋の渦』、誰も彼もが巻き込まれずにはいられません。



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