父は、仕事一本。
父は、妻と子供と愛している。
時には弱音を吐きながら、時には一家の大黒柱として、堂々と。
自分の成長には気の遠くなる様な努力を惜しまない。
大人になって、、家を離れるとそれがどれだけ素晴らしい事かが解り、父への尊敬の
念を募らせた。
五年前の事だった。
そんな、父が浮気をした。
その頃は、私もまだ子供で裏切る父を恨む事しかできず、母のサポートを精いっ
ぱいした。
今、思うと、遊ぶ事なく真っ直ぐに生きてきた彼は、運悪く他の沢山の女性に溺れる事の楽しみを知ってしまっただけなのだろう。
男なら浮気の一つや二つと世の中は言うだろうが、私は浮気をしない男はいると
素直に信じていた。
なぜなら、父がそうだったから。
そう思える事はこの上無い幸せだった。
その事実を知った時の、私達の傷は計り知れない。母は泣き崩れ、妹はブチ切れ
恨み、私は放心した。兄は、直接コンタクトを取って無いのでわからないが。20
年も付き添い、一途で純な母の深い哀しみ苦しみは想像すら出来ない。浮気を知
った上での暮らしは苦しかっただろう、辛かっただろう。そんな、母に遠い東京
からできる事は、コツコツと毎日mailを送り続ける事くらいだった。父には、子
供として、贈り物や母の偉大さを切々と織り交ぜ話をした。私は、連絡をする度
に、両親が好きになっていった。
その甲斐もあってか、ここ最近二人とも仲がよくデートも出掛けている様で、と
ても微笑ましい幸せを感じていた…嬉しかった。本当に。母が笑う顔は誰よりも
美しく可愛らしい。
しかし、、、また浮気をした。
次は一人と…本気スレスレの…
愕然とした。
私がインドに旅にでていた最中にわかった事。
二度と無いと誓った父が。
私はもう、二度と父と呼ばないと思った。
もう、二度と信じない。
どうしてだろう、幸せじゃないのか?こころの隙間に入った女。毎日支え続ける
母を横目に。父のこころが弱いのか、母を愛していないのか?
きっと、この女性と切れても、父のこころのままでは繰り返すだろう。
初めて…母は父をはたいた。
どれだけ辛い一撃だったろう。
その死ぬ程のこころの痛みは母の手から伝わっているのだろうか。
私は、全ての予定をキャンセルして実家に戻る事をすぐに決め、話を聞いた。長
女として、母は私が守らないとと、強く強く心臓が鼓動し、腹を据えた。
二度目にも関わらず、信じようとする母。逆にその純粋さが、父が毒キノコに掛
かる原因だろうか。そんなバカな事が許されるだろうか、私は最後まで綺麗な母
のこころが幸せであり、勝つと信じたい。
所詮、遊びの経験の無いおじさんなんてチョロいもの。
そのうち愛想を尽かされて、母の元に戻るのに。
戻った時には、母はもういないかもしれないのに。
母がいないと何もできないのに。
冷めたら捨てられるのは自分なのに…わかっているのだろうか。
それがわかった上での、浮気なら、私が娘であることを辞めようと思う。母の愛
情を裏切り、母を捨て、子供を捨て自由にすればいいじゃないか。一人で、孤独
に過ごせばいい。私達が母を守るから。
母を、お嫁さんを一生守ると決めた誓いはどこへ?幸せだった日々はどこへ?
人は人、自分で思う人生を生きればいい。選ぶものがあれば捨て無ければいけな
いものもある。去年の夏、私にそう教えてくれたよね?そう選ぶなら、私は何も
いらないよ。
ただ、、、もう一度信じて…父と呼ばせて欲しい。父の力で幸せな母の幸せな笑
顔を取り戻して欲しい。妹と私に幸せな結婚のカタチを見せて欲しい。
例え、故郷に帰ると母が決めていたとしても。