「結局だれも持ち帰らなかったのかよー。」
前回の合コンで一緒だった広報君がキャベツを口いっぱいにほおばりながら言った。
「ゆとりは結局カラオケ行かなかったしなー。あのドタキャンはないわー。合コンはチームワークが大事だってあれほど言ったのによー。」
この日、一同は社員食堂で前回の合コンの反省会をしていた。
時刻は19時を回ろうとしている。ゆとりが帰ろうとしていたとき、残業組の同期に捕まったのであった。
緑茶をすすりながら話を聞き流していると、広報君が話しかけてきた。
「ゆとりは同期飲みでもあんまり2次会に行かないし、なんか急にノリが悪くなるときがあるよなー。もしかして意識高い系か?」
意識が高いか。
緑茶を飲み干して、私は答えた。
「語弊を恐れずに言えば、"み・ん・な"意識は高いんだよ。いいか、人間には自分はほかの人とは違う、個性的な存在だと、ことあるごとに自分に言い聞かせ、周りの人にもそれをわからせようとする傾向があるんだ。
自分が人より勤勉な社員、利口な投資家、床上手、話術の達人、親切な友人、有能な親だという自負を持っている人は、全体の9割以上といっても過言ではないんだ。どんな能力であれ、自分を平均以下と評する人は、全体のほんの僅かな割合でしかないんだよ。」
本屋の自己啓発コーナーに行けば、”私は人があまり踏み入っていない方の道を選んだ。”それがどんなに大きな違いをもたらしたかをグダグダと書き綴っている駄作がずらりと並んでいるだろう。
電車の中で、”おいおい見てみろよ。みんな、ただ何となく毎日を過ごし、周りばかりを見回して、考えるということをしないどんよりとした目のロボットじゃないか!この中でユニークなのは自分だけだ。” とか考えたことがあるだろう。
俺たちは、大勢に従うときでさえ、自分だけは例外だと思っている。自分は大勢に同調しているわけではなく、自分の独立した考えで決定を下していると思っているんだよ。
言い換えれば、自分の行動が、一般的な影響要因や日々の出来事にそれほど左右されないと考えていることになる。つまり、”みんな意識が高いんだよ”。」
高学歴君がつぶやいた。
「人はその他大勢と見られることに我慢できないんだよなー」
「そのとおり。そういった意味では、だれしも意識が高いと言えるんだよ。」
広報君「ゆとりはすぐ理屈をこねくりまわすからなー。」
「はいはい。まぁ、この考えに基づけば、女の子との会話で重要なフレーズがどんなものか見えてくるだろう。(笑)次はお持ち帰りできるように頑張り給え。」
広報君「お前に言われたくねぇーわ。」
食事を終え、一同は食堂をあとにした。残業組はまだ仕事をやるらしく、愚痴をいいながらエレベーター前で雑談をしている。
軽く挨拶をし、出口に向かおうとすると、後ろから笑い声とともに威勢のいい声が聞こえてきた。
「次はいつやるんだよ?」
いい兆候だ。うん。
