僕が高校生のとき、すごく好きな人がいた。
とても髪の長い子で、目がクリっとしてて、服装もかわいかった。
当然のように彼女はモテていたから、僕みたいな人間が近づけるような人ではなかった。
少なくとも、僕はそう思っていた。
僕が高校2年生になって、無理やりクラス委員をさせられた時、彼女もクラス委員だった。
放課後、ときどき残ることがあっても駅まで一緒に帰ることなんてできない僕は、少しだけ話せるのだけが楽しみだった。
話せると言っても今思えば、クラス委員として必要な事務的な会話だったのだけれど。
それでも、僕にとってはすごく楽しい時間だった。
そんなある日、僕が話し合いが終わって、帰るときに彼女に「一緒に帰ろうよ」と誘われた。
僕は何かのいたずらかからかいなのかと思ったけど、彼女は笑って「何でそんなことするのよ」と言った。
いつも一緒に帰ってる友達が今日は来ていないから、同じ電車通学している僕を帰りのお供として選んだんだそうだ。
帰り道に変質者が出るとかそういうことも無かったけれど、田舎なのですごく暗くなるし、確かに女の子が1人で帰るには危険だなと思った僕は少し恥ずかしかったが、一緒に帰ることにした。
グランドではラグビー部がまだ練習をしている。
夏休みはどこに行った。
今度のテスト難しそうだよね。
そんな風なつまらない、どうでも良いような話ばかりした。
僕にとってはすごく充実した話だった。
それまでまともに同世代の女の子と話したこと無かったし、緊張したけど、嬉しかった。
そんな幸せな時間はあっという間に終わった。
駅について僕は定期入れを出す。
そうすると彼女が
「わー、その定期いれかわいいねwそういうの持ってるんだね。意外だな~。」
と言ってくれた。
すごく嬉しかった。
「あ、ありがと。。。」
すごく小さな声だったと思う。
もっとちゃんと大きな声で言えば良かった。
そんなことを考えているうちに彼女を改札を通ってエスカレーターに乗ろうとしている。
彼女は後ろを振り向いて「早く来なよw」と笑った。
僕はそんな無邪気な彼女を見ているとなんだか嬉しくなって急いで向かった。
いつもなら僕の学校の生徒がいっぱいいる駅なのに、うまく時間帯がずれて、帰宅部の生徒も部活帰りの生徒もいない時間帯だった。
ドキドキ
ドキドキ・・・・
こんなチャンスめったにない。
僕はそう思った。
今なら告白できるかも知れない。
せっかく彼女と一緒に帰れたんだ。
夏休み過ぎてもほとんどまともに話せなかったんだ。
このまま、告白しなかったらまともに話す機会なんて無くなっちゃう。
三年生になったら、進路が全然違うから絶対別のクラスになっちゃうし。
今しか無いんだ。。。
「あのさ・・・」
「ん?なに?」
「僕、君のこと好きなんだ。」
「え?」
「だから、付き合って欲しいんだ。」
「え?あ。。。何言ってるの?」
・・・しまった。僕は馬鹿だ。
自分ばっかり興奮して。
いきなりこんなこと伝えたらびっくりするに決まってるのに。。。。
「あ、あたしそういう趣味無いし。彼氏いるから。」
「・・・・ごめんね。」
「そういうの、きもいよ。」
「・・・・・・・・」
僕は泣いてしまった。
電車が来ているのにも気づかないくらい。
耳鳴りがすごくて、今自分が何をしているのかもわからないかった。
彼女の方を見るとすごく汚いものを見るような目で僕を見ていた。
それでも、彼女は優しくて、少し下をうつむいた後、手を振ってくれた。
プシュー
そう言ってドアが閉まるのを僕は見ていた。
涙を拭いて、彼女が手を振ってくれているところをしっかりと見ていた。
それから、何時間経ったんだろう。
そんなに経ってないのかも知れない。
ラグビー部の電車通学組みがやってきた。
とてもガラが悪くて、僕の一番嫌いなタイプの人間達だった。
そのうちの1人が僕を見てこう言った。
「なんだよ、お前。泣いてんのか?」
そう言って僕にハンカチを渡してきた。
びっくりした。
今思えば失礼な話だが。
そんな気遣いが出来る人間があのラグビー部にいたのか。と思った。
僕はありがとうと言い、メガネをとって涙を拭いた。
僕が洗って返すよと言うと、彼はそんなことしなくて良いよと言って僕からハンカチを盗った。
そして、こう続けた。
「お前さ、泣いてる顔より笑った顔の方がかわいいよ。」
「え?」僕はびっくりしてメガネをかけて、彼を見た。
同じクラスの高橋だ。
「何言ってんの?高橋君。。。」
「俺、同じクラスになったときから、お前のこと良いなって思ってたんだ。」
「そうだぜ、俺らが橋本は暗くて地味だからやめとけって言ったのに、こいつ本気で怒って、橋本にもかわいいところがあんだよ!!だってよww」
空気の読めない筋肉馬鹿がほざいた。
おっと、彼と同じ部活の鈴木がそう言った。ちなみに橋本は僕の名前だ。
周りの部員が鈴木を連れて向こうの方へ行った。
そんな気遣いが恥ずかしかった僕は思いと正反対のことを言った。
「ぼ、僕なんかのどこが良いの?」
「お前、ほら。花・・・持ってきてるじゃん。」
僕ん家は花屋で時々花を持ってきてクラスに飾っている。
「見てたの・・・・?」
「いや、別に盗み見しようと思ったわけじゃ・・・朝練で早く来たから・・・・」
「俺、ああいう気遣いが出来るやつ、良いと思うよ。」
「あ、だから泣くなって!!」
僕は自分でも気づかなかったけど、泣いていたらしい。
その涙を彼はそっとふき取ってくれた。
「ほら、このハンカチやるよ。そんなに泣かれたんじゃ、俺が何か悪い事したみたいだからな。」
恥ずかしそうに言う、彼がなんと言うか。。。
とてもかわいく見えた。
「僕、今振られたばっかりなんだ。。。」
「え?・・・あっ!!」
振り向いた彼にキスをした。
「その傷をふさいでくれるなら付き合っても良いよ~♪」
笑いながら、無邪気に走った。
そんな僕を彼は抱きしめた。
すごく幸せで、涙が止まらないな~♪と思った。
強く抱きしめる彼がこう言った。
「お前さ、なんで一人称が僕なの?」
「え?変かな?」
「いや、そういうのもお前が言うとかわいいけど////」
「ふふwありがと♪」
僕は男っぽくて、全然かわいげが無くて、そんな僕と正反対な彼女にあこがれていて、いつのまにかその思いが変な方向にいっちゃんたんだと思う。
でも、こんな僕でもあんなに真顔で「かわいい」って言ってくれる人がいるんだって知ったら、そんなことどうでも良くなって、すごく嬉しかった。
まだ、自分の事、僕って言ってるし、変えるつもりもさらさらない。
だって、それでもかわいいって言ってくれる人は絶対にいるから。
お腹の子供が生まれてきたら、僕と彼の話をしてあげよう。
みんなに愛されなくても、ちゃんと1人の人にいっぱい愛される人になってくれるように。