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2014年4月の医学部入学定員は前年比28人増の9069人になることが分かった(表1、2)。文部科学省が1月27日に各大学の増員計画を発表し、28日に文科相が認可した。医学部入学定員の増員は従来、12月に発表・認可されていたが、地域枠に関して大学と都道府県の調整が遅れていた(関連記事:2014年入学の医学部定員は20人増の9061人)。昨年12月時点で20人の増員が発表されていたが、新たに3大学で8人増員した。
文科省は(1)地域枠の増員(2)研究医枠の増員(3)歯学部の定員を減らした分の増員――の3つの枠組みで増員希望を受け付けている。1月に追加で増員が認められたのは、埼玉医大の4人、東京医大の2人、東海大の2人で、いずれも地域枠での増員。東京医大の地域枠は、山梨県が奨学金を負担する。
文科省は地域の医師確保などを目的に、08年度から医学部の定員を増やしている。増員は7年連続となり、増員前の07年度に比べて1444人増えたことになる。増員期間は19年度までで、それ以降はその時点の医師養成数の将来見通しや定着状況を踏まえて判断する。14年度と同じペースで定員が増えれば、16年度にも1万人を超える見通した。
日経メディカルより抜粋
ある日、福岡県北九州市にある北九州市立八幡病院に、熱傷を主訴に1歳9カ月女児が母親に連れられて来院した。当初、母親は「腕に熱傷がある」と話していたが、服を脱がせてみると上半身に広範で一様な熱傷が認められた(写真1)。
受傷機転を確認したところ、母親は「ミルクを温めるためにお湯を張ったボールを、子どもが届かないであろうと思い、卓上に置いていた。しかし、そのボールに子どもの手が届いてしまい、熱湯をかぶってしまった」と説明した。
写真1 熱湯による熱傷(写真提供:市川氏)
受傷後すぐに受診しており、医療者に説明をする母親は熱傷痕に対する動揺から泣き崩れていた。受傷機転を繰り返し尋ねても答えにぶれはなく、医療者の問いかけにも終始、素直に応じる様子が見られた。
しかし、このケースのように高い位置にある加熱液体をかぶった場合、普通なら顔や肩にも熱傷を生じるはず。しかも、液体が飛び散るため熱傷面が一様にはならず、熱傷の深度が部位により異なるのが一般的だ。そう考えると、母親が話すエピソードと所見は、一致していないという見方もできる――。
事故か、児童虐待か。あなたは、このケースにどう対処するだろうか。
少しでも疑えば躊躇せず通告すべし
まず、診察時に児童虐待を疑った場合、医師がとるべき基本的スタンスについておさらいしておこう。
児童虐待は、「子どもの健康と安全が危機的状況にある状態」と定義される。身体的虐待のほか、ネグレクトや性的虐待も含まれる。虐待を受けた子どもは発育や発達に負の影響が起こり、低身長、やせ、知的障害などを伴いやすくなる。また、成長に伴い行動異常や対人関係障害など、発達障害を来たすケースも少なくない。
虐待を受けたと思われる子どもを診療した医師は、児童相談所または福祉事務所に通告する義務がある(児童虐待防止法第6条・児童福祉法第25条)。確証がなくても、虐待を疑った段階で通告するのが原則だ。このあたりは、日本小児科学会『子ども虐待診療手引き』に詳しい。
「医療者からの報告数はまだ少ない」と話す済生会前橋病院の溝口史剛氏。
2012年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談対応件数は6万6807件で、その数は調査が始まってから約20年間、年々増加している。だが「虐待が疑われる子どもを含む報告数と考えると、その数はまだまだ少ない」というのが、児童虐待に詳しい済生会前橋病院(群馬県前橋市)小児科の溝口史剛氏の見解だ。「特に医療者からの報告数が少ないと考えられる。医学的な視点から虐待であるかどうかを判断し、少しでも疑った時点で躊躇せず市町村や児童相談所へ通告すべき」と溝口氏は続ける。
診察時に児童虐待を疑うポイントは、北九州市立八幡病院病院長の市川光太郎氏によると、(1)家族が説明する受傷機転や病気の経過と、病状や病態が合わない、(2)体表の凹凸に関わらず、一様な程度の傷がある、(3)アイロンやタバコなど成傷器が推定できる、(4)大人を異様に怖がったり、保護者がそばにいる時といない時で動きや表情が変わる――など。
ちなみに、児童相談所等への通告においては、通告者の秘密は守られるほか、医師のように職務上の守秘義務がある場合でも、通告などの正当な情報提供は守秘義務違反には該当しないことが、厚生労働省の通知などにも明記されている。
児童虐待を疑ったら迷わず通告――。それが、医師の基本スタンスと言えよう。
通告は親子との関係をうまく築いてから
しかし現実には、冒頭のような症例に遭遇した場合に、児童相談所などへの通告を逡巡してしまう医師が少なくないのが現状だ。
井上小児科医院の井上登生氏は「親の意識を変えさせ虐待を防ぐ」と話す。
通告者が明かされない仕組みであるとはいえ、親からしてみれば通告者は容易に特定できてしまうことが想像されるし、結果的に虐待ではなかったり、虐待が一時的なものですぐに問題が解決されたりすれば、近隣地域でその親が医療機関の悪い噂をたてかねない。
また、親に説明をせずに児童相談所に通告してしまうことで、医師と親との信頼関係が損なわれてしまうのも大きなデメリットだ。例えば、程度の軽い虐待で、児童相談所の介入により親子関係は問題なく修復できたにも関わらず、その後の医療面でのフォローを行えないことは、虐待の再発予防の観点からも望ましくない。
では、虐待を疑った場合、通告までにどのような手順を踏むのが、医師・親子の双方にとってベストなのだろうか。
児童虐待の問題にプライマリケア医の立場で長年携わっている井上小児科医院(大分県中津市)院長の井上登生氏は、医師・患者関係をしっかりと構築した上で、「親に『今の親子関係をそのままにしておくと大事になる可能性がある』ことを理解してもらうことが大切」と説明する。
例えば、傷の処置を目的に親子が来院したケースであれば、まず親に傷ができた経緯や子どもの状態の説明を詳しく聞く。このとき「外傷に至るまでのプロセスや子どもの病態をスムーズに説明できない親子は注意して診た方がいい」と井上氏。要チェックの親子は、外傷の処置などを理由にこまめに受診をしてもらうようにして、虐待の程度が悪化していないかどうかを確認する。
一方、初診時であっても、表1に当てはまるような虐待が疑われる症例では、次回の診察までの間に、乳児家庭全戸訪問事業の状況や乳児健診や予防接種の状況を、市町村に確認する。「予防接種が適正な手順で、適切な時期に接種ができているか、ブランクがないかなど細かくチェックする」(井上氏)。あわせて、患児が通っている保育園や幼稚園にも、日常の送り迎えの状況や発達で気になっている点がないか、親の態度に違和感を感じていないかなどを確認しておく。
表1 注意すべき子どもの症状や行動上の問題(井上氏による)
これら情報を手元に持った上で、親子が次に受診した際に、乳児健診や予防接種の状況などを親に確認する。そうすることで、親の子育てに対する意識を確認できるわけだ。
このような手順を踏み、関係を構築しながら診察を続けるが、それでも再診時に外傷が増えているのを発見したら……。その時は、説明を始める前に、「いつも診ているから虐待ではないことは分かっている」といった前置きを挟むのが井上流だ。
その上で、「今の日本には『児童の権利条約』があり、第三者が見て子どもの虐待と言われかねないと判断したら、医師は報告しなくてはいけない立場にある」と伝える。そして、「大事になってから、市役所や保健師から色々と言われるのは嫌でしょう? そうなる前に、あえて主治医の私から報告させてもらいます」と話すという。突き放すのではなく、親に寄り添いながら、市町村や児童相談所へ通告をする旨を伝えるという方法だ。
虐待をする親のタイプは、5つに大別できる(表2)。
表2 虐待が疑われる親子関係の特徴(井上氏による)
中には、親の神経症など、医学的治療で解決できることもあるし、子育てに関する知識や支援体制の不足であれば、保健師や児童相談所の協力を得ることで解決できるケースも多い。「医師は、いつでも相談できる相手として、子どものために、親の側にギリギリまで寄り添い、味方でいなければならない」(井上氏)。
地域ぐるみでの対応と長期のフォローが不可欠
「虐待を見つけるのではなく育児支援の手助けをするのが本来の医師の役目」と話す北九州市立八幡病院の市川光太郎氏。
「医療者は『通告しなければならない』と聞くと、虐待か否かを判断しなければならないと身構えがちだが、そうではなく『育児支援をするきっかけ作りをする』と考えればいい」とアドバイスするのは、市川氏だ。
「親には、『予防接種や集団生活での不安なことをすぐに相談できるように、担当者を紹介する』と説明してから、市町村や児童相談所に連絡するようにしている」と市川氏は話す。冒頭の症例でも、治療を続け、熱傷の治癒のめどが立った時点で児童相談所へ連絡をし、深刻な虐待事例に発展する前に、地域でうまく介入ができたという。
一方、開業医では手に負えそうもない事例に遭遇した場合には、「医師ならではの方便ではあるが、病態から考えられる鑑別疾患(表3)を挙げ、『精査が必要だ』とできるだけ早く地域の機関病院に紹介した方がいい」と溝口氏。「複数の医療機関が関わることで、地域ぐるみでの支援がしやすくなる」(同氏)からだ。
表3 保護者に精査の依頼を説明するための文言
(『一般医療機関における子ども虐待初期対応ガイド』より)
最近は、基幹病院を中心に、院内虐待対応チーム(CPT)を設置する例も増えているので、そうした病院に紹介することができればベストだろう。また、各都道府県に児童虐待に対応する拠点病院を1つ設置し、児童虐待専門コーディネーターを置いて、地域の「児童虐待防止医療ネットワーク」を構築する動きもある。昨年9月に検討会が設置されており、各地域の医療機関における同事業の推進を目的に、報告書がまとめられる予定だ。
とはいえ実際は、医療者が遭遇する児童虐待は、一筋縄で解決できる事例ばかりではない。とにかく最悪の事態を防ぐためにも、疑い事例への迅速で適切な対応と、継続的なフォローを欠かすことはできない。
「医療者は、親の『もう大丈夫』という言葉を鵜呑みにすべきではない。『成長につれて現れる症状もあるから』などと説明し、子どもと医療機関の関わりを途切れないようにする工夫をしなければならない」と市川氏は話している。
日経メディカルより抜粋