前回に引き続き変形性膝関節症について紹介します。
前回は変形性膝関節症の1次性についてご紹介しましたが、今回は2次性変形性膝関節症についてご紹介します。
2次性とは何らかの特定の要因をもった変形性膝関節症のことを言います。
私の臨床現場では数十年前に前十靱帯損傷を受傷して放置した方が今になって膝の疼痛を訴えてきます。
前十字靱帯損傷をそのまま放置すると変形性膝関節症に移行するリスクが非常に高くなると報告されています。これも2次性変形性膝関節症です!!
なぜ前十字靱帯損傷から変形性膝関節症になってしまうのか??
本日はこの課題について解説していきます。
下の写真は約40年前に前十字靱帯損傷を受傷され今日まで放置された方のX線写真です。
こちらの方は42年前に前十字靱帯損傷を受傷され今日まで放置された方のX線写真です。左右を比較すると変形の具合は一目瞭然ですね!!
なぜ前十字損傷を放置するとこのような変形が生まれてくるのでしょうか?
解剖学を交えて分かりやすく解説していきたいともいます。
前十字靱帯損傷により膝関節は前方への不安定性が増します。これによって階段(特に降り)やランニング動作によって膝関節のロック機能が効かず前方にずれてしまいます。これが膝折れ現象(giving way)というものです。前方への不安定性によって関節内では異常な脛骨(スネの骨)の前方変位が頻回に起こっています。更に膝関節伸展付近(伸展とは膝関節が伸びる方向のことです)でこのこの前方変位が生じることにより、関節内では内側半月板後角(内側半月板の後ろの部分のこと)に大腿骨顆部が乗り上げて内側半月板と骨とがひっかかる形(これをFinochietto徴候という)となり2次的な半月板損傷となります。
なぜ内側かというと人間は身体の内側に体重がかかるような構造になっているからです。それを補うように半月板は外側半月板に比べ内側半月板の方が大きな構造になっています。(下の図を参考にしてください)
この図は半月板を上から見た図です。外側半月板(左)はローマ字の“O”型なのが分かると思います。内側半月板(右)は“C”型なのが分かると思います。外側半月板はO型、内側半月板はC型の形状と言われています。
ちょっと話がずれましたね。。。
話を戻します。
そもそも半月板の役割はいくつかありますが関節の適合性を良くするという大きな役割があります。
分かりやすく言いますと膝関節の関節面は歪な形をしており骨自体の適合性はそれほど良好ではありません。(下の図)
しかし、例えば関節の間に粘土を入れると骨と骨との適合性は良くなりますよね!!そうです!半月板はこのように粘土のような役割を果たしているわけです。
このように関節の適合性を高めている半月板が損傷されれば当然ながら関節の適合性は不良になります。人間はこの環境下においての生体反応として骨を増殖させて関節の適合性を良くして安定性を高くしようとします。さらに、関節を固くして(拘縮)なおも関節の安定性を高くしようとします。これによって変形性膝関節症が完成するわけです。
骨の増殖というのは骨棘(こつきょく)というものが形成されてくることです。
赤で囲ったところが骨棘です。漢字で分かるように簡単に言うと骨のトゲです。
これまで説明してきたものが外傷および靱帯不安定性による2次性の変形性膝関節症です。
2次性変形性関節症(secondary osteoarthrosis)には他にも以下の要因が挙げられます。
① 先天奇形
② 感染(化膿性、結核性、その他)
③ 非特異性炎症(関節リウマチ、偽痛風など)
④ 代謝性疾患(痛風、アルカプトン尿症)
⑤ 関節血症(血友病)
⑥ 外傷(脛骨高原骨折などの関節面骨折、半月板損傷、持続的な小外傷)
⑦ 後天性関節面適合不全(Perthesペルテス病、大腿骨頭すべり症、特発性骨壊死症)
⑧ 関節外の変形などによるアライメント不良(骨折の変形治癒など)
⑨ 関節の不安定性(靱帯損傷、関節弛緩性、繰り返しの亜脱臼)
⑩ 関節遊離体
⑪ 医原性(長期間の関節固定、変形に対する暴力的矯正)
2次性関節症にはこれらの要因が挙げられます。
次回は変形性膝関節症のリハビリテーションについて解説いたします。
ちなみに今後は前十字靱帯に対しても解説をいたします。
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