たしか、私のファーストNYフライトだったか 2度目のフライトだったかの思い出です。

当時はまだB-747でコクピットに
航空機関士も乗務していました。
パーサーがEddyという私の面接官であり、教官だったこともあり
とても緊張していたのですが、無事にフライトを終えて
みんなで和気藹々とフライト後のビールに繰り出しました。

時差と仕事明けということもあり 会がお開きになるとクルー達は部屋に戻って行きました。

が、極度の興奮状態にあった私は疲れていたにもかかわらず
NY観光がしたくてたまらなかったのです。 The おのぼり!


私たちはマジソンスクエアガーデンの目の前のホテルに常宿していたのでエンパイアステートビルがもうすぐそこでした。




立ち去るクルー達と別方向に歩き出した私に 先の
航空機関士のコクピットクルーが声を掛けて来てくれました。

「今からどこ行くの?え?エンパイア?? もう終了時間じゃないの?」
「や、入場は7時半までで8時半にクローズするみたいだから…。」

「この時間から一人は危ないよ 一緒に行ってあげる」

何でもいいから私はとにかくホテルの部屋に戻りたくなくて 一緒について来てもらいました。


結局 彼が案内をぜーーーーんぶやってくれたのですが

平日で夕方のもう閉館時間前だから黒人のお姉さんが1人長い通路の終点に立っていたのを覚えています。
「今日は貸し切りに近いですよ 8時半までですからね」


耳がツンとするような速さのエレベーターであっという間に着いた展望台は…

もう覚えていないんです。 
あの後何度も上ったのに思い出せない。
何をどう見たのか全く思い出せない。
(なんでだろう?いろんな展望台に行き過ぎたか??)


あの日は夏空で 1等星、2等星くらいまでなら見られる良く晴れた夕方でした。

ただ 2人で夕暮れのエンパイアの展望台から空を見上げた時に
さすがNY ヘリコプターやプライベートジェット、旅客機がバンバン飛んでいました。



彼は「あのチカチカしているのは星じゃない、赤と白のランプが交互にフラッシュしているから航空機だ。」

とか

「あっちの方角が海、ハドソン川のあちら側が・・・」

とか

「見て、あそこのツインタワー。 今日は快晴だけど雲が低いと顔を出しているのはあのツインタワーの上部とここ、エンパイアのこの辺りから上の部分だけで 何にもなくなるんだ。 幻想的だよ。




ふーん。 私はフライト後の興奮とビールと疲れで朦朧とそれを聞いていました。

今、こうして書いていて なんでここでロマンスが生まれなかったのかかなり悔やまれるのですが!(笑)



案内してくれた彼は
後に通称ジャンボ B-747が引退し、機種がエアバスに入れ替わったため航空機関士から コパイ(副操縦士)として訓練を重ねるべくヨーロッパ国内のフライトに従事し、国際線専門の私とはフライトが重ならず会えなくなったのでした。



それから10年後、私はカナダで車を運転中にカーラジオの臨時ニュースで貿易センタービルが大変なことになっていると知りました。

何がなんだか情報が錯綜していて 目的地の習い事の先生のお宅に着くや否や「先生!TV TV テレビ見せてーー!!」と飛び込みました。

あの日からTVに追悼番組が流されるたび 雲からにょっきり顔を出している双子ちゃんを思い描かずにはいられない私です。