G線上のヴァンサンカン
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電車で通える範囲のFラン大生活も折り返し地点を少し過ぎた頃。

それはやって来ました。

就活です。

もちろん、私も例に漏れず就活生になるわけです。
学生のモチベーションは低く、周囲に就活を始める友人はゼロ。
学校で開かれてる就活講座の出席率はすこぶる悪く、席はいつもスカスカです。私も家が遠いだのなんだかんだグダグダと理由をつけて参加しませんでした。
なんとかなるだろう、そう思っていたからです。


春休み、ヨッコラショと重い腰を上げて新聞社に履歴書を出してみました。
なぜだか書類選考は通過したようで、筆記試験の知らせが届きました。 
当日は雪がちらついていた気がします。会場には数十名の学生。
同じ色のスーツを着て、みんな黒い髪。
なんだか高校に戻ったみたいだーなんて考えつつキョロキョロしていたら、隣の席は同じ中学だった女の子。
すぐに気付いて話しかけてくれて、近況報告会。
彼女は頭が良かったので、国立大に進学してました。
そうこうするうちに担当者が入ってきて、今日の説明開始。まずは自己紹介をするようです。


まー、国立大有名私大のオンパレード。
勉強をしっかりして勝ち取った勲章です。

この立派な人たちと同じステージにいることが猛烈に恥ずかしくて、私はカタツムリの目玉のように萎縮するしかありませんでした。
小さな声で自己紹介を終え、早々と着席。
戦意喪失。
社長がお話を始めました。
メモを取っている学生がたくさんいました。私はメモを取るフリをしていました。
社長の話より唇の乾燥が気になって仕方ありませんでした。アレルギーで唇のコンディションは絶不調なのに、会場の暖房が追い打ちをかけていました。何か質問したらパックリ裂けてしまいそうなほど乾燥していました。
社長のトークショーがロングランだったため、試験時間がなくなってしまいました。
結局、筆記試験は一問のみ。
試験の真っ最中、靴の中がザラザラし始めました。
石にしては多い、だいたいパンプスに石が入るルートを通っていない、密かに慌てふためく私。
結局、全く集中出来ずに終了しました。
トイレに直行し、靴を逆さまにすると乾燥剤がザラザラと出てきました。
ほとんど履かない靴だったので、きちんと保管していたこととサイズが大きめだったことが裏目に出たようです。
帰り道、社長と出身大学が同じだという男子が話しかけてきました。自分の通う大学がいかに素晴らしいかということと、就活に対するアドバイスを一方的に語って去って行きました。嫌な奴だなと思いました。

皮の剥けた唇にリップクリームをグリグリ塗り込みながら、初めての就活に敗北の気配を悟った、21の春のことです。