マイケルムーアがキれたらしい | 肉団子閑居為不善

マイケルムーアがキれたらしい

先日お伝えしたマイケルムーアの新作映画の無料配信について、ちょっとした騒ぎがあったと「P2Pとかその辺のお話」のエントリーが報じている。

彼らは当初、The Pirate bayトラッカーを利用して配信を行った。しかし、当然のことながら世界中にユーザーがいるトラッカーのネットワークに乗せれば北米だけでなく世界中に映画が流出するのは時間の問題というか、一瞬にして世界中に流れはじめてしまった。

それを止めようと、マイケルムーアの代理人はなぜかTorrentのホストサイトではなくDNSプロバイダーに削除要請をしたというのだ。どうも二つとも合衆国の外にある業者であるという事を知らなかったらしく、しかもホストからの配信は止めないで北米以外への配信だけをDNS業者の対応でブロックできると思ったらしいのだが、そもそもなんら法的裏づけがない申し立てであって、当然のことながら彼らはその企てに失敗した。

どうやらマイケルムーア自身は無料で合法的ネット配信だと吹いているのに、北米以外への配信は許しがたいと考えているようで、記事によると「彼らは、侵害的な.torrentが米国、カナダ国外でホストされているという事実が問題であり、いくつかの理由から、彼らのクライアントはこの状況を受け入れがたいと考えている、この『問題』は多額の費用を用いてでも改善されるべきものである、と主張している」とのことだ。

その後、自前のトラッカーを利用することで北米のみに配信できるようになり問題は解決したらしい。それでもいまだにホストへの削除要請は忘れられているようで、皮肉なことにファイルは今日も世界中に配信されているようだ。要するにネット配信の仕組みがまったくわかっていないというだけのことで、最初から自作映画をパブリックドメインにしようという気持ちはなかったようだ。共和党の政治宣伝チラシ代わりというわけで、まったく残念な話だ。

ひるがえって見ればネット配信への根強い不信や不安というものが権利者の間にあって、それが日本のネット配信事業への強い反発という形でさまざまな障壁となっている。こういう事件がアメリカですら起きるのだから、日本にある無知の壁はもっとずっと厚いのだろう。啓蒙は重要だ。

(以下10月20日追記)

というようなことを書いたのだが、その後マイケルムーア自身がこの件について発言していることがわかった。「P2Pとかその辺の話」のエントリー「マイケルムーア、最新作の海賊行為問題の真意を語る:『今は21世紀だ』」において、教務深い話が書かれている。

その中に紹介されているマイケルムーアの発言を引用しよう。「「私は米国とカナダでの権利を持っているだけ。だから、私にはどうしようもできない。でも今は21世紀だ。『地理的権利(geographical rights)』?なんだそれ?」と彼は続ける。「何百回でも言うさ。本を買って、それを読んで、そのあと誰かにその本をあげたって、法律を破ることにはならない。なぜ、それがすべてのメディアにとって真実ではないのか?」」(ネタ元記事はこちら

どうやらマイケルムーアは海外での自作の販売や公開の権利をコンテンツ企業に売っぱらってしまっているらしく、海外に自作映画を撒くのは契約上いろいろ制約があるらしい。

今回Pirate bayで自作映画を世界同時配信した件は、彼にとってはかなり確信犯的な「エラー」だったようだ。