仏像に12億7000万円、海外流出は本当に防がれたのか? | 肉団子閑居為不善

仏像に12億7000万円、海外流出は本当に防がれたのか?

Yahoo!ニュースによると運慶作とみられる鎌倉時代の仏像彫刻が12億円余で三越が落札した(時事通信の元記事)。まるで三越が買ったから海外流出が防がれたという報道だが、あるニュース番組のインタビューによると、落札したのは企業の三越ではなく、あくまでも顧客の注文により落札したということなので、本当に落札したのは三越の客ということになる。だから落札者は日本人とかぎらず中国人や韓国人かもしれない。落札した人は、高額なコレクションとともにそのうち海外に引っ越すかもしれない。

この仏像は国立博物館にしばらく貸し出されていたので、実際に見た人も多いだろう。他の報道によれば、もともとは群馬県栃木県の寺にあったもので、明治期の排仏毀釈運動の影響で仏教寺院から神社に変わった頃に、他の寺宝とともに流出したらしい。どういう経緯で今の持ち主の手に渡ったのか不透明で、普通のサラリーマンの買える値段で買ったと言っているそうだが、最悪の場合、来歴不明の歴史的遺物の常として、犯罪組織がからんでいる可能性もある。

この仏像はいずれアメリカから顧客の指定する場所へ配達されるもようだが、こういう貴重な歴史的遺物が個人の所有物とされて適切なのだろうか。過去にも、バブル期に日本人が落札した名画のいくつかが行方不明になっているという報道があった。まさか捨てたりはしないだろうが、どこかの倉庫で埃を被っているとしたら、もったいない話だ。美術館や博物館ならそれなりに良い環境で保存されるだろうが、湿度や気温の高い日本で一般家屋の納戸とかに放り込まれでもしたら、観賞に耐えないレベルまで劣化破損してしまう可能性だってある。

メトロポリタンやルーブルに入れるのならば、得体のしれない三越の「客」に落札されるよりも、この仏教彫刻の逸品にとっては幸せだったかもしれない。問題は海外流出ではなく、誰が、落札したかだ。大日如来像の行方について、どこかのメディアが続報することを願う。