久しぶりに刑務所時代の仲間と会った

仕事で上京した時に

本当に偶然にだ

お互い髪が伸びていたので

最初は気づかなかったが

彼から声をかけてくれた

三年半ぶりの再会で

互いにすっかり垢抜けていて

ビジネスマンらしくなっていた

仕事を済ませその夜改めて合流した

呑みながら彼が

「刑務所のハラスメントも問題だよな」

と語り出した

私たちの服役した医療刑務所は

精神異常の受刑者を収容する病院で

その世話をする為に一部の健常な受刑者が

送り込まれ服役するところだった

「刑務官のKがやっていたのは、完全にアウトだよな」

彼がいう「K刑務官」は

口が悪く、怒鳴り散らす、差別する

とにかく最悪な刑務官だった

いや、人間としても最低最悪だった

服役していた頃は、ほぼみんな

「出たら訴えてやる!」と意気込んだ

それが出所すると皆、自然に忘れる

忘れるというか刑務所の話題は

口にすることはないのだ

こうやって当時の仲間内でいる時のみ

話題にする程度だ

しかし、この時の彼は

「俺はどうしても我慢できないから、Kを告発したいと思っている、俺は文才が無いから手伝ってほしい」

真剣だった、既に当時収容されていた人間の署名も集め始めていた

私自身も、このKという刑務官には

人間の尊厳を根底から否定された

そんな苦い経験もある

このKには更生の妨げにもなりかねない

完全な「ハラスメント」が存在した

しかし、やるからには

慎重かつ大胆さが必要だ

単なる恨みや復讐心では意味がない

私もそろそろこの件に本格的に参戦しようと思う。