シャフトカップリング(shaft coupling)は、モーターや減速機、ポンプ、リードスクリューなどの回転軸(シャフト)同士をつなぐ機械要素です。
動力(トルク)を一方の軸からもう一方の軸へ確実に伝達しながら、わずかなズレや振動を吸収する役割を持っています。
機械装置の中では目立たない部品ですが、動力伝達の信頼性・精度・寿命を大きく左右する非常に重要な要素です。
この記事では、シャフトカップリングの基本構造・役割・用途についてわかりやすく解説します。
1.シャフトカップリングの基本的な役割
シャフトカップリングの主な役割は以下の3つです。
1-1.トルク(回転力)の伝達
カップリングは、モーターなどの駆動側の回転力を従動側へ伝える機能を担います。
例えば、モーターの回転をボールねじやポンプの軸に伝えることで、機械全体を動作させます。
1-2.ミスアライメント(芯ズレ)の吸収
実際の装置では、2本の軸を完全に同心に合わせることは難しく、
わずかに**位置ズレ(偏心、角度ズレ、軸方向ズレ)**が生じます。
このズレをそのまま直結すると、
ベアリングへの負荷増加
振動や騒音の発生
モーターや軸の早期損傷
などの問題を引き起こします。
カップリングは、適度な柔軟性を持たせることでこうしたズレを吸収し、機械の寿命を延ばします。

1-3.衝撃・振動の緩和
モーターの起動や停止時には、瞬間的に大きなトルク変動が発生します。
カップリングはその衝撃を緩和・吸収して、装置の安定動作を助けます。
特にエラストマー(ゴム状素材)を使ったカップリングは、振動吸収性と静音性に優れています。
2.シャフトカップリングの主な構造と種類
カップリングには、使用目的や構造に応じてさまざまなタイプがあります。
代表的なものをいくつか紹介します。
2-1.リジッドカップリング(剛性タイプ)
駆動軸と従動軸を剛体で一体化するタイプ。
トルク伝達効率が高く、高精度位置決めに適しています。
ただし、ミスアライメントを吸収できないため、芯出し精度が高い組立が必要です。
用途例:精密機械、CNC装置、ロボットの高精度軸
2-2.フレキシブルカップリング(柔軟タイプ)
金属板やゴム材を用いて軸ズレや衝撃を吸収できる構造。
わずかな偏心・角度ズレを許容し、騒音や振動を低減します。
トルク伝達と柔軟性を両立しており、汎用性が高いタイプです。
主な構造例:
スプリングカップリング(ヘリカルタイプ):金属板をスパイラル状に加工して柔軟性を確保。
ジョーカップリング(エラストマータイプ):中央にゴム製ブロックを配置し、衝撃を吸収。
ディスクカップリング:薄い金属ディスクで高精度と柔軟性を両立。
用途例:サーボモーター、ステッピングモーター、搬送装置、工作機械

2-3.オールドハムカップリング
3枚構造(左右のハブ+中央のスライドプレート)で構成されるカップリング。
軸方向や平行方向のズレ吸収に強く、取り付けや交換も容易。
トルク伝達能力はやや低めだが、位置精度と静音性が高い。
用途例:軽負荷の位置決め装置、プリンター、測定機器
2-4.ベローズカップリング
ステンレス製の薄肉ベローズ(蛇腹)を用いたタイプ。
高剛性と高精度伝達を両立し、角度ズレ吸収性能にも優れています。
反応速度が速く、サーボモーターの制御軸などに最適。
用途例:高精度測定装置、半導体製造装置、ロボット関節部
3.シャフトカップリングの主な用途
シャフトカップリングは、回転動作を伴うあらゆる装置に利用されています。
具体的な用途を分野別に見てみましょう。
3-1.産業機械分野
モーターと減速機の接続
コンベヤ・搬送装置の駆動部
工作機械のスピンドルや送り軸
→ 高トルク伝達と長寿命が求められる環境で使用されます。
3-2.自動化・ロボット分野
サーボモーターやステッピングモーターの軸結合
ロボットアームの関節軸
→ ミスアライメント吸収と高精度位置決めの両立が重要です。
3-3.ポンプ・コンプレッサ分野
モーター軸とポンプ軸の接続
圧縮機やファンの駆動系
→ 衝撃緩和や軸ズレ補正を目的に、エラストマータイプがよく使われます。
3-4.医療・分析・精密機器分野
微細な回転制御を必要とする装置(遠心分離機、分析装置など)
→ 低振動・高精度でメンテナンス性に優れた小型カップリングが選ばれます。
4.カップリング選定時の注意点
カップリング選定では、以下の条件をしっかり確認することが大切です。
伝達トルク:最大トルクと安全率を考慮して選定する。
回転数:許容回転数を超えないようにする。
ミスアライメント量:吸収できる偏心・角度ズレを確認。
取付スペース:装置内のスペースと軸径に適合するか。
使用環境:温度・湿度・薬品・振動などの影響を考慮。
これらの要素を考慮することで、トラブルの少ない安定した回転伝達が実現できます。
5.まとめ
シャフトカップリングは、モーターの力を他の軸へ伝える「動力の橋渡し役」であり、
トルク伝達
軸ズレの吸収
振動・衝撃の緩和
という3つの重要な役割を果たします。
用途に応じて、リジッドタイプやフレキシブルタイプなどを使い分けることで、装置の性能・信頼性・寿命を大幅に向上させることが可能です。
見えない部分で機械の動きを支えるシャフトカップリングは、まさに「縁の下の力持ち」といえる存在です。