屑の歯型
「あっ、あっ、痛いぃ。」
跳ねあがった脚を筋張った左手で捕まれた。
白い靴下がずれて、上履きが床に落ちた。
教室は塗り立てのニスの匂いが薄ら充満していて、
それに混じる男の香りが不協和音を誘っている。
果ててもう三度目。
まだ彼は僕を許してはくれなかった。
屑の歯型
「ユノくん、おはよう。」
「ユノ、昨日のさ…」
ユノ。ユノ。
斜め前の席に座る彼。
今日も彼の周りには沢山の人間が行き来している。
僕はみんなみたいに『おはよう』だなんて声はかけない。
ユノは人気者だし、僕のような爛れた人間と接触してしまうと
彼の信頼を僕が根こそぎ奪っていってしまいそうで怖い。
いや、単純にみんなの前で声をかけるのが怖いだけ。
どんな顔されるんだろうって、怖いだけ。
「おい、ホモが来たぞ。」
「あー、ホモくせぇ。気持ちわりィんだよ。」
今更もう慣れた。
何年もユノのことを想って、それを恋だと知って、
想いを告げた。それを彼が周りに言って、僕は完全に孤立した。
それだけのこと。
ユノは僕のことが嫌いなんだって思った。
嫌いだからみんなに僕から告白されたこと言いふらして、僕を苦しめて…
なのにどうして彼は僕とセックスするんだろう。
「お前がさぁ、悪口とか言われると俯いて唇噛んだりするだろ?」
「っあ、っあ、」
「それが、ッその顔がさ、俺は好きなわけ…ッ」
「ああッ…!」
抜き差しされる度に奥の方が苦しくて、このまま内蔵まで引きずり出されるんじゃないかってくらいに乱暴にされる。
目が真っ赤に腫れて、視界がグチャグチャに定まらなくなり始める。
ああ、好き。好き。どうしてもユノが好き。
「ほらっ、言えよ!いつもの…っ」
「あっ!あっ…ジェ、ジェジュンの いっぱい犯してっくださいぃ…ッ!」
誰もいない放課後の教室の真ん中。
かび臭いカーテンの陰。
恥かしいことを言わないとくれないキス。
震える唇に彼の熱い舌先が蛇のように侵入してくる時、
僕は明日の朝にまたクラスメイトから与えられる罵倒も耐えられるだけの悦びを得る。
夕焼けはもうとっくに失せた。
目が覚めたらまたいつもの日常。
gravity .7
翌日、キムジェジュンは昨日と同じスーツを着て出社してきた。
目の下にうっすら隈をつくって、時折眠たげに瞼を伏せる。
ユノがそのことを気にしていることに、チャンミンは苛立っているようで
そんな時のチャンミンは仕事がより一層細かくなる。
何も知らないキムジェジュンはうっとりとした手つきでペンを走らせたり、唇を噛んだり、舐めたりした。
チャンミンの目を気にしつつもどうしても目がいってしまう。
檻の中の豹のようにその仕草は繊細でしなやかだ。
見とれるとはこういうことか。
これではまるで自分がキムジェジュンに好意を寄せているような……
「部長、可愛い部下の声が聞こえないんすか~?」
ウェーブのかかった髪の毛が目の前で揺れる。
ユチョンだ。
「何キムジェジュンばっか見てるんすか。」
ユチョンがニヤつきながら小声で言った。
そんなことはない、とは言ったが、全くその通りでユノは思わず耳を赤くした。
「もしかして、例の噂、部長も聞きました?」
「例の?また新しい噂でもあるのか。」
「今夜良かったら飲みに行きましょうよ。俺、例のブツ手に入れたんですよね。」
例の噂、例のブツ、などと、聞き覚えのないがどうしようもなく妄想を駆り立てる言葉を置いて、
ユチョンはデスクに戻ってしまった。
堅くなるチャンミンの表情。
変わらず果敢無げに俯くキムジェジュン。
ユノは取り残されたようにその頭に植わる脳をせわしく働かせて夜聞かされるであろう新しい噂をこぼすユチョンの口元ばかりを想像していた。
gravity .6
「それで?婚約者のことも忘れて僕のところに来たと。」
チャンミンの呆れた視線が右のこめかみに刺さる。
渡されたコーヒーはとうに冷めていた。
深夜12時。チャンミン宅。一応彼女に断りのメールは打ったが、納得がいかないのだろう。
先程から電話が鳴りっぱなしである。
ただそれに対応するだけの気力がないのだ。
ユノは見てしまった。ジェジュンの逢瀬の瞬間を。
「いや、違うんだ。その、男同士っていうことに対しての嫌悪感とかじゃなく、
ただびっくりしたんだ。まさか自分の部下が。あんなの噂だと思ってたのに。」
「今更何を驚くんですか。いかにもやってそうじゃないですか、あの男。」
ジェジュンはホテルのエントランスでパートナーであろう男と目を合わせた瞬間、笑顔になった。
本当に笑顔になったのだ。
それがとても綺麗だった。信じられないくらいに。
ユノにはもうどうしようもない。
「いいですか、部長。最近のあなたは少しおかしいです。」
チャンミンは続けた。
「あなたはたしかに抜けてるところはありますが、純粋で、熱心で、頼りがいのある人です。
ただ、あなたは気にしなくていいところを注視しすぎるところがある。
それが今回のキムジェジュンの件です。
いいですか、彼とあなたはあくまでビジネスライクな関係です。
彼の個人的な性指向にまであなたが気をめぐらす必要はないんです。
部長に昇進されて、少し気が張っているんじゃないですか?
そこまで部下を管理する必要はないんですよ。
それであなたのパフォーマンスが落ちるようでは…」
そこまで言ってチャンミンは黙った。
違う。ユノはそんな意味でジェジュンの素行を気にしているのではない。
チャンミンもわかっていた。
いつかの自分のように、ユノはジェジュンになんとも苦く甘い感情を抱いているということに。
「…とにかく。今日見たことは早く忘れてください。僕はあなたのことが…。」
心配なんです。惹かれていくあなたが、何か違う物体に変形していしまいそうで。
マリッジブルーゆのさん
トンが出ている番組をことごとく見れていない異端者瑠璃です。
youtubeとかに上がってるかな(;o;)どの番組が面白かったですか?
最近ずっとFFばっかり更新しているんですけどそれなりに楽しんでもらえてるのかな?
今回は色んなカプ要素を入れてみるつもりなので書いてて楽しいです(^o^)
特にジェジュンは乙女乙女しないように気を付けて書いてるつもりです。
堅い男達の恋愛模様を描きたくて。ガッチガチな感じな展開になってくると思います。
甘々もきらいじゃないんですけどね~基本シリアス寄りが好きなのでv
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
全然話違うんですけどこないだカラオケいったらトンバンシンギ名義でまま音映像入ってたんですよ~Catch me の!
韓国の音楽番組の映像だったんですけど思わず歌わずにじーっとみてしまいましたw
このころ二人ともどんぐりみたいな頭してましたよね…謎のどんぐりブーム…
gravity .5
ジェジュンは笑わない。
無理をしてそうしているようでもなく、本当に心に刺さるものがないのだと思う。
周りの人間とも溶け込もうという気がないようだった。
興味本位で近づけるような容易い空気を一切つくらない。
それがユノの庇護欲を駆り立てた。
もちろん例の噂の存在も大きかったが。
「ひとりが好きな人間なんて珍しくもないでしょう。気にし過ぎですよ。」
チャンミンはジェジュンの事となるとより一層素っ気なくなる。
「なんでチャンミンはそんなに毛嫌いするんだ。」
「…得体のしれないモノだからですよ。正直あの類の人間とは相容れない。
あるでしょう、そういうことって。人間なんですから。
とにかく部長は気にし過ぎです。彼の事。」
ぴしゃりとそう言われてしまった。
確かに何故自分がそこまでキムジェジュンを気にしているのかはよくわからない。
こういう仕事をしていれば不倫なんて日常茶飯事だし、
無口で無愛想な部下なんて他にも沢山いる。
ただ、ジェジュンの儚げな色にユノの核が手繰り寄せられているような、
そういった柔らかな拘束をユノは勝手に感じていた。
21時。婚約者との食事の約束の時間。
毎週水曜日のこの約束は、ユノのなかで徐々に身を固めるための儀式の繰り返しのように感じられるようになってしまっていた。
ネクタイを締め直し、髪の毛を整え、ホテルのロビーで待ち合わせをする。
どうやら彼女は遅れてくるらしい。
ため息をついてソファに深く腰掛けた。
こんな華やかな場でこんな小さな陰鬱を隠して幸せらしき何かを事務のようにこなす自分自身に対する虚しさといったらない。
『本当は結婚願望なんてない』
いつかその本音がどこかで零れ落ちてしまうのではないかという不安が日々増していく。
引くに引けないのはわかっている。それが大人であるということの代償であるということも。
そんなくだらない憂鬱に浸っているうちに21時半が過ぎた。
そろそろ考えることも疲れてきた。
そう思いながらエントランスをぼんやりと見つめていると、
見覚えのある人物の姿があった。
キムジェジュンである。

