雨上がりの高い空。湿った土と紫陽花の香り。

そんな中、チハルの湿った鼻は千秋の残り香を嗅ぎ分けては無我夢中で追いかけていた。

 

 

千秋───チハルの最愛の飼い主は、大事な”お姉様”を捜すと言って家を出てから数日が経っていて、 千秋の母に預けられたチハルは、いつもの宅配のお兄さんが来た隙を狙って外へと飛び出したのだ。

「こら!!」なんて声が後から追いかけてきたがそんなことは知ったことか。

いつもいる人がいない、当たり前だった温もりが離れてしまったというのにチハルは1日以上『待て』が出来たのだ。寧ろ褒めていただきたい。

 

いつもそばにいる千秋の笑顔も、優しく撫でてくれる手も、日が経つにつれてチハルには遠い記憶になりつつあった。

それでもチハルのよくできた嗅覚はいつでも千秋を思い出すことが出来る。

(絶対みつける!待ってて千秋ちゃんっ!!)

寂しさを振り払うように、千春は思い出の場所を巡った。

春の花が咲き乱れていた河川敷、共に笑い合った公園、ドッグトレーナーの声が響くドッグラン。

しかし、どこにも千秋の姿はかった。

(ここにもいない……千秋ちゃん…)

 

 

どれだけ走り続けたか分からない。車通りの多い危険な交差点を抜けて、いつしかまばらな街頭に心細くなって。

そして夜が明けてどこかの花壇のモンシロチョウやテントウムシを追いかけていたら何日経ったのかどこにいるのか完全に分からなくなった。

(いけないいけない、千秋ちゃん以外と遊んだら危ないって言われてたのに)

気を取り直してまた千秋の匂いを求めて走り出す。

(こっちな気がする!たぶん!!!)

チハルが最後にたどり着いたのは、千秋と何度か訪れたことのある別荘地だった。

(あのお姉さんのお家だ!!!)

ずっと求めていた千秋の匂いと、僅かに残る千秋の大好きな人の匂いが混じりあったそこは、チハルに居心地の良さを感じさせた。

さすがわたし!と自画自賛しながら少し古くなった木の戸を鼻で押し、中へ滑り込む。そこには千秋の匂いが濃く残っていた。

泥だらけのチハルは部屋が汚れるのも構わず全ての部屋を探し回る。

だが、千秋が中にいる気配はなかった。

(千秋ちゃん、いないの?)

そう思った瞬間、庭の奥……森の入り口から鈴の音が響いた。

続いて聞こえる鈴を転がしたような可愛らしい声のようなもの。

 

それはやがて完全な人の声となってチハルの耳に届いた。

───こちらへおいで…

 

「わんっ」

 

誘われるように、チハルは木々の間に足を踏み入れる。

その瞬間、まばゆい光が包んだ。

視界が白く染まり、ふわっと身体が浮く感覚。

次に目を開けたとき、千春は金色に輝く巨大なゲートの前に転がっていた。

 

 

「いたたた……」

出た声に自分で驚く。

それはいつもの吠え声ではなく、柔らかく人間らしい声だった。

見下ろせば、ふわふわの毛に覆われた四本の足はなく、むにむにとした長い手足。

自分の家族と同じ、人の手足がそこにあった。

「な、なにこれ!?」

チハルは慌てて立ち上がり、きょろきょろと辺りを見回した。

いつもよりも高い視界、長い手足。

ふらふらと立ち上がるといつもよりも遠くの景色が見えた。

 

 

そこは森だった。でも、チハルが知っている森とは違う。

木々の葉はきらめき、空気には甘い花の香りが漂う。

神秘的な魔法がそこにはあった。

 

 

「待ってたよ」

 

後ろから声。

見れば小鹿の耳が生えた可愛らしい少女が赤い外套をなびかせながら歩いてきた。隣には狼の耳を持った女性。そして、少し遅れて黒猫の耳を持つ女性が優雅な足取りで続く。

「ここはどこなの?君らは誰?」

チハルの声に、小鹿の少女が応える。鈴のような声。

森の入口でチハルを呼んだのはこの人だったのか、と理解した。

 

「ここは魔法の森だよ。わたしはあんず。この子は裕唯お姉さん。後ろの子は瑞美鈴さんだよ」

 

チハルは一気にまくし立てた。

「待ってたってどうして?私は友達を探しに来たの!千秋ちゃんって子!女の子、見た?」

 

それを聞くと「これを見て」、と言ってあんずは両手を広げて見せた。そこには紫陽花の花びらがあって、光を帯びて舞い上がる。

奇麗な光景にチハルは目を奪われた。

その光は霧となって空中にとある映像を浮かび上がらせる。

そこでは千秋が書庫のような場所で見覚えのある女性と向き合っていた。

 

「千秋ちゃん!……と千秋ちゃんの大好きなお姉さん……??」

 

やがて森は大きな地響きを立て始めた。

「!?」

「時間が無い。この森を守らなきゃ」

あんずは強いまなざしで空を仰いだ。

「記録者が混乱している……このままでは森は本来の目的を有耶無耶にされ、消滅するでしょう。」

瑞美鈴はかつて邂逅した祈織という存在に思いを馳せる。彼女に纏わりつく強い孤独の気配にはかなり昔から身に覚えがあった。

 

「ねえ、千秋ちゃんに会いたい?」

揺れる大地の中であんずは問う。

「う、うん!勿論!!」

「千秋ちゃんが大好きなお姉さんのことは?」

「大好き!だって、千秋ちゃんが大好きな人だから!」

それを聞くとあんずは嬉しそうに微笑んだ。そしてぽつり、と零す。

 

───「みんな一緒に、幸せにならないと駄目なんだよ」

 

それを聞くと瑞美鈴はあんずの肩を抱いて慈しむように頭を撫でた。

「そうね、私もそれを望んでいるわ。」

「な、なんかよく分かんないけど、千秋ちゃんもお姉さんも悲しそう……だ、だから……行かなきゃ!わたし、どうすればいいの!?」

 

「あそこに行こう」

「でも、どうやって?」

問いかける裕唯にあんずは微笑み、瑞美鈴に目線を送った。

「瑞美鈴さんの魔法なら、できないことなんてないよ。」

瑞美鈴は小さくため息をつき、杖を二度地面に打ちつけた。

そして弧を描くように振ると、靄が広がり、気がつけばチハルたちは霧の中で見た書庫に立っていた。

 

目の前では千秋が祈織に「帰りましょう」と告げる瞬間。

あんずが叫んだ。

 

「待って!まだその時じゃないよ!」

 

2人がこちらを振り向くと、チハルは千秋に駆け寄った。

いつものように千秋に飛びつくと、犬の身体の時とは違って千秋はチハルに押し倒される形になり、千秋は訳がわからないという顔で混乱している。

森の崩壊は、その時止まった。

「千秋ちゃん!千秋ちゃん千秋ちゃん!チハルだよ!」

「チハルが人間になってる……!?」

見れば愛犬の面影があるし、この天真爛漫で明るい性格は愛犬そのものだった。

千秋はチハルにぎゅうう……っと強く抱きつかれたまま、他のものたちを見回した。

 

そして祈織を守るように傍らに立ち、杖を構える瑞美鈴を見ると静かに言う。

「あなたがチハルを連れてきてくださったんですね。ありがとうございます」

「礼には及ばない。彼女の願いの力を利用しただけよ。」

警戒心剥き出しでそっけない態度が、祈織の家で決して相いれなかった黒猫に似ている気がした。

 

そんなやりとりを見て祈織も何かを感じたのか、先程までの混乱は落ち着いたように見える。

「まだ、って、どういうこと?」

 

聞かれたあんずはにこっと笑って答えた。

「だってまだ、皆笑顔になっていないもん。幸せって、笑顔ってことでしょ?」

 

「しあわせ?」

あんずの手を握っていた裕唯が、小さく呟く。

「うん、幸せ。私は、瑞美鈴さんにも裕唯お姉さんにも、チハルちゃんにも、皆に幸せになってほしいの」

そう話すあんずの身体が、キラキラと光を発しているように見えた。そのふわふわと柔らかい光の粒子は、記録室の空気を浄化してゆく。

そして、先程までの亀裂や綻びまでもが光に包まれ修復されていった。

 

先程まで不安そうにしていた裕唯は、あんずを眩しそうに見て、そして微笑んだ。

千秋と氷のように冷たく話していた瑞美鈴も、「仕方がないわね」とあんずの頭を撫で目を細める。

あんずを中心に全てが調和し、浄化していくのを見てやはり小鹿の娘は特別なのだ、と祈織は思う。

 

千秋が「お姉様」と呟くのと同時に、可愛らしい『ぐぅ~』という音が二重奏を奏でる。

はっと目を見合わせたあんずとチハルが笑った。

 

瑞美鈴が少し笑って息を吐き、杖で空に円を描くと風景がガラリと変わって6人全員が広場に立っていた。

木の椅子が並び、テーブルには食器が並んだ。器の中にはビーフシチューが湯気を立てていた。

 

「朝あんずと一緒に煮込んだシチューよ。お腹が空いては建設的な会話などできないでしょう」

 

あんずは嬉しそうに席につき、その横に裕唯も座る。千春も楽しそうにあんずの隣に座ったが、現実離れした光景に惚けて動こうとしない千秋と、何やら思案した様子の祈織を見て眉をさげた。

「千秋ちゃん、ご飯のときはお座りしなきゃあげないっていつも言ってるじゃない」

「え、ええ」

愛犬に促され、我に返って座ろうとするが下を向き動かない祈織に気づき手を引く。

「お姉様?」

びくっと肩を揺らす祈織を、瑞美鈴が反対の手を包み込む。

「お座りください、チハルの言う通りです。お食事のときは、座るのでしょう?」

祈織は俯いたまま2人にとられた両の手を見やり、静かに頷いた。

その様子を見た千秋が微笑むと再度隣の椅子をすすめる。

全員が座ったのを見届けると瑞美鈴はにこりと笑い、パンを配り、紅茶を淹れた。

あんずと暮らしている時の癖だ。美味しそうに食べるあんずを見たくてあれやこれやと世話を焼きたくなってしまう。

この調子でもうひと品作り始めそうな勢いで忙しなく動き始めた瑞美鈴に千秋は座るように促す。

 

「もう、せっかくなのです。皆で、食べましょう」

不満そうに振り返る瑞美鈴を「もう充分よ、ありがとう」と祈織が制し、頷くとしぶしぶ椅子に座る。

「さぁ皆さん、手を合わせてくださいませ。そう、チハルも上手だわ」

初めての手を嬉しそうに合わすチハルは、千秋に褒められ嬉しそうに笑った。

 

「いただきます」

 

裕唯はあんずの紅茶にミルクを注ぎ、千秋はお皿にそのまま顔を突っ込もうとしていたチハルにスプーンの使い方を教えた。

そんな皆の様子を見て、祈織は目を細めて嬉しそうに笑った。

祈織が笑うのをみた瑞美鈴の、記憶がパチンと弾ける。

 

「あ、るじ…?」

脳内に広がっていく二人の記憶。瑞美鈴は今までの厳しい顔を崩し、嬉しそうに祈織の手に抱き着いた。

「いきなりどうしたの、スミレ」

祈織もまた千秋の来訪と共に元の世界の記憶を取り戻していた。

大好きな、自分を撫でる大きな手。それが今、再び熱を帯びて目の前にあった。

猫の身体ではできなかった事。

それは、大好きな祈織を瑞美鈴が抱きしめてあげることだった。

いつも、自室を整え、神経を尖らせて物語を紡いでいた祈織。

孤独を嫌いながらも、自ら孤独になっていった祈織。

初めて会った時から放っておけなくて、離れがたくて。最後まで手元におかれた黒猫は、そんな主を抱きしめてあげたいと願っていた。

抱き着いてきた瑞美鈴を、祈織は優しく撫でた。

全てはあの頃と同じだった。ただ一人を除いて。

 

「……。」

そんな光景をあんずはどこか大人びた顔で見守っていた。

 

Written by Kiori.

The writing assistant is Sumire.

愛しい人の声が聞こえた気がした。

千秋は反射的に振り返る。

「千秋」

「お姉様……!!」

もう一度自分の名前が呼ばれた千秋はいても立ってもいられずその人に駆け寄り抱きついた。

しかしその人が示したのは拒絶だった。

 

 

「どうしてここにいるの……私の知らぬところで使命が歪んでいる……?森を破壊するのは……貴方なの……?」

「祈織お姉様……」

「その名を呼ばないで!」

 

祈織は千秋を振り払い、背を向けた。

しかし、千秋にはそんなことはどうでもよかった。目の前に祈織がいる、それだけで満たされる心地だった。

 

「私はお姉様の大切なものを破壊したりしませんわ。私がここに居るのはあなたを強く求め、そして導かれたからです。」

千秋は動揺する祈織を手近な椅子に座らせ、そう囁いた。

 

「しかし、破壊の相はあなたに強く出ている」

「お姉様が何を見たのかは分かりませんが、私はいつまでもお姉様の味方です」

「私は───」

 

その時千秋の視界はぐにゃり、と歪んで何も見えなくなった。

そしてはるか遠くから声が聞こえ、それは徐々に近づいたり遠のいたりした。

 

───小説家は常に孤独だ。誰かと共鳴する感覚が得られない故に。

───盲目的な信者は私の理解者ではない。その行動は最も私から遠い存在へと成り果てるだけ

───人に求められた物語を綴るだけの人間とは、他人の意識を拾い集め続けることに何の迷いも躊躇いも無いのか?

───私の物語を必要とする人など最初から居ない。だが、私も私自身を必要としなくなっている実感が恐ろしくもあり、それもまた運命だと識る

───他者に存在価値を付与してもらうだけの人生を歩むくらいなら、私は私の最期を定めた方が良い

 

(これはきっと、お姉様の本心だ)

千秋はぼうっとその声を聞いていた。

自分が立っているのかも倒れているのかも分からない平衡感覚の中で、ただ自分の姉の意識の片鱗に耳を澄ませていた。

 

───ならばもういっそ、人でないモノと幸せな世界を創ろう

 

その一言で千秋の視界は突然明るくなった。

黒猫の耳が生えた少女と、小鹿の耳の幼い少女が仲睦まじく森で暮らしている様子。そして暗転。

小鹿の少女が世界から堕とされ千秋のよく見知った街を探索、そしてOLの女性と仲良くなる様子。そしてまた暗転。

小鹿の少女が何やら思い悩んでいるのを見て、決心したように黒猫の少女が小鹿の少女に魔法をかける様子。また暗転───

 

目まぐるしく回る走馬灯のような光景に、千秋は軽い目眩を起こしながらも何も見逃すまいと意識を集中させた。

祈織の創った世界。きっとこの森の中は祈織の意識の中でのシェルターのような働きをしているのだろう。

あの黒猫の少女や小鹿の少女にも必ず意味があるはず───

 

───「猫は昔からネガティブなエネルギーを吸収し、浄化する……なんて言われているわよね。この子が私から離れないのは……何か意味があるのかしら。」

学園の中庭の片隅で膝に乗ったあの黒猫……スミレの顎を掻きながら、あの人はそんなことを言っていた。そして、

 

───「神社に鹿が居るのは神の使いだからよ。純粋、そして無垢なものの象徴であり、悪いものを浄化すると考えられていて……」

昔一緒に旅行で訪れた神社の境内で自由に暮らす鹿を見た時、あの人はそんなことを言っていた。

 

(ああ、そうか……)

その理解は千秋の中にすっと解けて、心に空虚な穴を作った。

 

(お姉様は孤独を癒す術を手に入れたに過ぎなかった。私という存在を度外視して。)

あの黒猫は祈織に最も近い存在であるが故、祈織の意識を反映させた存在。そしてあの小鹿は祈織の無意識下で育った無垢な良心そのものなのだろう。

その両者が守る森には強力な結界が張られていて、一切の穢れを許さなかった。それが祈織の安らぎとなっていた。

しかし、内部の穢れ───祈織の孤独感が大きくなると浄化作用は全く機能しなくなって森に歪みが生じた。

祈織の意識を反映させた黒猫には罪悪感が芽生え、無垢な良心そのものである小鹿は他者への愛情こそが世界を救うと考えた。

 

「私は……お姉様を1人にするべきではなかった!」

終わっていく走馬灯に向けて叫ぶ。

その叫びは千秋のエゴでしかなかった。それでもその言霊は大きな力となって世界に作用する。

昔、あの人は言っていた。この世界は壮大な愛の実験施設であると。

この世界でどんな不条理、理不尽があろうと愛で始まり、そして愛で最期を飾れるのか、という実験。

ならば、この感情が愛でなくてなんと言うのか。あなたに忘れられようと、憎まれようと、呆れられようと……貴方を諦めたくない。貴方が諦めてしまおうと、私は貴方自身の幸福を諦めない───

 

 

「お姉様……一緒に、帰りましょう」

 

森に亀裂が走る。破壊が今、始まろうとしていた。

だが、

 

「待って!!!まだその時ではないよ!!」

 

鈴を転がしたような可愛らしい声が響いた。

 

 

 

Written by Kiori.

 

この星は壮大な愛の実験施設である───

そんなことを云う学者がいた。

この場合、愛を何と訳すべきなのかは定かでは無いが、きっとそれは私……これを読むあなた自身でもある……と訳すのが正しいのだろう。

どんな命も、初めは愛という性質を持っていたはずである。

そこで多種多様なエネルギーをもつ存在、異なる概念、形、種族……そういったものが間接的に『自分は何者なのか』ということを引き出してくれる。その場合、愛で始まったはずの個人の性質は愛で終われるのか、ということだ。

 

果たして愛とは自然発生的な変化なのか、それとも強制的な革命なのか。

きっとそのどちらも兼ね備えているだろう。

人は孤独では生きられず、しかし傷つけ合わずにも生きられない。

 

─────あんずが連れてきた裕唯という女性。

█年前、出版社の総務部として入社。慢性的な人手不足、それでも彼女は糧にして笑顔で日々をこなしていた。

初めてあんずと出会ったのもこの頃だ。

しかしそれも数年も経てば中堅的な立ち位置故の苦悩、取引先との不和、上司や部下からの裏切りなど、上げればキリのないほどの悪条件が重なった。

年々職場という存在が大きくなり、彼女は仕事というものに対してに依存していた上での状況だった。

仕事は彼女を支配し、そして身動きが取れないようにしていた。

『もういっそ、生きるのを辞めてしまえば楽になれるだろう』

 

 

家に帰る気力すら湧かずに公園の木にもたれかかってそんなことを思う。

そんなところで現れたのがあんずだった。

『裕唯お姉さん……?』

2度目の再会。でも裕唯にはその記憶がなかった。

しかし夜桜が照らす少女に無性に惹かれた。裕唯の魂が、そして全細胞が彼女を渇望していることに気づいてしまう。

それは、愛を配る対象を無くして抜け殻になっていた裕唯がやっと見つけた生きる希望のように見えた。

 

生きる上で重なる試練、そして繋がりは個人を変容させていく。

それでも、裕唯は思い出すだろう。生命が本来持っていた輝きを───

 

 

 

─────────

【███日目、満月ノ頃】

 

強い意志のエネルギーが森を満たした。

ゲートは独りでに開き、誰かを歓迎した。

入ってきたのは小熊の娘だった。小熊の娘は森に入ってから走り続けていた。まるで長く探しているものがあるように。

向かってくる。こちらに。

彼女が近づくにつれて██の記憶が乱れていく。

██の忘れていた大切な███とは███だったのか?

█は 。

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蜊?ァ銀?ヲ窶ヲ縲らァ√?螟ァ蛻?↑螯ケ縲

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─────────

 

 

 

Written by Kiori.