「ブチかます。ブチかます。」
2008年6月20日。
サークルのお笑いライブ当日。
馬場から会場のある池袋へ向かう明治通り。
坂道を自転車で駆け上がりながら、その当時合言葉みたいになっていた「ブチかます」を何度も口にしていた。
自転車のカゴには十数枚のフリップ。
今まで自分が手にしたものの中で、一番価値のあるものだった。
今思うとちょっとした奇跡みたいなネタが出来あがっていた。
当時ライブ一ヶ月位前から仲間内でのネタ見せをしていたが、この時は初回で既にネタが完成しており、その時から無茶苦茶ウケていた。
自転車をこぎながら早くこいつらを見せびらかしたくてしょうがなかった。
本番。
当たり前のようにウケまくった。
無茶苦茶嬉しい反面、そりゃこんだけのもん出せばそうだろうよという思いもあった。
それからというもの、サークルの定期ライブ以外のライブ、例えば大会や他大学との対決ライブ、文化祭などで何度もこのネタをやった。
はじめの内は同じようにウケた。
でもある時から徐々にウケなくなり、最後にはもう途中で舞台袖に逃げようかと思った位スベリ倒した。
全員とは言わないまでも客は毎回違うはずなのに。
同じ発想。同じ絵。同じセリフなのに。
なんで。。。
自分の中で新鮮さが失われていたからだった。
もう自分の中でそのネタに対する熱い想いが枯れていたからだった。
密度スカスカの空気。
当然、客には何も響かなかった。
初めての時はきっと魔法がかかっていた。
自分の中の熱い想いが会場を満たし、密度が少し濃くなって、時間がゆっくり流れていた。
操っているのは自分だった。
自分の気持ちが魔法をかける。
あれからもうすぐ五年経つ。
自分がやろうとしていることにあの時と同じ位の気持ち持ててんのか。
その坂道を久し振りに登りながら自分に聞いていた。