糖尿病に対する血糖値のコントロールやメタボリック症候群・肥満に対する減量効果に対する糖質制限の効果は確かである。
もし2型糖尿病の人で血糖のコントロールを最優先し、使用する薬剤を最低限にしたい方や中止したい方は、1回の食事の摂取糖質量を20g以下にするのがよいだろう。
では、糖尿病でもメタボでも無い人はどうだろうか?
摂取する糖質量を0にするのが理想だという考え方もある。
確かに肝臓や腎臓の機能に問題の無い人は、赤血球や脳が必要とするブドウ糖である1日あたり140gほどのブドウ糖を糖新生によって体内で作ることができる。
さらに摂取するブドウ糖が低下した場合は、人間の脳は用いるエネルギー源の大部分を「ケトン体」に切り替えることができる。
だから理論的には糖質は食べなくてもよいということになる。
しかし、肝臓は非常に忙しい。
すべてのブドウ糖を「糖新生」で自己調達するのではなく、ある程度「外注」することができるならば、
その分他の仕事をこなすことが楽になるこということはないのであろうか?
ひょっとしたら、その人の生化学的個性やその時々の状況に応じて、食べるべき糖質の量が異なるのかもしれない。
アメリカの正常分子医学の医師リチャード・カニンは、40年ほど前に「OCダイエット(至適糖質食餌法)」というアイデアを紹介している。
これは、自分の生化学的特質を知り、それを支えるための適切な栄養素を見つけ出す方法で、彼の言葉によれば「自分自身を知る」ことを具体化するアプローチだ。
アトキンス医師のダイエット法「栄養学的ケトーシス」からヒントを得たリチャード・カニンは、摂取糖質量を0に近づけ一旦ケートシス状態に導いた後、今度は1日の摂取糖質量を徐々に200gを超えるまで増やす方法を考えた。(ケトーシスの判定には、ケト・スティックなどのケトン試験紙を用いる)
つまり、こうした一連の流れの際に生じる心身の変化を観察し、もっとも体調がよい時の糖質量を「至適糖質量」と設定するのである。
(1976年に報告された、73人の鬱や不安障害などの患者に対する研究の時には、ケトーシスが生じるか生じないかのギリギリの臨界点における糖質量を至適としていた。)
この報告では、ケトン状態で改善したと回答した人は28パーセントであり、臨界摂取量で改善したと回答した人は68パーセント、臨界点とケトーシス状態のいずれかで改善がある人は82パーセントとされている。
一方で、60パーセントの人が、疲労感、吐き気、頭痛、動機など、何らかの副反応症状を訴えたが、ほとんどがカリウムなどのミネラルを補って改善した。
鬱や不安障害の人にとっては、おそらくはケトーシスかケトーシスが生じるか生じないかギリギリの糖質摂取量が改善のチャンスを高めるであろう。(内服している薬を自己判断で中止してはいけない。減薬は主治医の管理の下、ゆっくりと行わなければならない)
リチャード・カニンは、その後「至適糖質量」の定義をケトーシスが生じる臨界点から、自覚的に最も体調がよいと感じる量へと変更した。
糖尿病やメタボや精神症状など特殊な状況が無い場合、自分の体調がよいと感じる糖質摂取量を続けることは当然のことだろう。
しかし多くの人々にとって、現代の生活様式は常に糖質過剰に陥る危険をはらんでいる。
時々は自分の状態をチェックして、その時々の至適糖質量を知ることが必要だろう。

