夕暮れ時。
とある寂れた町のコンクリートの堤防の上、猫が一匹座っている。
碧色の瞳は、水平線の向こうに沈んでいく太陽に染められた赤い海を見ている。
逆光の中、見える後姿はさながらシルエットのようだが、もとより体は黒い。
猫は何も言わない。鳴かない。ただ太陽が水平線へユラユラと溶けていくのを眺めている。
尻尾をブラブラと左右に振りながら。
海の向こうに何が待つのか。太陽はどこに向かうのか。
そんな壮大なことを考えているのか。
はたまた夕陽に見入っているのか。
まあ猫には猫の理由があるのだろう。
猫には猫の理由があるのだ。
