仕事を終えて帰宅して 私はすぐに私服に着替えてイヤホンを耳につける
メイクを軽く直して再び家を出た
イヤホンから流れる曲はランダムなのに切ない曲ばかり
駅までの歩き道 昨日の事を思い返しながら歩いた
昨日目が覚めて かなでからおはようのスタンプが送られてきているのを確認した
私はすぐに既読を付けず 仕事の準備をしながらもう一度頭の中を整理する
仕事が始まればそれどころでは無くなるし だからといってこのままにはできないから
日曜日に荷物を取りに行くと言ったものの かなでが納得せずに一方的に終わらせようとした私は 全く大人げなかったと思った
自分が逃げているだけじゃないか…
悪くならずに離れるのを待っているだけじゃないか…
そんなの今まで誠実に向き合って私を大切にしてきてくれたかなでに 私は不誠実過ぎる
だから夕方仕事が終わり 私からかなでに
｢やっぱり明日直接話しましょう｣と送った
土曜日でかなでは休みだったけど私は仕事だったので 私の仕事中にかなでがお店を予約してくれた
最寄り駅まで向かって合流し そのお店に2人で向かった
ひっそりとした場所の地下にあるお店は意外にも人気があって 半個室だが少しザワついていた
もっと静かだと思ったー…とかなではガッカリした顔をしていたけど ちゃんと区切られてるし予約してくれたからすぐ座れるし大丈夫だよと言ってメニューを一緒に見始めた
仕事後だからビールでしょ？と聞かれ 飲んでいいの？と言うともちろん！と答えてくれたのでビールも頼んだ
美味しそうな1品料理を楽しみながら本題に入る
かなで 少しだけど時間があって何か落ち着いて考えられた？
そう質問したのは私が一方的にかなでの言葉を聞かずに別れを切り出したからだった
言いたい事 思った事を全部言って欲しいから
かなではポツリポツリと話し出した
｢はなが言ってたように LINE読み返してみたら俺は冷静じゃなかったなと思った
その日仕事で報連相ができない人がいてちょっとゴタゴタして 俺が理不尽に怒られてね
それで疲れもあって言い過ぎちゃったなって…
はなが言ってた事もあの後落ち着いてもう一度LINE読みながら考えて はなにははなの考え方もあるし 最初から絶対土曜は会えるって話ではなかったのに…友達にも言われたけど俺が気にしすぎなんだなって｣
私はかなでが話している間 ずっと無言で聞いていた
それでどう思ったの？など聞くこともせず ずっとかなでのペースで話してくれるのを聞いていた
するとかなでは 私が疑問に感じたことや言った事に対してどう思ったのか 聞きたかった事を自分から言ってくれたのだった
聞いてるとやっぱりかなではすごいなと感動すら覚える
まるで私の心が見えているかのような…
そして結びにかなでは
｢ごめんなさい｣と頭を下げた
…本当にかなでは紳士で大人だ
私だって悪い所があるのに かなでは嫌だと感じたはずなのに 一切触れない
そんなかなでに私は すごいね…やっぱりちゃんと会って話してよかった…と言っていた
え？と言うかなでに 私がこれを聞こうとか思ってた事を全てかなでから自分の出した答えと一緒に聞けたし 私も冷静じゃなかったから嫌なこと言っちゃったはずなのにそれにも触れてないし… すごいよと笑ってしまった
するとかなでの表情は心做しか少し柔らかくなった
私ばっかその時の気持ち押し付けちゃったから かなでに言いたい事言ってもらいたかったの
そう言うと もう全部言ったよ？と穏やかな表情で答える
かなでが｢ペアリング…捨てちゃった？｣と私に聞く
私はリングをしていなかったから…
でも大切なネックレスに通して身につけていた
それを見せるとかなでは良かったと微笑んだ
それを見て私はネックレスからリングを取り出した
これ どこに着けたらいいかな？と少しふざけながら言うと かなでがココ！と私の右手の薬指を指す
リングを元の場所に戻してから 私も嫌な事たくさん言ってごめんなさい と伝えた
二人の間に笑顔が戻って その日 そのまま一緒に過ごした
いつもこうして話し合いができる…
言いたいことを引き出してくれるし 自分の反省点も自分で見つけて謝ってくれる…
だから突き放せない…
ううん 違う
離したくないんだ
分かった…
私は本当にかなでを手離したくないと思ってしまったんだ
気付いてはいけなかった…
どうしてこんなに手の届かない人に
自分を見せることができたり 甘える事ができたりしてしまったんだろう
たくさん話しても足りなくて 24時間以上一緒にいても離れ際寂しくなって すぐ会いたくなる
時間があっという間すぎて私達の中でよく出る言葉が｢時飛ばしした？笑｣となっている
1日が48時間になっても足りないねって笑いあって過ごしてるのは かなでが初めて
どうしてかな…先を見てはいけない人と この人となら…って思ってしまうなんて…
この日から私は 今まで以上の胸の締めつけを感じる事となった
でも…
本当に辛いのはかなでだから…
私は自分でそれを負っていくしかない
来世では違う結末を…と願って逝くしかない
[2024/04/28 (sun)]