たったひと月の甘い妄想だったとしても、私にとっては夢のような時間だったのだ。
誰にも言えなくても、分かってもらえなくてもいい。この気持ちを誰かが否定したとしても、まぁ、勘違いだったのだから、良いではないか。

見事なまでに、私の一方的な勘違いだった。
すべてはわたしが作り上げた素晴らしき妄想に過ぎなかった。

だけど、それでもひとときの夢を見た。
久しぶりに、フワフワとしたピンク色の雲の上にいるような、やさしくて幸せな気持ちになれた。
それは、間違いなく恋だった。ただし、完全なる片思いの。

ずっと昔、この人生のすべてを捧げてもいいと思えるほどの、燃え上がるような恋をした。

その再来かと思えるような、気持ちにもなれた。
だけとあの頃とはシチュエーションが違いすぎるし、どうにもできないことが重なりすぎていた。

仮にあの時の恋が完璧なものだったとしても、
その後悲しい別れが訪れる運命だったのだから、
私は結局、今を受け入れて生きていくしかないのだろう。

それほど好きではない男の本妻、可愛い男の子の母親、この家の長男の嫁。

無邪気に恋をする時代は、終わってしまった。
あの頃にはもう戻れない、戻ってはいけない。
この子の母親である以上、人の道に外れたことは してはいけない。


あぁ、心ぽっかり穴があいたようだ。
だけど最後に、彼の顔をしっかりと目に焼き付けた。
焼き付けたはずなのに、もう記憶から消えてしまいそう。消えないで、消えるなら、もう一度。

しかし彼にはもう二度と会えないのだろう。
だとしても、私はあなたの幸せを祈る。
あなたの笑顔で、優しさで、救われる人がたくさんいるように、あなたもまた、たくさんの人に愛され、生涯幸せな人生でありますように。


悲しいけど、これが私の人生。
彼と私の人生は、もう交わらない。