朝早く出かけ夜遅く帰宅する。休日はほとんど家にいない。
そんな弟とは、いざ生活を始めてみるとあまり顔を合わせることはなかった。
それでもやはり女2人だった今までとは何かが違う。
人間性が出来上がってしまっているいい大人同士が同居する大変さ。
これは想像以上だった。
家族だけれど、ずっとずっと離れていたから。
お互いのことは、知っているようで知らないという感じだった。
でも実際は「ただ寝に帰って来るだけ」の弟がそこまで色々感じていたとは思えなくて、
どちらかと言うと私が一方的に弟との共同生活にちょっぴり「苦さ」を感じていのだと思う。
それでもやっぱり姉弟。
時々は、食事したりお酒飲んだり、それぞれの近況報告や情報交換をしたりしていた。
同居からどのくらいの時間が過ぎた頃だっただろうか。
ある時弟が「会社を辞めて自分の店を出す」と言い出した。
「体育教師」になりたかったはずの彼だったが、学生時代のバイトで飲食業に出合い、
飲食業の魅力に憑りつかれ、次第に彼の夢は「体育教師」から「自分の店を持つこと」
へと変化していった。
ずっと「自分の店を出す」と言っていたから、母も私も驚きはあまりなかった。
ただ、厳しい道に自ら足を踏み入れようとする息子に思うところはあったのかもしれない。
子どもが「やりたい」と言うことは全力で応援してくれるのがうちの母だったけれど、
「体育教師になるって言っていたはずなのにね」と漏らすこともあった。
「海外へ行って色々勉強してきたら?英語もスペイン語ももっともっと勉強したいでしょう?」
などと言って息子の気をそらすことを試みた母だったが、結局は息子の強力な応援団に
ならざるを得なかったようだ。
「自分のお店を出す」ことが夢で、出すなら絶対「生まれ育った場所」だったらしい。
地元と呼べる範囲内でお店を構えることが決まったようだった。
2013秋。
多くの方々にお力添えをいただき、弟は自分のお店をオープンした。