うちの母は「子供がすべて」という人だった。
それだけに、私はもちろん、周囲の人たちはみんな母を心配してくれた。
心配の仕方は人それぞれ。
ただ母に直接言葉をかけることができない、という人たちがほとんどで、
みんな私に「ママをお願いね」と言ってきた。
母を心配してくれる気持ちは本当にありがたかった。
ありがたかったけれど、この「ママをお願いね」という言葉に私はだんだん追い込まれるように
なっていく。
毎夜母の泣き声に悩まされ、毎朝母の泣き声で目が覚める。
仕事中もスキを見ては母に連絡し、母の安否確認。
仕事が終われば寄り道などせず、一目散に自宅を目指す。
半分気が狂ってる母を四六時中気にかけた。
私なりに精一杯やっているつもりだった。
なのに…これ以上いったい私にどうしろっていうの???
行き場のない思いに、いつしか完全に追い込まれた。
「母から逃げ出したい…」。
一度だけ大親友に漏らしたことがある。
そんなこと、できるワケはなかったけれど。
でもあの時の母から「逃げ出したい」と思ったのは、私の本心だった。