It's a Small World

It's a Small World

現役放送通訳者・通訳育成コーチ、髙柳メイのブログ

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実は今夜OAらしいのですが。

らしい、と書いたのは、この企画に年初からお付き合いしてきて
収録は両手で数え切れない回数をキャンセルされてしまい
放送日も間違って伝達されたり・・・ということが続き
いざ本日放送だと言われても、「本当かなあ?」とピンと来ません。

・・・が、本当に放送していますね、いま。

「この文章、英語でなんと言う?」というお題に
頑張って芸能人の方々が英語で回答して下さり、
それを私なりに和訳を付けて番組制作者さんに提出したのですが、
バラエティー向けにするためなのか
私の和訳に手を加えられてしまいました。

今や英語を話せる人なんて多いので、
放送を見ながら「えー?」と思う人も多いのではないかな。

行き過ぎた和訳が視聴者さんにどう評価されるのか心配です。

「淡々と講義してください」と言われたことも手伝って
なかなかノビノビとやれないのを実感しました。
客観的に見ながら「普段の私とは随分違う・・・。硬いわ・・・」と
ちょっと引いてます。。

そんなこんなで、この企画に対してはちょっと思うところがあり、
しばらくは離れた場所で俯瞰しながら、
気が向いたら見ることにします。




さて、前回は
外国語習得を目指す生徒さんと教える先生との攻防を書きましたが、
先生選びの一つの目安として、
オープンスクールや無料体験に参加することをオススメします。
でも、ただ参加するだけではいけません。

感覚論的なテーマを用意して「どうしてこんな言葉を選ぶの?」

こんな質問を投げてみましょう。
その際に先生が、感覚に訴える(←ここ重要)ロジックを返してくれるかどうか。
受験英語を習うようなロジック一点張りではなく、
感覚も満たしてくれるようなロジックを返すことができるか。

そんな風にして先生を選ぶ方法もありますね。
ちょっと意地悪なやり方ですが、お金を払って授業を受けるのは生徒さん。
無駄なお金を投資しないよう、入学する前に実践してほしいものです。

人にものを教える先生は、押さえつけるでも逃げるでもなく、
外国語が持つ感覚論を理論化できるような
コミュニケーション能力を磨くことが大切です。
さらに、生徒が楽しんで理解できるように仕向けなくてはなりません。

生徒にとっては、どの先生がそういうタイプなのかを探すことが
外国語習得における the first round になると言えるでしょう。

さて、先生選びを終えたら、いよいよ学習スタート!ですが、
どの国の言葉を話すにせよ、会話で大切なのは、
 
 ・本意を伝えられるか
 ・自分が望むニュアンスで伝えられるか
 ・TPOに合っているか

の3点ではないでしょうか。
3点が揃って「美ングリッシュ」となります。

考えてみると、上記の要点って日本語を話す場合でも同じですね。

この3点を、感覚に訴えるロジックで説明できる先生を選び、
勉強する皆さんご自身も
感覚とロジックの両方を吸収する努力と素直な心が
必要になってきます。

May

通訳育成コーチの仲間達と、よくこんな会話をします↓

聞き手が「うんうん、あなたの意図は誤解なく理解できるよ」
と思ってくれるような話し方の最優秀サンプルなんて、
その場にいる人間同士の間に流れる空気感によって
いくらでも変わっちゃうよね。
そんな感覚的な現象に対して
ロジックできっちり説明して納得させられるかどうか。
これが、外国語を教える私たちのテーマだよね。



生徒から「なぜその言い回しが正しいの?」と
素朴な疑問を投げかけられた時、
「とにかく、このままイディオムとして覚えて」と要求したり
整合性のない感覚論で突き進む教え方をされ続けたら
生徒はどう感じるか?

「・・・この先生に教わる意味がない。
本を買って暗記すれば、それで済む。
理解するのではなく、暗記する。それが外国語の勉強かぁ。。」

なんとも寂しい話です。

感覚的に外国語を話せるバイリンガルの先生にとって
自分が当たり前にできていること(=外国語の会話)を
わざわざ人にロジックで教えるのは本当に大変なので、

「ネイティブはこう言うんです」と
イデオムを羅列してその場を乗り切ったり
(確かに、本当に覚えてもらうしかないケースもあるのですが)、

論理的な説明から逃げて、キャラで乗り切ったり・・・と

まぁ、様々な先生がいます。

でも、こうして生徒が理解できていないまま
丸暗記のみで学習してしまうと、
後で困るのは、実は、先生自身なのですけどね。。
「先生、昨日はこう表現したじゃない!」
「この前はこれが正解だって言ったじゃない!」

こんな会話、いろんな学校で飛び交っています(汗)
学生の年齢が若ければ若いほど、ストレートに飛び交います。

そういう意味では、高校生や、英語圏以外の外国人など
知識はそこそこありながらも
遠慮せず真っ直ぐに気持ちを使えるタイプの生徒達を抱えている先生が
実は最も鍛えられている気がする・・・

美ングリッシュを目指すなら
頑張ってそんな先生を見つけて頂きたいものですし、
教える側の私達もそうありたいものです。

May
このところ、美文字ブームですね。

私は習字を習っていなかったこともあり、
日本語の文字は・・・(以下省略)

さて、このブログの軸である英語の話をしましょう。
美しい文字を美文字と言うなら、美しい英語は?
美ングリッシュ、とでも申しましょうか。

このところ、英語の正しい言葉選びに関する本が溢れています。

ですが、
「語学を生業としている人の数だけ
言語表現のメソッドがある・・・と言っても過言ではなさそう」

これが、英語にまみれて生活してきた私の結論です。

だから、書店にズラッと陳列されたこれらの本を眺めるたびに
「う~ん・・・100点満点の言葉遣いって、何なんだろう?」
なんて考えこんでしまいます。
100点満点の言い回しが一つだけなら、正しい言葉選び、
すなわち「美ングリッシュ」は一つだけ・・・という理屈が成立するわけですから、
そんなに沢山の著者も本も要らないはずなのです。

それなのに、こうした本が後を絶たないのは、
作者の数だけ表現メソッドがあるから、でしょうね。

May
私は週に1回、専門学校で通訳育成コースの講師をしています。
海外からの留学生が多く、彼らは日本語を学びながら
ついで(?)に英語も習得し、母国語とあわせて
3か国語を操る通訳になりたいそうです。

その中で一人、なんと・・・

私のTOEICスコアを越えた生徒が出てきてしまいました(泣)
というか、彼、満点である990点を取ってしまいました(困)

泣、とか、困、とか書いたのは、教える立場としては
嬉しくもあり、反面、
満点を取った子にこれ以上何を教えてあげたら良いのか・・・と
かなり悩んでしまうものでもあり。

うーん。。。。(^^;)


専門的な用語ですが「抽象名詞」というものがあります。
抽象的なものを示す名詞、というものなのですが
英語の場合、同じ言葉を用いているのに、
場合によっては普通の名詞として扱われたり、
抽象名詞として扱われたりします。

例えば、よく例で挙げられるのがsociety.
すなわち「社会」ですね。
まず、日本語だけでニュアンスを考えてみると・・・

僕らは社会のために一生懸命働かなきゃ。

こんな風に使われる「社会」は、「どの社会」という風に
特定されていません。
かなりボンヤリとしたくくりで「社会」と言っています。
すなわち、この「社会」は、英語では抽象名詞として扱われます。

上の斜体文の英訳。結論から言うと、
(正) We should work hard for society.
(誤) We should work hard for the society.

抽象名詞には「the」は付きません。

ところが、日本人は the をつい付けてしまう人が多いのです。
しかも、わりと勉強をしてきた人達のほうが、つい付けちゃっていたりする。
なんとなく、付けないと落ち着かないのかな? 

なんと、プロの通訳でもたまにそういう人を見かけます。
 (それだけ、実務英語においてtheの取扱いは重大なミスではない・・・ってこと???)

私のクラスには7か国から生徒が参加していますが、
抽象名詞にうっかり the を付けてしまう生徒がいません。

几帳面で、なんとなく保険的な要素に頼りたい日本人の
国民性から来るミスなのではないか?と感じています。
とりあえず the を付けて、気分的に落ち着く・・・みたいな。

「the」 の取扱いについては、まだまだ沢山の使用方法があり、
これについて一気に書くと、英語初心者の方にとっては
かなり細かくマニアックな話に聞こえると思うので
少しずつ、回を追って説明していきます。

とにかく、几帳面さよりも、言葉のニュアンスを考えてみて
「あっ、これって特定していない、ボンヤリとした概念を指しているな」
と思ったら、不安を振り切って、the を取り去って下さい。

あなたは不安でも、余計な言葉を取り除いてもらった文章自身は
スッキリと感じていると思いますよ☆
(文章自身にそんな心があるかないかは、まあ、突っ込まないで。。。汗)

May


「昔、隣に住むアメリカ人の軍人さん夫妻の家に行ったら
貴女もお兄ちゃんもアメリカ人の朝食に
目を丸くしていたわね」

田舎町に引っ越した私に、母はよくそんな思い出話をしていました。

朝食はステーキと、1リットルは超えるであろうミルク。
珍しいお菓子、そのご夫妻を名前で呼ぶ子供、絶えない笑い声・・・

遠い他県に引越し、母が楽しそうに語る昔話を聞くうちに、
なんとなく、異文化交流をしていた幼い頃の自分に
アイデンティティーを感じていたのかもしれません。

そして、50音よりもアルファベットを先に覚え、
気づいたらニューヨークの大学に進学し、現地で働き、
帰国してからも英語にまみれています。

世界が小さくなったらいいな。世界を小さくする役目を担いたいな。
その思いは、日本が好きになり、
ミルクを1リットル飲めば胃もたれする年齢になった(涙)今でも変わりません。


*以下、略歴です*

ニューヨーク大学出身。
Bloomberg Television プロデューサー等を経て
現在は英語通訳者、通訳養成教員、英語ナレーター。


◇通訳◇

アナ・スイ氏、FENDI会長のピエトロ・ベッカーリ氏、
元NHK交響楽団総指揮者シャルル・デュトワ氏、
格闘家ヴァンダレン・シウバ氏、アリスター・オフレイム氏など
芸術・芸能界で活躍する方々の来日に同伴し、日英・英日通訳を担当。

特に、自身が芸術学部出身であることから、
アートやエンタメ業界の求める世界観に対する理解力を武器に
きっちり訳すだけでは認められない
「柔らかいニュアンス」「雰囲気そのものを汲んだ通訳」
というニーズを満たすことを得意としています。

また、この数年間は、
テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」「夏目記念日」、
日本テレビ「スッキリ!!」「ZIP」 の通訳を担当。


◇通訳養成講師◇

海の向こう7か国から日本に留学してきた非英語圏の生徒による
「日英通訳になりたい」という夢を叶えるべく、
日本での礼儀作法、通訳に必要な英語力などを伝授しています。
留学生はただでさえ異文化の中で苦労を重ね
それなりにストレスも溜まっているので、
「講師である自分を好きになってもらうこと」を念頭に
楽しく、飽きない授業を進行できるよう、努力の毎日です。
しかし、まさか、偶像崇拝が禁じられているイスラム圏の生徒に
「天使」と言っても「angel」と言っても「What is it ?」と返され
説明に苦労する日がやってくるとは思いませんでした・・・
多様な価値観の中で、まさに、私のほうが学ばせてもらっています。


◇英語ナレーター

ベネッセの外国向けDVDの英語ナレーション、
他には、各官公庁が作成する観光PR用DVDの英語ナレーションを担当。
海外に日本の良さを紹介する仕事なので、楽しい限りです。