ある日、私はいつものように家の片付けをしていた。

家の中は、夫が「まだ使える!」と拾ってきた宝物(という名のガラクタ)で溢れている。

整理しなければならない。そう、これは戦いなのだ。

その時、目に入ったのは一本の。何かの柄の部分らしい。

先端には何もついておらず、ただの棒だ。

まるで「私はゴミです」と自己紹介しているかのような風貌。

「これはもういらないな」

私はゴミ袋に放り込んだ。 

  ・

  ・

  ・

それから数時間後、夫がゴミ袋を見て叫んだ。

「これは…まさか…俺のはえたたきの柄!!」

そして、夫の怒りのスイッチがオン

「なんで勝手に捨てた!?」

「いや、ただの棒だったし…」

「叩く部分と合体させれば使えたのに!」

「いや、叩く部分どこにあるの?」

「いや、今はないけど!

 でも今使ってるやつが折れたら

 それと合体させられるじゃん!」

「は?」

え、そんな未来の可能性にかけるの!? 

いつどうなるかわからないパーツと奇跡的に巡り合うことを期待して、この棒をとっておくべきだったの!? 

そんな運命の再会、ドラマでもなかなかないよ!?

っていうか、こんなゴミハウスで未来のために取っておくって、結構難しいよ?

しかし夫の怒りは止まらない。

「なぜ捨てる前に俺に聞かない!? 俺は人間じゃないのか!? 奴隷だから聞く必要がないのか!?」

「いや、そこまで言う?」

「俺はもう出ていく!!」

はえたたきの柄一本で、家を出る宣言をされるとは思わなかった。

むしろ、はえたたきの柄にそんな人生を変えるほどの力があったとは…。

私が軽々しく捨てたのは、もしかしてただの棒ではなく、夫のプライドだったのかもしれない。

 

夫は「1分もかからないのに、なぜ聞けなかったのか」と言う。

いや、1分かけて「この棒捨てていい?」と確認しなきゃいけないほど、

家の中には要確認のガラクタが大量にあるのだ。すべてを夫に確認していたら、1日が終わってしまう。

 

「ゴミを捨てるにもあなたの許可が必要だとは知らなかった」と言うと、夫はさらにヒートアップ。

「俺を重要な人間だと思っていないからだ!!」

いや、違う。ただの棒だったからだ。

結局、夫はしばらくブツブツ文句を言いながら、どこからか新たな別の棒を拾ってきた。

「これで代用できるな」と満足げにしていたので、めでたしめでたし(?)。

この家は今日も、ガラクタ…いや、未来の可能性を秘めた宝物で溢れている。

私はまた、見極める戦いに挑まなければならないのだった。