猫色ケミストリー読了。
作者の過去とか経歴がそのまま小説になってる感じだが、それにしては私小説という感じでもなく、如何にも若者向けというか、むしろ若い社会人向け位をターゲットにしてる感じかなと思った。最近はそういうの多いね。例えば「ホーンテッド・キャンパス」が賞を取ったり。
どちらも、それほど酷く社交的という訳でも無い大学生の女性と、まぁ大雑把に言って草食系という感じの男が出てくる点で似ている。もう一つ、彼らの高校時代が書かれる所、さらに、どちらも作者が現役の大学生などではなく、中年というほどかは分からないがそれなりに年取ってる人が書いているという点。
いや、まだ有るな。どちらも謎解きの様な要素がある点というのもある。忘れていたが、少し違うんだけど「ソラの星」という書籍もこの類の小説に入れておくべきだろう。「ホーンテッド・キャンパス」に猫が出てきたかは忘れてしまったのだけど、「ソラの星」においては猫が重要な要素だった。(重要な要素って、多重表現なんだろうか?)
「ホーンテッド・キャンパス」も同様だが、主人公である男がヒロインの少女を(大雑把に言って)好きなことと、少女がある程度好意を抱いているように見えて、実際よく分からない、というのも似ているね。
そこは妙に現実的だと思った。相手がどう思ってるか分からない、というのはやはり若い世代の心をくすぐると思う。私も同じく、と付け加えておきたい。
この本を紹介してくれた彼女にも値段が高いとか言ったのだが、結構、値段に見合う本だったと思うね。いや特筆すべき表現の素晴らしさとか、ストーリーが完璧だとかいうわけではないと思ったのだが、普通に読んで楽しむのはこういうのが一番面白い。
ストーリーとしては定番という感じだろう。最も重要な要素である「入れ替わり」はもう言うまでもないほど使い古されたネタだという事は間違いないのだけど、敢えて言うのであれば、入れ替わりのメンバーに猫を加えてくるのはちょっと変わったやり方かも知れない。まぁそういう小説は以前読んだが。犬で。
相手の体になって色々困る、というもう読むのにも飽きるような要素は已にカットされていた。まぁ楽しむ分にはそれも欲しいのだけど、文学としては別に必要な要素ではないし重要なファクターではないので、この作品で此れを省いたことは良かったと思う。
キャラに関しては文句は無し。別にキャラを立てる小説じゃないだろうし、こういう良く居るタイプのキャラクターは動かしやすいだろうし、見てて違和感も感じないだろう。ラノベのように特殊なキャラ立てをすると、特定のキャラの動きに対して「なんでこんな行動を取ったんだ?」と思うことはある。
総じて、飛び抜けて優れた何かが有るわけではないんだけど、若者(高校生とかではなく、それ以上)向けの小説の典型であって、そういうのが好きな私としては非常に面白く満足であった。
以上
