国民の『サザエさん』離れが進んでいる。かつては常時30%近い視聴率を誇っていた同作だが、今ではギリギリ10%台、週によっては10%を割り込むことも少なくない。
そして『サザエさん』不人気の最大の理由は「時代錯誤が激しく、現代に即してない」といったものだ。
しかし『サザエさん』の連載開始は1946年。これは終戦の翌年であり、東京がまだ焼け野原であった頃だ。そんな時代に瓦礫に埋もれていないきれいな住宅街など果たして存在したのだろうか。
さらに毎食毎食白いご飯とおかずが数品。日本中が食べ物不足であえいでいた当時、これは考えられないほど裕福だと言える。
加えて特筆すべきは磯野家の面々の高学歴だ。波平は京大卒、フネは日本女子大卒、マスオは早大卒、ノリスケに至っては東大卒である。1946年より以前、戦前戦中に国民が大学まで卒業できるほどの社会的余裕などあったのだろうか。
こうして『サザエさん』の描写と連載当初の時代背景を照らしてみると、「逆時代錯誤」が多々見受けられるのである。
もしかしたら『サザエさん』は当時、理想の近未来の家庭を描いた作品だったのかも知れない。