火星改造計画、それは史上空前規模の人体実験だ!! | まきしま日記~イルカは空想家~

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ちゃんと自分にお疲れさま。

人類が月面有人飛行に成功して半世紀。今、太陽系の中で最も地球と似た環境を持つとして注目を集めている惑星、それが火星だ。


現在NASAはステップ1「火星有人飛行計画」に取りかかっている。月と火星では地球からの距離がおよそ130倍も違うが、火星有人飛行に技術的な支障はなく、これは恐らく10~20年後にも実現するであろう。いや、今まで達成されなかったのが不思議なくらいだ。


「火星有人飛行計画」が成功すれば、次に着手されるのはステップ2「火星居住計画」である。まずは火星に少人数用の居住コロニーをいくつか設置し居営地を作り、やがて地下に簡易的な都市機能を築くのだ。


ここまでの限定的な火星開拓には目をつぶろう。しかし俺が問題視するのは、「火星居住計画」の後に着工されるであろう、ステップ3「火星改造計画」(テラフォーミング)である。


テラフォーミングとは、火星の環境を地球そっくりに作り変えてしまおうという試みだ。手順は以下の通り。


 (1)火星で温室効果ガスを生成し、大気温を上げる。
 (2)火星で酸素を生成し、呼吸できるように大気中に充満させる。
 (3)火星で水を生成し、海を作る。
 (4)火星に地球から動植物を持ち込み、生態系を築く。


これらは全て理論上可能であり、着工から完遂までに数百年を要するものの、成功すれば火星は「第2の地球」として宇宙に青く輝くことになるだろう。そしていよいよ本格的かつ大々的に、数十億人という地球人類が火星に移り住むことになるのだ。


しかしである。テラフォーミングには重大な欠陥がある。いかに火星の大気成分をいじろうとも絶対に解決できない難題、それは重力の問題である。


火星の重力は0.38G、つまり地球のわずか1/3しかない。火星の重力を操作して地球と同程度にする方法、それは少なくとも現代21世紀の科学では糸がかりすら見つかっていない。


この件について専門家は言う、「重力が地球の1/3の環境でも人類は順応して、健康上何の問題もなく活動できる」。しかしここで聞き捨てならないのが「人類は順応」、これは一体何を意味しているのだろうか。


人類を含む全ての生命は、周囲の環境が劇的に変化すると自身もまた劇的に変化する。それが「順応」だ。それも実に迅速にである。火星移民は環境に合わせ、その姿を衝撃的に変化させることだろう。それもわずか数世代のうちにだ。


低重力ゆえに身長の伸びを遮るものがなく身の丈3m以上、あらゆる重さから解放され手足は筋量が落ち人類のそれとは思えないほどに細長くなっているかも知れない。そして火星人類は地球人とは異なる進化の道を辿っていくだろう。


果たしてそれはヒトと呼べるだろうか。否、地球上の誰もがヒトとして受け入れはしまい。そして異形の姿と化した火星移民に対し、地球人類は容赦なく差別・迫害を加えるだろう。それは過去の歴史が物語っている。


だからこそ俺は警鐘を鳴らしたい。「火星改造計画、それは史上空前規模の人体実験だ」。